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XX-7(ダブルエクスセブン)  作者: 水渕成分


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16/18

16

 (ひらく)は反射的に亜里沙(ありさ)の家の二階のサッシに突進した。


 何の逡巡もなくに……


 (ひらく)の予想通り、サッシのガラスは粉々に砕けたが、(ひらく)の身体は、かすり傷一つ負わなかった。


 「なっ、何だっ?」

 その破壊音に(ひらく)の方を向いたのは丈志(たけし)。その姿は……全裸だ。


 そして、その下にはやはり着衣を大きく乱され、仰向けにされた亜里沙(ありさ)


 (ひらく)の乱入にも何の反応もなく、ただ天井をながめ、呼吸だけをしている。


 (ひらく)は強く唇を噛み、そこから出血した。


 ◇◇◇


 「てめえっ、(ひらく)っ! 死んだんじゃなかったのかっ! 生きてたんなら促進者(黒いやつら)を退治してこいっ! とっとと出て行けっ!」

 欲望をむき出しにした亜里沙(ありさ)に対する行為を中断させられた丈志(たけし)は、苛立ちを隠さず怒鳴りつけた。


 だが、静かに怒る(ひらく)はその声に怯えることなどなかった。

 「……もう司令(コマンダー)は死に、XX(ダブルエクス)ナンバーズに命令を下す者はいなくなった」


 「!」


 「だから、僕はもう命令に従って、促進者(プロモーター)を倒すことはない。自分が守りたいものを守るだけだ」

 (ひらく)は淡々と語りながら、ゆっくり丈志(たけし)に近づいて行く


 「舐めんなっ! てめえっ!」

 丈志(たけし)は更に苛立ち、怒鳴り声は大きくなる。

 「こっちが何も知らねえと思ってやがるなっ! てめえらXX(ダブルエクス)ナンバーズは促進者(黒いやつら)には強えが人間同士だと普通の強さだろうがっ!」


 「……そう思うなら、僕を倒してみればいい」


 「てめえっ、引きこもりの分際で生意気なんだよっ!」

 そう叫びながら丈志(たけし)は、かつてよくそうしたように、(ひらく)の顔面に向け、右拳を放った。


 だがしかし、かつては怯え、へたり込んで泣いた(ひらく)は避けようともせず、そのままゆっくり向かって来た。


 そして、丈志(たけし)の右拳は(ひらく)をすり抜けたのである。


 ◇◇◇


 「な……」

 唖然とする丈志(たけし)


 それでも今まで(ひらく)に対する暴力で抵抗されたことがない。その過去の成功体験が丈志(たけし)を奮い立たせた。


 次々と繰り出される拳、そして、足を使った蹴り。


 だが、それらは全て(ひらく)をすり抜けていった。


 「てっ、てめえっ、何でっ?」

 焦りながらも攻撃を止めない丈志(たけし)


 「……進化(エヴォリューション)したからだよ」

 (ひらく)はそれだけ言うと、丈志(たけし)の両肩を両手で掴むと、その鳩尾(みぞおち)に右膝で一撃を加えた。


 ◇◇◇


 「ぐえっ」

 (ひらく)は、胃液を吐いた丈志(たけし)の両肩を掴んだまま、問いかける。

 「丈志(たけし)。おまえ。亜里沙(ありさ)に何をした?」


 「……ふっ、ふん。(ひらく)。てめえが悪いんだ……」


 「……何故、僕が悪い?」


 「司令(コマンダー)XX拠点(こっち)が勝っているとか言ってたが、そんなこと信じてる奴は誰もいねえ。促進者(黒いやつら)はどんどん増えて来やがるし、XX(ダブルエクス)ナンバーズメンバーの数は闘いのたびに減ってきやがる」


 「……」


 「こないだはとうとう(てめえ)一人になっちまった。で、今回も(てめえ)も出て来ねえ。こりゃいよいよXX拠点(ここ)もおしめえだと、みんな思うわな」


 「……」


 「そうなりゃみんな自分が大事だ。食料品店襲って、食い物取れるだけ取って、XX拠点(ここ)から逃げ出す奴が出て来た。大馬鹿野郎だ。そんなことしても促進者(黒いやつら)からは逃げられねえ」


 「……」


 「もうちょっと利口な奴はどうせ死ぬならと、気に入らなかった奴を殺しに行ったり、女を襲いに行ってんだよ」


 「……それで丈志(たけし)。何故、亜里沙(ありさ)を襲った?」


 「俺が亜里沙(ありさ)が好きだからに決まってんだろうがっ!」

 丈志(たけし)は一段と声を張り上げたが、もちろん(ひらく)は動じない。


 「……丈志(たけし)亜里沙(ありさ)が好きなら何故普通に告白しなかった?」


 「やったんだよ。何べんも告白したんだよっ! その度に亜里沙(あいつ)から好きなのは(てめえ)だって言われたんだよっ! みんな、(てめえ)が悪いんだっ!」

 丈志(たけし)は不意を突いて、(ひらく)の首を絞めようとした。


 だが、もちろん、その両手は空を切った。


 「てめえっ、汚ねえぞっ! (ひらく)っ! 何で引きこもりのてめえがXX(ダブルエクス)ナンバーズメンバーなんだっ? 何で学校一ケンカの強い俺じゃないんだっ?」


 「……」


 「不公平だっ! どんな汚い手を使ったんだっ? (てめえ)?」


 「……不公平? 僕が汚い手を使った? そう思ってるのか? 丈志(たけし)

 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] タケシよ…… 嫌われるのはそういうとこだぞ。
[良い点] マリア先生も心配ですが、啓くんたちのやり取りも気になります。 まさに救いのない世界ですね。 でもどこかに希望の光があるのかも……なんて考えてしまいました。
2022/02/24 23:22 退会済み
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[良い点] とても絶望的で暗い世界観ですね。 でも何故か惹き込まれるものを感じました。 [一言] こんにちは。 13話くらいまで、怒涛のように絶望的な展開が押し寄せてましたね。でも促進者の正体が判明し…
2022/02/20 17:45 退会済み
管理
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