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XX-7(ダブルエクスセブン)  作者: 水渕成分


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14/18

14

 ドアを開けた先に広がっていた光景はあまりにも衝撃的だった。


 着衣を乱され、床に倒されているマリア。


 しかも頭部から血が流れている。


 それに馬乗りになっている司令(コマンダー)


 十五歳でしかないXX-7(ダブルエクスセブン)(ひらく)にも何が起こっていたか、すぐに分かった。


 「性的暴行」である。


 脇に放り出されている布。それにクロロホルムを染み込ませ、性的暴行をしようとした。


 ところが途中でマリアが目を覚まし、抵抗したため、銃でマリアの頭部を撃った。


 そこまですぐに分かってしまったのだ。


 ◇◇◇


 司令(コマンダー)(ひらく)を見ると、一瞬、ひどく驚いた顔をしたが、すぐに怒鳴りだした。

 「マリアッ! どういうことだっ! これはっ! おまえの話だとXX-7(ダブルエクスセブン)は昏睡状態で促進者(プロモーター)対応に出動出来ないはずではないかっ! 見たところピンピンしてるぞっ!」


 「……(ひらく)くん。元気になったんだ……よかった……」

 マリアは司令(コマンダー)に馬乗りにされたまま、(ひらく)の方を向くと、弱々しく言った。


 (ひらく)はその言葉を聞くとゆっくりと二人の方に歩き出した。


 顔色はいつもに増して悪く、眼光は鋭く、ボサボサの髪は逆立っていた。


 ◇◇◇


 「貴様っ! 何をしているかっ? 怪我が治ったというのなら、とっとと促進者(プロモーター)を殺しに行けっ! これは命令だっ!」

 ゆっくりと近づいてくる(ひらく)司令(コマンダー)は焦燥した。


 だが、(ひらく)は歩みを止めず、やがて、静かに口を開いた。

 「司令(コマンダー)。あなたは何をしていたのです?」


 「ふっ、ふんっ!」

 司令(コマンダー)(ひらく)から目を逸らすと言った。

 「お前らが悪いんだ。XX-7(ダブルエクスセブン)が出動出来ないというのなら、XX拠点(ここ)はおしまいだ。全員が死ぬ。そうなる前にわしの言うことに逆らう生意気なマリアを犯っておこうとしたまでだ」


 「……」

 (ひらく)はなおも歩みを止めない。

 「僕が昏睡していたのは事実です。そして、怪我が一気に治癒したのは『進化(エヴォリューション)』したから……」


 「!」

 その言葉に司令(コマンダー)は立ち上がり、マリアから離れる。

 「XX-7(ダブルエクスセブン)。おまえっ、『進化(エヴォリューション)』したのかっ? どうやったら『進化(エヴォリューション)』したんだ? 教えろっ! これは命令だっ!」


 「……促進者(プロモーター)促進(プロモート)されて、『適者生存』に該当すれば『進化(エヴォリューション)』します」


 「……何を言っているのか分からん。実際にやって、わしを『進化(エヴォリューション)』させろっ!」


 「御命令に従いましょう」

 (ひらく)はつかつかと司令(コマンダー)に歩み寄ると右腕一本で抱え込んだ。


 「! 貴様っ! 何をするかっ!」


 「司令(コマンダー)の御命令に従い、司令(コマンダー)促進者(プロモーター)促進(プロモート)されるようにするのですよ」


 (ひらく)司令(コマンダー)を右腕に抱え込んだまま、その部屋の窓から外に向かって飛翔した。


 ◇◇◇


 「貴様っ! 何をするっ! さっさとわしを地上に戻さぬかっ」


 「御命令に従いましょう」


 (ひらく)司令(コマンダー)とともに地上に降り立った。何体もの促進者(プロモーター)が現行人類に対して促進(プロモート)している、現行人類からすると殺戮が行われている現場に。


 「なっ、待てっ! 貴様っ! ここは一体?」


 「御命令とおり、促進者(プロモーター)促進(プロモート)する現場にお連れしました」


 「何を言ってるんだっ! 貴様っ!」


 たちどころに司令(コマンダー)を取り囲む三体の促進者(プロモーター)


 一方で(ひらく)には見向きもしない。既に「進化(エヴォリューション)」していて、促進(プロモート)する必要のない者には全く関心がないのだろう。


 「何をしているっ! XX-7(ダブルエクスセブン)促進者(こいつら)を倒さんかっ!」


 「僕が促進者(プロモーター)を倒してしまえば、司令(あなた)は『進化(エヴォリューション)』出来なくなります。従って、その命令には従えません。では、僕はこれで」

 (ひらく)はそのまま飛翔し、何処かへと去って行った。


 唖然とする司令(コマンダー)を三体の促進者(プロモーター)はしばらく「測量」していたが、やがて、一体が斬りかかり、司令(コマンダー)の右肘から下を落とした。


 「え? 何だ? わしの右手がない……」


 今度は反対側から別の一体の促進者(プロモーター)が後方から斬りつけ、司令(コマンダー)の左膝の下を落とした。


 「え? うぐおっ!」

 たまらず転倒する司令(コマンダー)。最後の一体の促進者(プロモーター)は動かずに「測量」を続けている。


 マリアを残して来た病院へ急いで戻りながら(ひらく)は思った。

 (ドクトル・ディートヘルムは司令(コマンダー)を旧人だと言った。「適者生存」には該当しないのだろう。いや、そんなことはどうでもいい。マリア先生が心配だ)


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 司令、単に無能なだけかと思ってたら、そこまで知ってたんですね…… ただ唯一の誤算は己が 『旧人』 であることだけでしたね。ざまぁww
[一言] そうか、完了していれば見向きもされないのか…… なるほど、となりました コマンダーはまあ、もうねえ…… ああ、続きが気になります!
[一言] インガオホー( ˘ω˘ )
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