第48話 権益
「よし、これで神聖魔法を魔石に魔力を流すだけで発動できる……よし、よしよし!」
「出来たブー!!」
「やったニャー!!」
「神聖魔法めんどくさぁっ!!」
いろいろと研究してわかった。
僕の純粋な魔力を神聖魔法と過程して、普通の人の魔力を神聖魔法に変える方法を模索したんだけど……大変だった。
魔法は基本的に火、水、土、風の4つに別れて、更にそれぞれ陰と陽がある。
4つの属性は4方向のベクトルに別れていて、火と水、土と風が対極にある。
火と土、火と風はベクトルが傾くと混ざり合えるけど、水とは混ざらない。
陰と陽も対極なので混ざり合わない。
そして、神聖魔法は、簡単にいえば全ての属性と対極にある点、つまり零の概念に近い。
どの属性にも一切よらない魔力の陽性側が神聖魔法となる。
僕や神継の血族はその零の魔力を持ってるんだと思う。
どんな人間、魔物も魔力は何らかの属性を持っている。
結果として魔法の得手不得手が出てくる。
その属性を持った魔力を完全な零に調整する魔道具、それが神聖魔法を発動する魔道具になる。
これが、まぁ、複雑だった。
「制作過程で魔力判別機も出来たブー」
「魔力量測定器、魔力変換器、魔力量調整器……大変だったわ……」
「ガーレウスさんがその一つ一つがロストアイテムだって騒いでおられた……」
「瘴気の出し方も判明しちゃったしね」
「神聖魔法を陰性に振り切ると瘴気……闇魔法とでも呼ぶニャー」
「闇魔法、危険だけど、そりゃ強力よね」
「カタカタカタカタカタカタ(ククノチはその情報は明かさないほうが良いと警告する)」
「その通りだと思う。皆もそういうことでよろしくね」
全くの属性変化を起こさずに陰陽変容を起こすことは非常に難しい……しかし、僕はそれが出来てしまう。試しに瘴気を生み出してみると、とんでもない濃度の瘴気を作り出してしまい、本気での瘴気づくりは二度とやらないことを誓った。ククノチがいなかったら両腕に酷い瘴気やけどを負うところだった。
こうして瘴気を生み出せるようになったために、実験もしやすくなったのは事実だ。
ただ、瘴気を生み出す者は間違いなく恐怖の対象になるために、人前では行わない、これは秘密事項。
「驚きました……こ、これは……国宝級ですぞ」
眼の前で自分の魔力で瘴気を浄化したことで、ガーレウスさんに信用してもらえた。
「そもそも、私に魔力があるとは……」
魔力測定器によって人には誰しもが魔力が有ることがわかった。
そして、魔力を魔法として発現できるのは魔法使いと言われる人で、魔力を自己の能力増強に利用している、自分でも意識せずに、人がいることがわかった。
ある程度以上の身体的能力を持つ人々はそれを無意識に行っており、街の人々、特に警備隊の上位者は皆その能力を持っていた。そして、この魔力や魔力を利用した肉体増強は後天的でも鍛えられることもわかってきた。
「魔法による肉体像虚のイメージを、自分自身で引き出す!」
鍛錬方法としてはそれが最も効率がいい、これによって僕の街の人々の身体的能力が跳ね上がることになっていく。
「達人の作り方、を知ってしまったようなものですからな……私もこうして、壁を超えることが出来ました!」
もともと達人級のガーレウスさんレオルさんは正しい鍛錬方法のもとに急成長を遂げている。
そんなこんなで、冬場は研究三昧、しかし、その結果は大変に有意義なものとなった。
あまりにも有益すぎるために、この事実はしばらくお蔵入り、便利な道具だけは運用していく方向に決定した。
「間違いなく複数の国から略奪を受けます。絶対に広めてはいけません。
それと……ハヤテ様、気分を害されるかもしれませんが、奴隷の購入をお許しいただきたい」
「……奴隷、か……」
「お気持ちはわかります。ただ、絶対に秘密を漏らさず裏切ることのない奴隷によって構成される部隊を作って、よそから来る間者を処理する部隊が必要と考えます」
「おっしゃることはわかります。この国では奴隷は普通なのですか?」
「国によります。我がノーザンホリッツは犯罪奴隷のみが許されます。イーシスと帝国では、主に亜人奴隷が多いと聞きます。サウザンド王国では表向きには奴隷は禁止されています。この街にちかいウイエント公国は比較的奴隷に寛容、そういった違いはあります」
「ってことは、ウイエント公国で奴隷を集めると」
「ご明察恐れ入ります」
「確かに計測器を持って見どころのあるものを連れてくれば主殿の力になることは間違いないですな」
「アマテラス様の仰る通り、内在する魔力量を知れるということはその者の伸びしろを示しています。これは非常に素晴らしいことです。奴隷と言っても我々がそう扱わなければ忠実な味方ということですから」
「正直、全面的に信頼できる味方が増えるのは嬉しいわね」
「ミーグにガーレウス、レオル以外にも人材はいくらいてもいいニャー」
「決めるのはハヤテなのだブー」
「……ウイエント公国も知っておきたいし、わかったよガーレウスさん、奴隷を受け入れよう」
「ありがとうございます。以前のつてで信頼できる商人がおります。すぐに連絡を取らせます」
「分かりました。ありがとうガーレウスさん」
「お気になさらず、ミーグ様の居場所をより堅固にしたいという老婆心でございます」
「なるほど、こちらで用意するものがあれば何でも言ってください」
「でしたらスサノオ殿、一本ロングソードを打っていただけませんか?」
「もちろん良いブヒ、頑張るブヒ!」
こうして、うちの街は大きく動き始めるのでありました。




