第51話 工事
「いやはや、とんでもないことをしてくれましたなガーレウス殿、そしてハヤテ殿」
「お気に召されませんでしたか?」
「逆ですよ逆、私は明日からどんな食事を食べてもあの素晴らしい食事を想って寂しい気持ちになってしまいます!」
「アマテラスが喜びます」
「もう私はこの街がなければ生きていけません。謀りましたね」
ニヤリとマチルトンさんが笑うとガーレウスさんもそれに応える。
なんか、良いよね。大人な関係って感じで。
何にせよ、こうして商人との太いラインを築くことに成功して、この街はより発展していくことになったんだけど……
「これ、ノーザンホリッツとの対立の火種になる気がするけど……?」
「そこはうまいことやってくださいます。
それに、お言葉ではありますが、この街の価値は王国に知られれば良いように利用されます。
ウイエント公国でも大きくは変わらないかと……」
「そろそろ立ち位置を考えなければいけないと……」
「主、もう隠すこともありますまい。城塞化いたしましょう。
手を出せばただでは済まないことを示せば、今後の交渉にも優位に働きます」
「街の人達を戦いに巻き込むことになるよね?」
「その点についてはすでに話し合いを済ませてあるぶー」
「みんな、覚悟の上よ。ハヤテがくれたこの生活のために戦うって」
「……ちょっと考えさせて欲しい」
「どんな選択をなさっても我々は主を支えるだけです」
「私マチルトンはどんなことがあってもハヤテ殿をお味方します。
たとえ国家を敵に回しても、それ以上の利があると商人としての勘が騒いでおりますからな!」
みんなは勢いよく話しているけど、僕に国家紛争とかそういうことを求められても……
それを言えば都市運用だってそうか、結局僕一人じゃなくてみんなが手助けしてくれるから今の僕が有るわけだし、それはこれからも変わらない。
「……とりあえず、城壁を作るにしても、計画を立てないとね」
「周囲の地図は用意してあります!」
「明日から忙しくなるニャー」
「北のエリア攻略に国家間の折衝、やることがまた増えていく……」
「大丈夫よハヤテ、みんながいるから」
「主ならなんの問題もありません!」
「手伝うぶー」
「そもそも今までだってほとんど私達でやってたニャー」
「つ、ツクヨミ!!」
「ぶっ……確かに! そうだよね、もっともっと皆に頼るから、よろしくね!!」
「「「「はいっ!!」」」」
その日は遅くまで都市計画を話し尽くした。
そして、翌日からは大規模改修工事が開始される。
「ハヤテ、行きまーーーーーーーす!!」
大規模土魔法で一気に堀を移動して外堀へと変化させる。
更に堀を深くして土をせりあげて山を作り出していく。
「水行きますー」
ツクヨミが水を土にかけていき……
「混ぜるぞー!!」
スサノオ、アマテラスがよーく混ぜ合わせていく、このときに大量の灰を混ぜ込んでいく、簡易古代コンクリートみたいにしていく。
そのまま土台を作っていく。
「それじゃぁ、ハヤテいくよー!!」
「任せといて!!」
そこに火炎魔法を浴びせて一気に加熱していく。
形状を維持しながら風乾して温度を下げれば、あっという間に巨大で強固な壁が完成する。
「信じられませんな……」
「こんなメチャクチャなことが出来るのはハヤテ様だけです」
「どれほどの魔力を……」
「計り知れませんな」
遠くからガーレウスさんとマチルトンさんは目の前で広がっている光景に目を丸くしている。
巨大な防壁が地面から生えてくる光景なんて今まで見たこともないだろうし、当然と言えば当然だ。
僕たちも何度か繰り返していくと段々と要領をつかんできてスピードが上がってくる。
水分量のコントロール感想の速度などを考えて次々と街を壁で包んでいく、死の森へとつながる山脈の壁面から大きく街を包み込む、言ってみればこの中は僕たちの独立した土地であるという意思表示だ。
「とりあえずは、出来たけど、まだ固まっただけの土壁だから……」
「おーっと、ここから先は主様は大雑把なカットでお願いします」
「そうだブー、細かいところは僕たちがやるぶー」
「内と外を縦に切り出して壁にしていくよハヤテ」
「う、うん」
反り立つ丘のような状態から壁を切り出していく。
風魔法でズバズバっとカットして堀の外へと切り出した岩を吹き飛ばして、粉々にしていく。
この粉々になった石たちは道の整備に使っていく。全体の壁が出来たら次は堀の整備。
防壁から監視するのにじゃまにならない形状に堀を作り変えていく。
城攻めをされたときを考えての建築をするとは思いもよらなかった……
切り出され壁になった部分はアマテラス、ツクヨミ、スサノオによって防壁へと形を変えていく。
魔法によって細かく切り出されていく壁面、あっという間に変化していくように見えて、あれがなかなか難しい、試しにやってみたら壁をぶった切ってしまったりしたのに、みんな器用にやっていくなぁ……
「仕上げだよー頼んだよククノチ!」
「カタカタカタカタカタカ(任せといて! と頼もしくククノチは震えている)」
ククノチの眷属、世界樹の木々が防壁に根を張る。
音は深々と大地まで到達し、所謂鉄筋代わりなる。
そしてこの木々はククノチと同じく霊木、精霊を宿し防壁の監視も行ってくれるし、初歩的な魔法での迎撃まで可能になる。
生きた防壁と後に呼ばれる不壊の壁の完成である。
こうして、広大な範囲の防壁作成は、驚くほどに短期間に完了していくのでありました。
そしてその能力は……この世界では異質のとんでもないものになるのであった……




