第30話 成行
「うおおおっ!! 町喰いを防いだぞ!!」
「なんてこった! 何者なんだ!?」
「いやー、はははは……」
外が静かになり、避難していた人たちから歓喜の声が上がり始める。
まだ現状を理解できないで不安そうにしている人々も、その恐怖が去ったことに少しづつ気がついて笑顔を取り戻していく。
そして、壁の下から僕たちのことを憧れと尊敬の眼差しで見上げてくる……
なんというか、壁から下りづらい。
タマモやツクヨミは愛想よく手を振って答えて男性陣から活性を浴びている。
アマテラスとスサノオはそういうことはしていないんだけど……そこに立っているだけでご婦人方のため息を生み出している……
「主殿、どうやら周囲に驚異はなさそうですね」
「火を入れたから魔力抜いても壁は維持できるけど、どうするブー?」
「それは村の人に聴いてみよう。気が重いけど、降りよっか」
人間との初めての会話がこの状態なのはハードルが高いかと思ったんだけど、ここ最近、前の人生でも稀有な美男美女と会話しているせいか、謎の安心感によって緊張はほぐれていた。
それに仕事のときのスイッチを入れれば、まぁ人との会話も大事な仕事の一つですから。
「いやー! いずこかの高名な冒険者様でございますか!?
村の危機を助けていただきありがとうございます!
いや、少々、いやいや過分に興奮しておりまして、私村のまとめ役をしておりますハッジと申します!」
下りてすぐに満面の笑みのおじさんが近づいてきた。
薄めの茶色い髪に白髪が少し混じって、辺境の村での生活の厳しさで疲れているのかな? と心配になる見た目。体つきは痩せていて、それでも厳しい環境の中で鍛えられた自然な筋肉質な雰囲気が感じ取れる。悪い人ではなさそうって直感的に感じる人懐っこさも笑顔に垣間見える。
「ああ、どうも、ハヤテと言います。
なんとか、村を守れて良かったです」
話しだしたのが僕だったのが少し驚きだったようだけど、すぐに僕をまっすぐ見つめて話し始める。
「貴方様がこのパーティのリーダーですか、いやたしかに見事な魔法……しかし、見たところ皆様魔法を使ったように……貴重な魔法使いがこれだけの人数のパーティ……!
もしや、最高位、竜級のパーティ様とか?」
知らない単語が多すぎてどう返していいか迷ってしまう。
「いやいや、ぼ、僕たちはその……」
これはどう答えたらいいかなと迷っていたらアマテラスがすっと前に出てくれた。
「主様はさる理由から地方を漫遊されております。理由は……あまり詮索は困ります」
すごい、本物の召使いみたい、まるで僕がどこぞのおえらいさんみたいに聞こえる。
その答えに納得したのかハッジさんはこれ以上詮索はしてこないでくれた。
「ああ、なるほどなるほど……、大変に失礼いたしました。
我が村を救っていただき誠にありがとうございますハヤテ様」
アマテラスの助け舟で、なんとかこうにか誤魔化せた。
手に入れて情報その一、魔法使いは希少……うち、全員魔法使えるのは伏せたほうが良さそうだ。
「それにしても……この壁、魔法で作ったにしては……崩れませんね?」
「ああ、そうでした。この壁、壊します? 残します?
一応火を入れているので魔力がなくてもそれなりに強固に持つはずですよ」
「ぜひよろしければそのままにしておいてください!!」
食い気味にハッジさんは答えた。
「あのような立派な壁! まるで城のような安心感!!
我々であれを作ったら一体何年の月日がかかることやら!!」
周囲の人々もウンウン、とうなずいている。
そして、壁を見上げて感嘆のため息をつき、壁のない反対側を見てため息をついている……
ちらっとタマモを見たら、タマモもやれやれとため息を付いた。
心のなかで誤っておく。
「もしよかったら、反対側も……バランスも悪いですし「是非に!!!」」
まぁ、うん。仕方ないよね。
「アマテラス、スサノオは馬車を取りに行って、悪いんだけどツクヨミとタマモは手伝って」
「任せといてブー」
「ほんと、お人好しなんだから……」
僕もそう思います。実力を隠すとか言っといて、すぐこれです……
防壁自体はすぐに完成する。
出入り口などは後々門とかを作れるように4方向に壁を開けておく。
堀は村全体を囲うように作り、その4方向には木製の橋を簡単に作っておく。
「細かいことは今後村で決めて行ってください」
「ありがとうございますありがとうございます!!
本日は皆様のために祭りを行います、ぜひとも楽しんでいってください!!」
「ははは、ありがとうございます」
ううむ、この人結構強かだなぁ……
どうしても僕は以前の日本の思考で判断してしまうから、気をつけないとな……
宴は始まったんだけど、なんというか、慎ましやかだった。
それはそうだよね、これだけ厳しい環境で日々の食事にも困っている、そんな時に一生懸命準備をしてくれているんだと、ちょっと強かな人かと思ってしまった自分が恥ずかしい……
「よし、アマテラス、馬車からこちらも食料を提供しよう」
「かしこまりました」
「そんな、恩人の方々に!」
「もしよければ近くの森の情報やこの地の情報を教えていただきたいので、これは対価ですよ」
「……わかりました。明日しっかりと周囲の情報をお伝えします……かたじけない」
それから、余裕のある備蓄を村に提供した。
久しぶりの豊富な肉類や果実類に村人たちは湧き上がった。
そして僕は決心した。
「酒を作る」
こっちの世界に来てから、酒を口にしていない。
大好きってわけじゃないけど、こうやって皆で騒いでいると、欲しくなるものだ……
一応果実を潰した酒もどきは出たんだけど、こんなんでは現代社会の日本で酒の味を知っている僕の舌は満足できないのだ!!
こうして、楽しい夜は更けていった……




