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第29話 潜入

 何度かの戦闘を”静かに”勝利しつつ、目的の村へと近づいていく。

 村は簡易的な柵によって囲われ、浅いながらに堀のような作りをしている。

 少し高くなった丘上の場所に作ったようで、周囲の視界確保のために草が刈られており、生活道路、といっても整備されたものではなく人々が行き来することによって出来た道が続いている。

 周囲からの魔物の来襲を監視する見張り塔もあるので、僕たちは少し離れた森から村の様子を伺っている。


「……なんか、僕たちが悪者みたいだね……」


「すみませぬ、情報があまりにも不足しておりますので……」


「囲いの山の外に出るなんて考えたこともなかったブー」


「村の住人は人間だけっぽい?」


 今は魔法を用いず目視による確認にしている。

 人間からいらぬ嫌疑をかけられないように慎重に行動しないとね。


「……って思ってたけど、イベントは起こるよね」


 地平線から土煙が上がっている。

 かなり距離があるにも関わらず、なにかの集団、かなりの数がいる、それらが凄い勢いで近づいて生きている。

 村の人々が慌ただしく動いている、アマテラスが村人の会話を盗み聞きしてくれたところによると、どうやら魔物の群れが村方向に近づいてきているらしい。

 平原を集団で移動する魔物で、運悪くその移動ルートにあるものは全て飲み込まれてしまう厄介者だそうだ。

 目的は山越え、とにかく逃げるしか無いために急いで村を捨てる準備をしているみたい……


「颯、行こ?」


「え、でも……」


「もう行くって決めてるんだから、迷ってるふりは時間の無駄にゃ!」


「そうですぞ主様」


「みんなでやれば何とかなるブー!」


「……ごめん!」


 いろいろ小賢しいこと言ってても、防げる悲劇があるなら防ぎたい。

 僕たちは、森を飛び出して全力で村へと駆けた。


「壁を作って村を迂回させる道をなめらかに作るのがいいと思うんだ!!」


「どうやら虫どもは何かを襲ったりはせずにただ進むだけ、それがよろしいかと!」


 接近してくるのは甲殻を持った多足の虫、簡単に言えばでっかいだんご虫の集団。

 数が多いからかなり気持ちが悪い……


「手前に穴を作って、その土で壁、さらに水と混ぜて火で固めて壁にすれば強度を出せると思うニャ!」


「アマテラスとスサノオでとにかく土を盛り上げて、僕が水と撹拌と形成、ツクヨミが火で乾燥、タマモは全体の調整をお願い!!」


「オッケー任しといてニャ!」


「カタカタカタカタカタ(ククノチはみんな頑張れと応援している)」


 森から飛び出した僕たちは、一気に村までの道を作る。

 突然現れた僕たちに気がついた人たちが騒ぎ始めたけど、僕たちは大きく跳躍して虫と村との間に立つ。


「スサノオ! 参るぞ! 土よ集まれ舞い上がれ!!」


「やるブー!! 土よ細かく砕け積み上がれ!!」


 草原に巨大な穴が生まれ、同時に巨大な山がうず高く積まれる。

 魔力によって細かな砂上へと変化した山に僕の魔法で水と混ぜる!

 

「水よ!! 混ざれ混ざれ集まれ集まれそして壁を成せ!!」


「火よ!! 壁を焼き固めるニャ!!」


「風よ火を助けて土の型を成せ!」


 5人で協力して巨大な堀と土壁を作っていく。村人たちは突然現れた壁に逃げ惑う足を止めて呆然と見上げている。


「堀の形成と壁の形成を続けてあの虫たちが反れ易い構造にしてくよ!」


「お任せを!」


 多分村を囲うのは半分でいいはずだ、その後左右に広がるように堀で道を作っていく。

 現在ある道は一度堀で分断してしまうけど、後で橋でもかけておけばいいだろう……

 とにかく、砂煙が近づいてくる。スピード勝負だ!


「村の人達、念のために壁の中央の後ろに集まって!!

 一番分厚くして、なんとかここだけでも耐えるから!!」


「カタカタカタカタ(ククノチは急いでと村人にハッパをかけている)」


 僕の声に村人たちは従ってくれた。

 緊急事態に理解を超えることが起きてよく考えられないのかもしれないけど、今は助かる。

 無駄に言い争う暇もない。

 僕は言葉通りに壁の一部に厚みを持たせる。

 堀から壁はなめらかなねずみ返しのようにして虫が壁を超えることを防ぎ、壁に直接激突しないように曲線で堀を作り上げていく。

 船の船首のような作りにして、虫の海を超えてほしい。


「来るよ!! アマテラスもスサノオも戻って! タマモ、ツクヨミ、いざとなったら殲滅させるよ!!」


「わかってるニャ!」


「その可能性はないと思うけどねー」


「油断はしちゃだめだよ」


「もちろんよ」


 とうとう目視で虫体を大量に確認できる。

 灰色の絨毯がうごめいて近づいてくる……ごめん、すごい苦手……

 

「颯が本気出したら、殲滅もできるんだろうけどね……」


「えっ、なに?」


 虫が大地を揺らすせいでタマモの言葉がよく聞こえなかった。


「お願い!!」


 ドドドドドドドッドドドドドドッドオドドドドッド!!!

 地鳴りを起こしながら虫が堀へとなだれ込む、そして、壁のなめらかなカーブに沿ってスムーズに2つに分けられていく。

 ガリガリと甲殻と壁が擦れる音が響くが……


「大丈夫だよね!? 大丈夫だよね?」


「問題はなさそうですな!」


「流石にこの数の相手は嫌だったブー」


「それにしてもすごい数ニャ」


「大丈夫って言ったでしょ?」


「うう、ちょっと気持ち悪い……いくらなんでも数が多すぎだよ」


 壁の上から眺める一面の虫の大群。

 そりゃ仕事でノミやダニとかウジとか見てきたけど、ゴキブリとかも苦手だし、こういうのは少し、さらにデカくて多くて……二度と出会いたくない。


 結局そのまま虫たちは村を通過して山へと向かっていった。

 森であれに出会ってたら森ごと焼き払っていたなぁ、良かった出会わなくて……


 虫が通り過ぎてしばらくしたら、村から歓声が上がるのであった。

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