第41話 日々
ミーグ君回復計画は地味にスタートした。
まずは栄養面での充実だ。
タンパク質、脂質、炭水化物のバランスを整え、各種ビタミン・ミネラルをまんべんなく取り入れる。
そして、大事なことは……
「美味しい……っ!!」
味だ。
食事が楽しいこと、嬉しいことになれば、自然と接種する量は増えていく。
何より、食事が美味しいことは幸せなことだ。
殆どの食事が受けつけづ、味のしない流動食の日々は地獄以外の何物でもない。
「……い、痛いです……っ!」
「関節がずいぶんと固くなっちゃってるね。
大丈夫、怪我はきっちり治したし、若いから、毎日少しづつしっかりと継続していこう。
ってことでお二人には毎日3回、今教えたことをしっかりと、たとえ痛がっても実行してください。ただ、変な痛みとか違和感があったらすぐに報告ね」
「「はっ!!」」
まずは柔軟と軽い運動から、まるで老人のように固くなった身体を、本来の若い少年のものに置き換えていく。
「ハヤテ様、あとは何をすればよろしいでしょうか!?」
「あとはお風呂に入って、しっかりと寝る!」
「そ、それだけですか?」
「まずはそこから、焦らない焦らない!」
「はぁ……」
焦って負荷を大きくして本人のやる気を削いではいけない。
ちょっときついけど、続けられる。それくらいの強度でまずは初めて行く。
もし本人のやる気が高いなら、少しづつ負荷を上げていく。
リハビリで無理して失敗するのは、成果を早く求め過ぎることが多い。
今までかかった年数ぐらいかけるぐらいの気持ちで腰を据えて向き合っていく。
「主様、改良型が完成しました!」
そして、同時に雪山アタックへの準備も進んでいる。
「おお、前よりも足回りがコンパクトになったね」
「それでもパワーは前よりも上がってるブー」
「魔力の持ちも良くなったニャア」
「ちょっと魔石のストックが怪しいわ」
「そうだった、また森へ行かないとね」
「カタカタカタカタカタカタ(ククノチは自分たちが入る近くに魔物を集めてくれていると伝えている)」
「えっ、そうなんだ! ありがとうございます! これで効率幼良く狩りが出来るね!」
「主殿は少しご自重を」
「いや、まだまだ強くならないと! 皆の足手まといにはなりたくないし」
「いやいやいや、逆だブー」
「そうよ、最近あの二人にも武術を習ってたりどんどん強くなってるのニャ」
「最近は二人共訓練時間が怖いってトオイメしてたわよ……」
「村人が主殿を見る目に尊敬というより畏怖成分が多くなっている気がしますぞ」
「こんなに動ける身体があるんだから、思いっきりやらないとね!
出来なかったことどんどんやるよー!!」
僕は今、この世界に来て最も活動的に行動している。
朝は村人を中心に診療をし、ミーグ君のリハビリに付き合い、そのままガーレウス、レオルさん達との村人の訓練に参加し、昼ごはんの後は森へ魔物討伐兼狩りに行っている。
今の身体、なんていうか、内側からエネルギーが溢れるような、久しくこんな感覚は味わったことがなくて、ついつい皆を巻き込んでしまってやりすぎている……らしい。
「ハヤテ、おねがいだから休みがほしいにゃ……」
「私からも、お願いします……主様……」
「アイデアがあっても素材が足りないブー、ペースが早すぎるブー……」
ブラック気質な悪いところが出てしまい、皆から悲鳴が上がってしまった。
最近の若いもんは、なーんて老害思考が頭をよぎったが、振り払って週休完全2日制を導入することにした。
その御蔭でうちのメンツと村人の顔に笑顔が戻ってきたと話題になった……そんなに追い込んでたかなぁ? 休みないとか普通じゃない? 普通じゃない?
時代かぁ……
「ハヤテ様、お願いします!」
と、いうわけで、今はミーグ君と模擬戦を始めるところだ。
適切な栄養と運動、そして休養の甲斐もあってミーグ君はメキメキと頭角を表してきた。
今まで溜めてきた成長の花が開花したように回復と成長のハイブリッドを示している。
今ではこうやって訓練場に来て戦闘訓練に参加している。
男の子だなぁ……ここでの運動が気に入ったみたいで最近は運動の中心が戦闘訓練になっている。
そして、今日は僕との模擬戦を求められた。
一応ね、今のところランキングの頂上にいるのが僕だからね!
「よっほっはっ!」
「せいっ!! であっ!!」
一生懸命木剣を振るっている様は、正直、同年代の子に比べれば弱々しくもあるんだけど、なんていうか、筋がいいっていうか、こちらの動きを把握して、ここだというポイントを上手く攻めてくる。ガーレウスさんやレオルさんと本気でやり合うと、まぁ厳しい攻撃をしてくるんだけど、まだまだ甘さはあるけど、きちんと戦いの理論的なものを理解して振る舞っているのがわかる。
ハラハラと僕たちのやり取りを見守っている二人の振る舞いをそれこそ穴が空くほど観察しているんだろう……
「でも、まだまだあま~い!」
「あっ!!」
「ふっふっふ、今の隙きはわざと、罠だったのだよ」
「ま、参りました……」
体勢を崩され首元に剣を当てた状態になってはじめて自分の失敗に気がついたようだ。
うむ、たくさん学が良い。
「主……子供相手に辛辣なやり方をしないでください」
「そうニャ、もう少し年長者らしく正面から受け止めて上げるニャ」
「おろ?」
「あんな駆け引きを最初に覚えると危ないブー」
「ほんとハヤテはああいうのうまいよね……」
「カタカタカタカタカタカタ(ククノチは大人げないと言っている)」
皆からの評価は散々だった……グスン……
こうして、ミーグくんを中心に、僕たちの日々は過ぎていく、気がつけば、冬が顔を出し始めていた……




