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第52話 街道

 防壁は完成した。

 その巨大さもさることながら、上部には木々が生い茂り、内部には美しい花々を携えた緑に包まれている。さながら芸術品のようだ。

 外から見るとキンキンに固められた巨大な土壁に簡素ながら装飾がされている無骨な作り。

 

「いいね、この表裏のギャップ、そして無骨な機能美。僕の大好物だよ」


「外部に過度な装飾は隠者にとって隠れ場所や足場になります。

 内部からは圧迫感を受けない作り、まさに理想の防壁ですね」


「ハヤテの魔力がこれでもかってほどに混ぜ込まれた場所だから精霊たちも張り切ってるニャ」


「これ僕が定期的に魔力を注ぐの?」


「驚いたことに、木々が霊木に変化していて、自分で魔力を生み出しているブー……

 ちょっと木々をもらって細工してみたら、素晴らしい素材になることもわかってるブー。

 と、言うことで、霊木植林エリアも作るブー!」


「はいはーい!」


 死の森へと続く山にトンネルを通したんだけど、その山肌は果樹園と霊木植林エリアとなった。

 この街の木材加工にとって欠かせない重要なエリアとなるは後の話。

 

 壁を作ったら内部の道を整備する。

 街の中心から3方向に作られた門へと向けてメインストリートを敷いていく。

 石挽きの街道、しっかりと圧を掛けて押し固めれば馬車などの運行もスムースに行える道が出来上がる。

 すでに建っている既存の建物も新たな都市計画に合わせて基礎ごと移動させていく。


「まじ魔法ってチート……」


 建物が動いていく、動かしているのは僕なんだけど、それを見ているとつくづく思ってしまう。

 これだけメチャクチャな魔法なのに、相変わらず回復魔法的な魔法は実行できていない。

 強化魔法などである程度自己治癒能力は高まるんだけど、よくゲームとかである魔法をかければ傷が一瞬で無くなる! みたいなことは不可能なんだよね……


「きちんと処理して治癒力高めていけば何倍も早く治るけど……」


 僕以外にも医療的な知識は広めているけど、複雑な手技をしっかりと教えるには至っていない。

 このまま人口増加をしていけば、いずれ医療格差が生まれてしまう……

 

「やっぱり、教育だよなぁ」


「時間がかかりますな」


「でも、きちんと結果も出てるブー」


「子どもたちも大人たちも皆勤勉に学んでくれてるニャー」


「知識だけじゃなく、技術もね」


「魚を与えるより釣りの仕方を教えろってね」


「なんなのにゃそれ?」


「教育の仕方の考え方を表した言葉だよ。食べるのに苦しんでいる人に食事を与えるだけじゃなくて、食事を手に入れる方法を教えないと根本的な問題解決にならないってこと」


「なるほど、さすが主殿」


「別に私が考えたことじゃないから褒め過ぎられると恥ずかしい……」


 街で生活する人数も増えたことで、人によって能力の差は当然出てくる。

 できる限り適材適所で皆が幸せに暮らせる環境づくりを目指しているけど、それには個人の努力は必須だ。

 この世界は生きていくだけでもかなり苦労するので、そのあたりの貪欲さというかガッツは非常に高い。そして、安全な壁に守られたこの街で暮らせるという一度手にしたら手放したくない特権のために住人たちの努力レベルは非常に高い。やる気があれば学びはとても早い。

 

「ここの技術を身につければどこに行っても大成功は間違いありませんから、皆熱意が違いますよ!」


 とレオルさんは言っていた。

 ミーグくんには統治者としての高度な教育プログラムを組んだけど、本当に必死に頑張っているようで、成長著しい。


 そんなわけで、うちらの街は人員の質も飛躍的に向上しており、豊富な資源を魔の森や周囲の山々からほぼ独占で得ており、アマテラス、スサノオを中心としたオーバーテクノロジーな生活道具や戦い生きていくための道具の充実により、力を増していくのでありました。


 そんな中、マチルトンさんから不穏な報告を聞くことになる。


「ノーザンホリッツとウイエント両国がこの場所に気がついたようです……

 早ければ夏前には威力偵察部隊を送り込んでくる可能性があります……」


「はぁ、仕方ないですね……ワンシーズンくらいは考えていた方法で乗り越えられるとは思うのですが……」


「主殿の策であれば早々突破できないと思うのですが……」


「ガーレウスさんとかレオルさんみたいな人たちならすぐ見つかっちゃうでしょ」


「いやいやハヤテ様、今の我々ならいざしらず、当初の実力ではとても無理です。

 つまり、偵察部隊程度ではまず突破は難しいかと」


「そうかなぁ……」


「しかし、角が立たないし、なんというか普通思いつかない方法を考えついたニャー」


「そうね、わざわざ町の側に魔の森の魔物を放つなんて正気の沙汰じゃないわね」


「さすがに国家相手に普通に戦争を仕掛けるのは最終手段にしたいから……」


「では、私もしばらくは街に滞在ということになりますね!」


「よく言うわ、マチルトン、しっかりと準備して来たくせに」


「はっはっは!」


 そう、街の周囲に死の森の魔物を放つことによって、危険地帯を作り、国による介入を遅らせる作戦を計画している。

 山脈を貫く街道を用意して、そこに僕たちで魔物を追い込んでいく。

 もちろん魔物地帯は巨大な谷によって隔離されていて、街から出るためには秘密の地下道を利用しなければいけない。

 危険地帯に魔の森の木々を植生したりと、結構時間をかけて準備している。

 これによって、各国からの斥候は魔物によって撃退され、とてもじゃないが近づけない危険地帯で調べる価値がないと思ってくれれば御の字だ。


 地面に照りつける太陽に、計画の成功を祈るのであった……



 

 


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