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第50話 見学

「……ハヤテ様、私がこういう事を言うのもなんですが、コレを見せて良いのですか?」


「え?」


「問題ありません、マチルトン様。

 見ても真似ができないことはご理解いただけると思いますぶ……」


 間抜けな声を上げた僕の代わりにスサノオが答えてくれた。


「確かに……こんな製法は見たことも……」


「それに、素材の確保も難しいでしょうね、こちらで使っているのは魔石ですから」


「なんですと!? 魔石を鍛冶に!?

 こ、この大量の魔石……ど、どれだけの価値が……」


「うちの街だとこれらの魔石は品質が低いので鍛冶用ですね。

 きちんとしたものは次の魔工房で使われますニャ」


 皆が僕の代わりにできる秘書のように説明をしてくれる。

 マチルトンさんは皆の説明に食い入るように聴き込んでいる。

 

「とりあえず、工房区域はこの様になっています。

 時間もちょうどいいので、昼の食事にしましょう」


 タマモは事前の打ち合わせのとおりに話を進めていく。

 僕は知らないけど、なんかいつの間にかすっかり準備がされていた。


「もう、すでに一生分の驚きをここで使ってしまった気がします……

 まさか、これほどとは……」


「なんといってもハヤテ様とその部下の皆様が死の森からの大量の資材を手に入れてくださる事がこの街の発展に大きく寄与しております。本当に、信じられませんよ、未だに」


 ガーレウスさんが他人事のように言っているので、僕は爆弾を落としていく。


「そろそろガーレウスさんたちも死の森に行ってもらいますから、がんばってくださいね」


「は、はい!?」


「皆で決めたんです。皆さんかなり強くなりましたし、そろそろいいだろうってことで、もちろんアマテラスやスサノオがついていきますが、少しづつ皆さんにも手伝ってもらいます」


「……かしこまりました」


 冷静を装っているけど、冷や汗が凄い。

 さっきまでホクホク顔だったのに、真っ青になっている。

 ガーレウスさんもレオルさんも自分の資質としっかりと向き合って、非常に強くなった。

 死の森の魔物たちとも十分にやり合える。

 今の死の森には禍憑もほとんどいないし、そろそろ僕たちがいなくても回るシステムを作っていかないと、今年こそ北の山を攻略するために長期間街を開けることになるだろうから……

 顔色真っ青になったが~レウスさんがマチルトンさんに心配されていたけどなんやかんやで食堂に到着する。いつもの雰囲気とは打って変わって上品な雰囲気のレストランのような装いになっている。


「凄い……」


 思わず声をあげてしまった。


「これはこれは……」


 マチルトンさんも感心しているようだ。

 厚手の一枚板のテーブルには美しい燭台、蝋燭の揺らめきが卓上を飾る花々を美しく照らしている。

 各席には純白の食器と銀のカトラリー、そして美しいグラス。

 マチルトンさんもその食器の価値を一目で気がついたようで、落ち着いた振る舞いをしながらも目端が激しく卓上を行き来している。

 畜産や農業、森から得られたさまざまな恵みを可能なものは栽培し、香草などの知識をアマテラスがブラッシュアップしてくれたうちの街の食事は、はっきり言って自信がある!

 煮る、焼くがメインのこの世界の食文化を、食事に人生のすべてをかけている日本人の矜持をもって何よりも早く発展させている。

 当たり前のように蒸したりあげたりしている場所はこの街以外にはないだろう。

 出汁も取らず、発酵と腐敗の違いもわかっていない料理に遅れを取るわけには行かぬのだよ!

 あーーー、海産物食べたーい!!


「こ、これは!?」


 僕の心の叫びとは別に、マチルトンさんは料理が出されるたびにその洗練された見た目、そしてなにより味わいに目を白黒させている。

 ふっふっふ、美味かろう。アマテラスの料理は日本料理を知っている僕でもメロメロにされるからね。

 前菜は川魚を低温調理し季節の野菜とハーブと一緒に酢漬けしたソースがけ。

 ふわふわで臭みのない川魚と酸味と香りに包まれたソースによってこれからの食欲を刺激する。

 野菜一つ一つも味が濃くジューシー。

 果実酒も進むってものさ。

 二品目はスープ。

 生で食べても美味しいとうもろこしを利用したコーンスープ。

 野菜が美味しいって幸せなことだなぁ……って心から感じてします。

 野菜と香草から取ったベースのコンソメスープが味に複雑な深みを与えている。

 三品目は魚介料理。

 前菜で使った淡白な白身ではなく、少し赤みがかった鮭に似た魚を使っている。

 丁寧にさばいた身に、これ以上でもこれ以下でもない絶妙な火入れ、ジューシーで香ばしい最高の焼き上がり、これに合わせるのがさっぱりとしたフルーツを利用したソースだ。

 ほんのりした甘みが魚の脂の繊維さな味わいを咲かせる。

 果実酒が進む一品。

 四品目は口直しのシャーベット。

 大人の苦味のある真っ赤なソルベは上品な口溶け。

 食べ終わる頃には前半の食事が身体から取り除かれたのか? ってほどにスッキリして、後半戦への胃腸を整えてくれる。

 五品目はメインディッシュ、肉料理!

 甲羅牛、背中に固い岩のような亀の甲羅と同じように肋骨が変形して出来た鎧を背負う凶暴な牛だ。しかし、その甲羅の下には非常に美味しい肉が隠れている。

 今では家畜化、といっても凶暴性はなかなかどうにもならず、半地下の空間で管理し、食生活をこちらでコントロールして肉質の向上を図っている途中、それでも天然物よりも味は向上した。

 そして特に味の良い部位を厳選して完璧な火入れをしてある。

 肉がソースに負けないので、濃厚なデミグラスソースでいただく。

 好みでとろっとろのチーズと絡めて食べても、全く肉の味が負けない、むしろ相乗効果。

 果実酒が進むジューシーな一品が完成した。

 これらの食事と一緒に楽しむのがバケット、パンだ。

 フワッフワの真っ白いパン。

 創るのに苦労したが、今ではどんな家庭でも作れるようになった。

 ソースを最期までこのパンで味わう瞬間が、至福の刻。

 そして、最期がデザート。

 鳥の卵とはちみつ、それと果実を使ったプリン。

 甘いものは高級品、それはこの世界でも適応される。

 よく冷やされ、口に入れるととろけ、弾けるような甘みと上品な果実の味わい。

 これは、最高だ!


「……素晴らしかったです!! 私は、私は、生きていて良かったー!!」


 マチルトンさんにもご満足いただけたようで何よりです!




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