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第44話 熊力

 巨大な魔熊が僕たちの姿を見つけて立ち上がり威嚇してくる。

 立ち上がるとその巨大さが一層際立つ。

 体の一部はぶくぶくと泡立ったように黒い液体がこびりついて時折ブシューっと瘴気を放っている。

 

「ゴオオオオアアアアアアアァァァァァ!!」


 咆哮が大地と大気を揺らす。

 声に魔力、瘴気が干渉してたぶん防御魔法を展開しないでまともに喰らえば声だけでショック死するかもしれない……

 

「街から引き離すように戦うよ!!」


 堀は健在だけど、この巨体では乗り越えるのも容易だろう。

 万が一街に入り込まれたら甚大な被害を生む、まずは街から僕たちに興味を向けさせないと、それと周囲の死体の処理……だったら……!


「火砲!!」


 巨大な火柱を魔熊に向けて放つ、周囲の地面に散らばる汚された死体も巻き込んで地面を焦がす……


「グルウウウアアアアアア!!」


 魔熊は僕の火炎放射を喰らっても表層の毛が少し焦げた程度しかダメージを与えられなかった。


「瘴気が体表を濃厚に包んでいて魔法効果を落としているニャ!」


 ツクヨミたちの魔法も瘴気の毛皮に阻まれて本来の力を発揮できないでいる。


「ますは、瘴気の鎧を剥ぎ取らねばなりませんね!!」


 アマテラスとスサノオが魔熊を斬りつけるとまるで金属でも切っているような音がする。


「くっ、硬いブー」


「多分毛や皮下脂肪も瘴気の影響で強靭になってるんだと思う、斬撃も打撃もかなり効果が落ちるよ」


「だったら数で押すしかないわね! 風刃、嵐!!」


「土槍……からの~~風砲!!!」


 タマモが上手に瘴気を剥ぎ取るように放つ風の刃に超加速させた土の槍が突き立てられる……


「ギャオオオ!!」


 ようやく魔熊自体の血液が突き刺さった槍を伝って大地に溢れる。

 激しい怒りの燃え上がった真っ赤な瞳が僕たちを捉える。


「今までの攻撃に比べてば、多少はマシだね!」


「ハヤテ、あの魔力による浄化を!」


「わかった!」


 飛び散った高濃度の瘴気に魔力をぶつけて処理してく。すぐに魔熊の方に集まってしまうからだ、一時的に空いた穴は周囲からにじみ出るように瘴気が埋めていくが、こうやって総量を減らしていけば、いずれはこの分厚い鎧も壊れていく。

 もちろん、その作業は簡単ではない……


「ぐうっ!! なんて重いブー」


 スサノオの巨大な盾に熊の剛腕が振るわれ大きく歪んでしまった。うまく衝撃を反らせていたが、まともに受け止めていれば吹き飛ばされていただろう。


「大丈夫!? スサノオ!」


「すまぬスサノオ、吾を庇って……」


「ほらほらアマテラス! 話してる暇があったら動く動く!! 風巻!」


「そうだニャー、うちらは、よっ、そんなに、はっ、荒事は得意じゃないニャ!! 土牙!

 土鎖!!」


「仕った!!」


 魔熊が振るう剛腕、その巨体による質量攻撃どちらも強力、僕たちのことを道端の小石のように払うつもりだ。


「ガウウウアアアアアアァァァァァ!!!」


「どんどんムキになってるニャ!!」


「だいぶ街との距離も取れたわ……ハヤテ!?」


「オーケー、良いでしょう。皆、本気出してやっちゃおう!!」


「そのお言葉待っておりました!! 噛み砕け、犬牙狼爪!」


 日本刀、この世界では珍しい美しい刃紋を持つ一刀をアマテラスが構える。


「移動要塞、大山盾! 手持ち城落とし、割地崩山槌!」


 今まで使用していた盾も巨大だったが、新たに取り出した盾はスサノオの1.5倍はあろうという巨大な盾、それに比肩する巨大な槌、新たなスサノオの武器。


「ふふふ、もう逃さないニャ……空裂鞭、今宵も哭かせるにゃ」


 光が当たると様々な色へと変化する不思議な色調の鞭。持ち手には大きな魔石が備えられ、魔法の威力を上げたりもしている。


「大鷲弓、飛び立ちなさい……」


 タマモは真っ赤な長弓、同じく魔石が散りばめられていて、実態の矢以外に魔法で作った矢も打てる。


「……僕の変な影響が出たのかな……」


 静かに棍を取り出す。一応名前は有る。如意棒。うん、魔力によって伸ばすことが出来るし、魔石もついていて魔法をまとわせたりもできる。

 名乗りとかさ、訓練のときにふざけてやってたら、ちょっとしたブームになったよね。

 もともと上位の冒険者とかはそういったかっこいい決め台詞とかあるみたいで、前世の記憶から色々と案を出してたら、こうなってしまった……

 それぞれの武器には持ち手の魔力をたっぷりと注ぎ込んで変質した鉱石を使って作られていて、今後も魔力を通し続けていくと、成長していく可能性がある武器だ。


「いいよね、成長する武器、ロマンだよね」


「わかるブー……」


「わかり味が深い」


「大空を羽ばたかせてあげるからね大鷲弓」


 皆がそれぞれの武器をうっとりと見つめている。


「カタカタカタカタカタカタ(万物森羅を我が理となす、我が力となりて顕現せよ、陰陽! と、ククノチは高らかに吠えている)」


 ククノチの頭上に球体が浮いている。陰陽の紋が刻まれた珠、最も魔石含有量が多いククノチの武器だ。僕の魔力と同等かそれ以上の浄化能力有る光を放ったり、僕たちの支援などを担当してくれている。さすが聖木。浮いている球体の上に立って戦場全体を把握するのがククノチの役割だ。


 アマテラス、スサノオが前衛、僕とツクヨミが中衛、上空からククノチ、後衛がタマモというのが僕たちの本気シフトだ。


「行くよ、炎嵐っ!!」


 街の側では使えない巨大な炎の渦が魔熊を包み込む、本気の戦いを開始する狼煙だ!




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