第31話 知恵
翌朝。
僕たちは狩猟・採種班。情報収集班に分かれて行動する。
僕とタマモが情報担当だ。
村長から話を色々と聞いてみると、今いる場所はノーザンホリッツという国の西の端、ウイエント公国との国境に近い場所で、僕たちがいた場所は、高山に囲まれた死の森と呼ばれていることもわかった。
国境と言っても、首都から離れると危険な魔物がうろついている危険地帯で、特に国境線がはっきりと引かれているわけでもないらしい。
死の森の周囲には比較的安全な場所があり、そこに人々が暮らし、自然と国ができた。
北がノーザンホリッツ。
東がイーシスト帝国。
南がサウザンド王国。
西がウイエント公国。
ネーミングが方角っぽくていかにもゲームっぽい。
とにかく、大きな街から離れれば、すぐに凶悪生物のテリトリーになり、非常に危険なのだという。
ではなぜそんな危険な場所で暮らしているのかというと、人生に一発逆転をかけようとしていたり、訳アリで人の多い場所で暮らせなくなった人などが集まってなんとか集落を作ろうと努力しているとのこと、この世界では珍しくもないことらしい。
この村もまだ3年程度、それなりに順調に来ていたところにあの虫、街を飲み込み破壊することから街喰いと呼ばれる魔物が現れ絶望していたところに僕たちが現れた……ってことらしい。
「大都市にいれば安全には生活できますが、能力のないものにはかなり厳しい生活が余儀なくされます……」
「なるほど……」
「今は特に権力争いの影響で厳しい徴収がありまして、どんどん生活する場を辺境に移さざるを得なくなり、気がつけばこんな危険地帯まで来てしまいました。
運良く丘陵に基礎を築き、なんとかここまでやってきたのです……」
ハッジさんの目に涙が浮かぶ。
「ハヤテ様たちが現れなければ我々は今年の冬は越せなかったでしょう……本当に、本当にありがとうございます!」
がっちりと手を握られた。ゴツゴツとした、硬い手が、温かかった……
それからこの国のといかこの周囲の国々に多く共通するお金の話や仕事、冒険者などのいかにもな存在などについて色々と聞いたりした。アマテラスのお陰で世間知らずの貴族のボンボンっぽい感じで落ち着いていたのは都合が良かった。
「ところでハヤテ様はいつまでこちらに……」
「カタカタカタ(ククノチはこの村の北の方に目的地があることを示している)」
「えーっと、いずれは北の地に行かなければいけません」
「え!?」
「なにか?」
「い、いや、ここより先の北の地は、なにもないというか、大変に危険と思いますよ」
「そのあたり、詳しく教えてください」
「我々も詳しいことはわかりませんが、ここより北に進むと、急に降雪地帯に変わります。
しかも一年中、更に進むと極寒の地へと様変わりします。
その先には天をつく巨山があると言われていますが、たどり着いたもの、少なくとも戻ってきたものは聞いたことがありません」
「なるほど……」
いかにもな目的地な気がする。
「国の4大貴族も北への領地の拡大を図った時代もあったそうですが、多大な被害を出して諦めたそうです。そレがなければもっと南へと国土を広げられていた、と祖父などから聞いたことがあります」
「ふむ、それでも僕たちはそこにいかなければいけないようなので……準備をしっかりとしないといけませんね」
「では長くこちらの村に!?」
「そうですね、まぁ我々は自分たちでなんとか「是非に滞在してください!! ええ、ええ!!いつまでもいてくださってもいいですよ!
歓迎いたします!!」
「そ、そうですか、と、とりあえずしばらくはご厄介になりますね……」
突然大きな声を出すからびっくりしてしまった……
それからは村を回ったり周囲の防壁を手直ししたり、村へ入る入口の構想を立てたりして狩猟班の帰りを待つことにした。
「ここ、水脈通ってるね」
タマモが地下を魔法で探ってくれたのでちょいと土魔法で穴掘りをする。
ハッジさんが目を輝かせてその様子を見ている。
何をしているのかというと、井戸掘りだ。
かなり距離のある水場まで命がけで水を確保していると聞いたので……
「井戸でもあればいいんだろうけどね」
とつぶやいたら。
「水脈あれば作れるよ」
とタマモが合わせて。
こうなった。
そりゃね、魔法を使えばめちゃくちゃ重労働な竪井戸掘りもお茶ノ子祭々でございますから、村長としてこれほどありがたいことはないよね。
地下水層まで到達し、水が湧き出してくる。圧がかかってくれば湧き上がってくるんだけど……
「そこまで強い圧はかかってないかな……もっと深くしよう」
更に深く掘り下げて、周囲の土は押し固めた上で焼き固める。
十分な水量が貯まる深さまで掘り下げたら底部には石を落として配置する。
巨大な石を風でカットして切り出してきれいに敷き詰める。
この作業は井戸に下りていって近くで行った。
井戸水は冷たく気持ちよい。
地上で確認してみると非常に澄んできれいに見える。
化学物質による汚染とかもなさそうだし、水質検査も出来ないから使用は煮沸を絶対と伝えよう……
「ポンプは手押しをアマテラスとスサノオに作ってもらうか」
とりあえずは5日くらいはこのまま水を落ち着かせておくように伝えた。
「ほ、本当に、井戸が出来たのですか? この一瞬で?」
「使えるようになるにはもう少しかかりますけどね」
「き、奇跡だ……」
僕も魔法は凄すぎると思っております……
そして、この村との付き合いが長くなる予感を感じていた。




