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第35話 信頼

 厳しい環境下で暮らしている人間は、余裕がない。

 人間余裕がなくなると他者への気遣いなどが無くなって、冷たくなっていく。

 ハリッドさんへの手術の後、村人たちの空気は、変化した。

 まだ利用価値がある我々への表面上の当たり障りのない対応に、なんというか熱がない。

 猜疑の眼差しが交じるようになっている。

 アマテラスたちももちろん気がついて憤慨していたけど、僕はそれを抑えてもらっている。

 信頼なんて、そう簡単に手に入るものじゃない。

 押し付けるものでもない。

 僕は、僕ができることをして、みんなに信頼してもらおうと思う。


 もちろん、勝てる勝負だと踏んだからというのもある。

 ハリッドさんの術後経過は順調だ。

 心配だった72時間をすぎて、5日目に意識を取り戻した。

 事故の瞬間あたりの記憶は曖昧だったけど、脳への後遺症はなさそう。

 血管吻合をした足の感覚も、そして、きちんと指も動かせており、これは村人たちを驚かせた。

 大出血をした四肢が機能を取り戻すことは非常に珍しい、どちらかといえば壊死、腐ってしまったり、其処からの感染症で命を落としてしまう。この世界の医療レベルはそういったものだそうだ。

 中世より以前のレベルだと考えられる。

 この世界独自の不思議アイテムもあるんだけど、外科や感染症の分野は遅れている。

 たとえ村人たちに疑いの目を向けられても、僕は誠実に患者の治療を行い、きちっと成果を出す。

 仲間たちも村のために常に貢献し続ける。

 そんな中、ハリッドさんが歩行訓練に入ると、すでに村の人々の目から猜疑心は消え、尊敬と羨望の眼差しへと変化していた。


「ハヤテ様は医術にも明るいとは……」


「主が最も優れているのは医術。こたびのような振る舞いは以後許さぬぞ」


「アマテラス! とにかく、大きな怪我も順調に治ってくれて良かったです。

 ご覧の通り、僕は医術を学んでいます。これからは困ったら相談してほしいし、環境に対する指示には従って欲しい」


 古来からのやり方は、公衆衛生的に問題がある方法も多い、それらを改善するだけでも、病気の罹患も蔓延も防止できる。公衆衛生は獣医師のメインな仕事の一つだからね。


 ハリッドさんが見る見ると回復するのを見て、日に日に医療に関する相談は増えていく。それらに適切に答えて結果を出していくことでさらに村人たちの信頼を獲得していく。

 こうなってくると、こちらの提案は皆しっかりと守ってくれる。

 手洗いの推奨や水の煮沸利用の徹底、排泄物やゴミなどの処理など、衛生面での改善は目を見張る速さで行われていく。

 村の文化レベルも向上していく、上下水道、石炭などの燃料問題、この世界における大きな問題点を解決し、皆が笑顔になっていく。

 村の防備も目立たずそれでいて高度な物が出来上がっていく。

 村の発展が楽しくて仕方がない。


「カタカタカタカタカタ(ククノチは北の反応忘れたりしていないよね? と確認している)」


「……わ、忘れているわけないじゃない。そ、そろそろ村も安定してきたし暖かくなってきたから動こうと思っていたよ!」


「そ、そうですな。さすがは主殿これからの暑い季節であれば北の地も少しはましになるかと」


「そ、そういえば毛皮を作るための蓄えも十分になってきたニャー、さっそく作成に向かうにゃ、タマモ手伝うのニャ!」


「わかったわ」


「頼まれていた雪山対策用の道具も点検しておくブー」


「よし、さすがは皆。準備ができたら北の山にアタックするよ!」


 すっかり忘れていた本来の目的、出発は煌々と太陽が照りつける夏の暑い日だった。


「本当に向かわれるのですか?」


「私達の目的ですから。役目を果たしたら戻ってきます」


「どうか、どうか無事に帰ってきてください!」


「大丈夫です、死ににいくわけではないですから、準備が必要とわかれば戻って準備を整えて再びアタックします!」


「本当に無理はしないでくださいね。皆様が出ている間も指示通り村、いや、街の発展は続けていきますから!」


 僕たちだけで都市開発をしても継続性がない、ある程度基盤を作ってからは教育に力を入れていっている。アマテラスやスサノオの手ほどきをうけた職人はあっという間にこの世界の高い標準の職人技術を身につけている。

 人が増えれば土木などの公共事業もちゃんと動いている。

 当然魔法というチートが無くなれば発展速度は落ちていくが、様々な道具を用意して少しでも効率化した発展を街の皆には期待している。


「それじゃあ、行ってくる」


「お気をつけてー!」


「留守は頼んだよ!」


 発展の楽しさ、居心地の良さ、変化の楽しさで忘れかけていた僕の指名。

 汚れた地を取り戻すために、北の極寒の地へと向かうのでありました!


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