第28話 絶景
連なった山々の間を抜けられる地点にようやく到達する。かなりの高さで恐怖心もあるが、それよりもそこから見えた絶景に言葉を失った……
「……広いんだね」
振り返れば広大な森林が広がっている。
そして、目の前には抜けるような青空と太陽に照らされた広大な草原が広がっていた。
山を超えた瞬間肌寒い風が強くなったけど、それを吹き飛ばすほどの絶景だ。
「これは、素晴らしい!」
「初めて外を見たのにゃ」
「これが、外の世界……ブー……」
「カタカタカカタカタ(ククノチは僕の方で嬉しそうに震えている)」
「颯のおかげで、こんな綺麗な景色が見れたよ!」
皆様のお姿が日に当たり輝いてあまりにもかっこいいしきれいだったから、久しぶりに照れまくっているのを必死に隠すのでありました。
「さて、下りの方が危険だから、気をつけて行きましょう」
「もう飛んじゃったほうが早いニャ」
「魔法を乱す魔獣もいた。危険だブー」
「また少しづつ道を作りながら下りましょう」
山を超えた先には道はなかった。本来の山越えの道はもう少し山を登らなければいけなかったけど、こちらは自前の魔法で道を作れるので、無理のない最短の新しい道を作りながら山越えルートを開拓した。ここから先も同じように道を作りながら山を下りていく。
大規模な山崩れとか起きれば流石にただでは済まないので、慎重に魔法を使って道を作っていく。
まどろっこしくても少しづつ高度を下げながら切り返しながら少しづつ山を下りてくる。
森側に比べると遥かに襲ってくる魔物の数が少なかった。
眼下に広がる草原にもいくつかの木々が生い茂った場所や、そして、遠目に人工的な建物が並んだ場所を確認している。
とうとうこの世界における人間とご対面かも知れない……
魔物が忌避されているだろうから、皆のことが少し心配だし、私もまともな人間とのコミュニケーションが取れるのか不安がある。
この世界からすれば、私は異物だろうし……
「できる限り目立たないようにしたいなぁ……」
「うちらの見た目はほとんど人間特別がつかないはずニャ」
僕の考えを先読みしてツクヨミが安心させるような言葉を発する。
「主殿、我らコボルト族には人間に近い存在もいる。そういった族の話を伝え聞いたが、多分私達は獣人と思われる。場所によるが獣人は人間とともに暮らしている。そこまで目立つことは無いと思われます」
「目立たないようにするなら颯は魔法をできる限り使わないか、抑えて使わないと」
「力を与えられた我々もそうだブー」
「少し、この世界の常識を知らないといけないかもね僕たちは……」
自分の力が異常で得意なものであることは理解しているつもりだけど、それによって場合によっては人間とかそういった者と対立する可能性もある。
できることならば、この世界にとっての悪いものである邪なる者との戦いだけに集中したいから、目立った行動は避けたほうが無難だろう……
「一番の不安点は、僕だなぁ……」
自覚はちゃんとある。
全員が驚いた顔で見てきたことは忘れない。全員の顔に「自覚あったの!?」って書いてあった。
ククノチも肩の上でとても驚いて固まっていた。
大変に失礼である。
まぁ、そんなこんなでゆっくりとしっかりと山を下りていく。途中何度か魔物に襲われたけど、僕たちの敵ではない。運んでいる物資も随分と少なくなってきた。山を降りたらどこかの森で補給をしなければいけないだろう……
山道を進む過程で馬車の荷台には多くの鉱石が積み上げられていく。
ちょっと重量的な問題もあって何箇所かで精錬して余計なものは置いていった。
魔力を含むような希少な鉱物を純度の高い状態で大量に手に入れたことはきっとこの先役に立つ。
アマ君とスサノー君があーだこーだと議論しているので、これからの生成物には期待できる。
タマモもツクヨミも実はものづくり大好き派、そしてなにより、僕はこういうものづくり大好物だ。仕事においても工夫して道具を作って思ったとおりに使えるとめっちゃ気持ちいいんだよ。
普通に売ってる道具だと、なーんかちょっと使いにくいものを、少しの工夫で劇的につかいやすくなったりするから、本当に面白かった。
今は旅における安全な休息と、戦いにおける役目を追い求めている感じになってしまっているけど、まぁ、考えて形にして役に立つと嬉しいよね。
「だいぶ楽な道になってきたね」
「そうですな。油断は禁物です、最近は平地の魔物も多くなっております」
「数も多いし動きも早いし厄介なのニャ!」
「力の調整に丁度いいブー」
「森の魔物たちほどじゃないしね」
「ところで誰か……普通の人間がどのくらいの強さか知ってる?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「カタカタカタカタ(ククノチは寂しそうに震えている)」
まずは情報収集をするために、気配を消して村へと近づくことに決定した。
ようやく山道を降り終えて草原に出る。
未だ人が入ったことがない場所に下りてきたので、腰丈よりも高く草が生い茂っており、低木も散在する。
「主、ここを進むのはやや危険かと」
アマ君の言う通り、このままでは草に潜んだ魔物に不意を取られる可能性がある。
気配探知も万能じゃない、相手が隠形に長けていればごまかされるし、相手の感度が高ければ逆にこちらの位置を教えることになる。
森でも何度か痛い目を見ている。
「見える範囲を整地しながら目的地まで近づいていこう」
アマテラス、スサノオが周囲を警戒しながら、僕とツクヨミ、タマモが草木を魔法で払っていく。
ククノチは魔法で空に浮いてもらって周囲を目視で警戒。
この陣容で少しづつ進むことにする。
途中手頃な森でもあれば食材調達や、動物がいれば狩りも行う。
そして山から見た小さな村を目標として進むことにした。




