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第32話 準備

 森から帰って驚くほど大漁の獲物を持って帰ってきたことに大きな驚きと歓声で迎えられた。

 獲物の処理は村の人々に任せて、僕は皆にポンプの作成を依頼した。


 僕の説明を聞いてアマテラスとスサノオは簡単に手押しポンプを再現してくれた。

 あっという間に、本当にあっという間に完成した。

 魔力を使っての鍛冶は飴細工のようで見ていて楽しい。

 鉄の延べ棒があっという間に薄く伸ばされ、切り分けられ組み合わさってポンプに変形する様は、手品か何かのようだ。魔法なんだけども……

 

「……こんなこと、見たこともない……」


「鉱石を魔力で変形なんて……聞いたこともない」


 うん、やっちまった感じがします。


「鍛冶を魔法でやるのは珍しいのですか?」


「そもそも鉄などは魔力が非常に通りにくいので、そんな魔力を使うやり方はしないかと」


 確かに、最初の変形までは大きな魔力を使うけど、変化してからはそんなに使わないんだけども……


「あれ? でも武器とか鎧とかの時は火入れして叩いて作っていたよね?」


「打ち込める魔力がまるで違いますので、このくらいの日常使いならともかく、戦に用いるものは魂を込めて叩いて作ります」


「おお! だから皆様の武具からあの幻のミスリルのような輝きが……って、これ、純粋な鉄なんですか?」


 また、やらかしている気がする……

 今後は魔力をあまり込めない普通の鍛冶を装うことにしよう。

 自分たちの馬車から荷物を出すという口実で、皆でミーティングをすることにした。


「やっぱり、目立ちまくってしまうね」


「仕方ないよ、少し周囲を探ってみたけど、私達、異質な存在って言っていいほど、その、強い」


「死の森と呼ばれている場所でも強者側でしたからな」


「ハヤテっちと結ばれてからは、より化け物になったニャ」


「化け物はひどい」


「うーん、でもはっきり言って、事実なんだブー」


「これからどうすればいいと思う?」


「いっそのこと主殿がこの村を治めてしまえばいいと思います」


「な、何を言って」


「いい案ね、そうすれば私達の秘密も守れる」


「拠点があるのはいいことだニャ」


「人手も多いに越したことはないブー」


「カタカタカタカタ(ククノチも同意している)」


「いや、そんな、そううまくは……」


「うーん、あっちはもうその気になってるよー」


 タマモの耳がピクピクと動いている。どうやら村人たちの声を盗み聞きしているようだ……

 魔法を利用して集中すると僕の耳でも外の村人たちの声が聞こえてくる。


「なんなんだよこの獲物の量は!?」


「嘘だろ、あの森深くまで入ったってことか?」


「とんでもない腕前だぞ、見てみろ、こめかみを弓で一発……警戒心の強い森鹿に気配を悟られずにそんな事できるなんて、よほど熟練の狩人でも難しいと聞く」


「みんな若い、見目麗しい若人が……やはりあのハヤテ殿はやんごとなきお方で間違いない!」


「村長! 絶対にあの人達を外にやるな!」


「そうだそうだ!! あの方たちがいればこの村は安泰だ!!」


「いや、あちらにはあちらの目的があるそうで……北の極地へと向かうそうだ」


「なに!? あんな場所になぜ……?」


「いや、俺は王都にいた時太古の情報が書かれた本を読んだことがある……。

 まだ国が今みたいに分かれていなかった頃は北には神獣が住まう霊峰が存在していて、過去の人々がその霊獣を捕らえようと不義を働いたせいで永遠に閉ざされた極寒の地になって人々は南へ逃げてきた。その結果豊かで反映した土地を捨て、ばらばらになってたどり着いたこの地で建国した……。

 そんな話があったんだよ!」


「もしかして、霊獣、神の使い……?」


「おとぎ話みたいになってきたな」


「あの壁を作った魔法、あんな腕前の冒険者なんて見たことがない!」


「死の森に挑む奴らでべらぼうに強い奴らがいたが、そういうレベルだぜ!」


「村長!! やっぱり絶対に逃しちゃならねぇ! なんとしてもこの村に、何なら村長になってもらおう!」


「ちょ、ちょっとまってください……むちゃくちゃ言わないでください。

 そりゃ、あの人になら喜んで村長なんてめんど、大役でも十分に果たしてくれると思いますが……」


「なら決まりじゃねーか、村長!

 すぐにハヤテ様にこの村を任せるんだ!!」


「だから、あちらにはあちらの都合が……」


「なにやら主の話をしているように聞こえたが!?」


 え!? 突然アマテラスが会話に入ったと思ったら、気が付いたらアマテラスがいない!


「こ、これはアマテラス様!! ちょうど今この獲物の見事さのお話をしていたのです!」


「そして主にこの村への長期滞在と助力を請うというわけですね。少々内緒話を、失礼」


 パチン。 指を鳴らすと同時に会話がシャットダウンされた。


「……悪いこと企んでるわねアマテラス」


 タマモも盗み聞きできなくなったみたい。


「何させられるのかな?」


「まぁ、アマテラスがハヤテの悪いようにはしないニャ」


「そうだブー」


「それはそうなんだけど……嫌な予感はするんだよなぁ、僕」


「少なくとも、忙しくなるのは間違いないだろうね。全員だけど」


「ま、なるようになるニャ」


「なんくるないさーなのだブー」


「それもそっか。人生なんてものはなるようにしかならない。だね。

 でも、そう考えたら、いっそ村を作るシミュレーションゲームだと思って……

 やってやりますか……クックック……」


「悪い顔してる」


「悪い顔してるニャー」


「悪い顔だブー」


「カタカタカタカタ(ククノチは悪い顔と言っている)」

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