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第40話 叱咤

「うっ……ここは……?」


「目が覚めたかにゃ? ここは安全だから落ち着いて寝てるにゃ、今お医者様を呼んでくるニャ」


 ツクヨミが僕を呼びに来てくれたのはめちゃくちゃ暑いお昼のことだった。

 すぐにガーレウスさんとレオルさんにも声をかけるように伝える。


「はじめましてミーグ君、僕が君を見させてもらっている医者だ。

 大丈夫かな? 自分のこととか覚えている?」


「あ……はい、私の名は……ミーグ、ミーグ=シルバーウルフ……シルバーウルフ家の……シルバーウル……う、ああ……」


 ミーグ君の顔色が蒼白になり、目線が泳ぎ始める。


「いけない……興奮しないで、ごめんね。落ち着いて、ゆっくりこれを飲んで」


 そっと抱きしめて心を落ち着かせるハーブ入りのお茶をゆっくりと飲ませる。

 一度温めたものを人肌より少しだけ暖かいくらいに冷ましてある。

 タマモの気遣いがありがたい。


「ゆっくりと呼吸をして、身体は痛くない?」


「身体は……痛いです……けど、もっと痛かった……」


「うん、そうだね。とにかく今はゆっくり休んで、もし辛くなかったら少しづつご飯も食べようね」


 ドタバタと足音が近づいてくる。


「「坊ちゃま!!」」


 ガーレウスとレオルさんが汗をまき散らかしながら部屋に飛び込んできた。

 その二人をみるとミーグくんは心から安堵したような表情を浮かべた。


「ガーレウス、レオル! 無事だったんだね!! いったた……」


「だ、大丈夫なのですか坊ちゃま!?」


 子犬のような目線を向けるガーレウスさん、ギャップが可愛すぎる。


「まだ完全に傷は癒えていないので、あまり興奮しないようにね、それと二人はそっちの水で顔と手をしっかりと洗ってから患者さんと触れ合うこと!」


「はっ! す、すみませぬ!」


 二人は大慌てで顔を拭き手を洗う。

 それからおっかなびっくりとミーグくんに触れ、優しく抱きしめた。


「坊ちゃま……よくぞご無事に……」


「ありがとう、二人共……」


 僕はそっと部屋から出て、しばらくぶりの再会の邪魔をしないようにする。


「どういうことだ!?」


 ミーグ君の怒鳴り声にびっくりして、部屋に飛び込んだ。

 痛みによりお腹を押さえてうずくまる周りにあわあわしてる男性が二人、ちょっとびっくりしたのに、そのギャップに笑ってしまった。


「どうしたの?」


「それが……」


「……皆、私を慕ってくれた者が皆……なぜ、なぜ私を助けた……っ!

 あのまま屋敷で殺されていればよかった……!」


 パーンっ!


 ……とりあえず、僕はミーグ君に近づいて、顔を上げたその横っ面を引っ叩いた。

 

「馬鹿言ってるんじゃないわよ、その言葉が死んでいった人たちにとって一番の侮辱よ」


 まさか僕がこういう行動を取ると思っていなかったのか、ガーレウスさんもレオルさんも固まっている。

 そして、僕自信も少し驚いている。

 覚醒して混乱している状態での発言なんだから、ひっぱたく前に色々とやりようがあったよなーと遅れて頭が回ってくるんだけど、まぁ、やってしまったものは仕方がない。


「叩いたことは謝るわ、でもね、あなたが目を覚ますまで必死に心配していた二人、それに、あなたを助けるためにそれこそ命をかけてくれた人、そして、あなたを救った私に対する非礼は、今の一発じゃ収まらないわ。生きなさい。そして元気に幸せになりなさい。そうしなければ死んでいった人たちが報われないわ」


「……ごめんなさい……」


「私もごめんなさい。

 まだ混乱しているのもわかっていたのに、思わず手を出してしまった……

 医者失格ね」


「いいえ、あなたがきちんと伝えてくださらなければ、私はこの二人にも酷いことを言ってしまうところでした……ありがとう。貴方は……」


「あ、名乗っていなかったわね。私はハヤテ、よろしくね」


 ミーグ君はきちんと謝れる立派な子だった。

 



「ガーレウスさんミーグ君は?」


「少し食事を取られて、お眠りになりました」


「そうでしたか、……すみませんでした」


「いえ、不甲斐ない我々の方こそ謝罪するべきでした」


「まだ若い、しかも病み上がりで混乱も多いのに……思わず手を出してしまいました」


「死んでいった仲間たちも感謝しております」


「ミーグ君に状況はお話したのですか?」


「はい、お陰様で、しっかりと受け止めておいででした」


「そっかぁ……偉いなぁ……」


「あまりにも重いものを背負わせてしまいました……この老耄、どんなお手伝いもお側で致す覚悟です」


「ふむふむ、だったらまずは、あの子を元気な子にしてあげましょう!」


「元気な子?」


「……あの子を見てわかりました。

 狭い部屋に閉じこもり、ずっと陽の光にも当たらずに、食事だって良くなかった事がありありとわかります。

 そんな過酷な環境の中で過ごしてきて、あまりにも白く、細く弱い身体……

 まずはあの体を普通の子並みに成長させます!

 このままじゃ回復も遅くなっちゃうので、スパルタでいきますよー!」


 あの子は、私の最期とは違う。

 あの子には無限の未来がある。

 私は、あの子に、明るい未来を見せてあげたい!


「具体的には、何をすれば……?」


「食事と運動と睡眠、古来より、これより大事なことはありません!」


「はぁ……」


「明日からは更に働いてもらいますから、そこの扉の影にいるレオルさんもたっぷりこき使いますからね!!」


「「はい!」」


 

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