第27話 山越
「皆に心配かけちゃったな……」
早朝日が出る前だったが、朝風呂に浸かって頭をスッキリさせていた。
結局悶絶したまま眠ってしまい、皆には気を使わせてしまった。
今日からは、あの姿を受け入れなければいけないわけだから、自分の羞恥心を抑えなければいけない。わかってはいるんだけど、頭では理解しているんだけど、赤面してしまう。
自分の中に秘めていた乙女な部分がここぞとばかりに爆発してしまっているような、そんな気恥ずかしさがいつまでも抜けてくれない……
変に意識してしまうから、余計に動揺してしまう。
「あー……これは……重症だなぁ……」
仕事に忙殺されたい。そんな事を考えてしまう。
獣医師あるある。
今日は暇だなぁ。とか、今日は早く終われそうだ。とか発言するとめっちゃ忙しくなるし。
気持ちが落ち込んでいて、めっちゃ仕事したい! と思ったときほど、暇になるもんである。
結局、挙動不審のまま皆と朝食を食べて、北の山を抜けるためにそそくさと出発することになる。
皆もなにか言いたげなんだけど、気を使ってくれているのが伝わって、申し訳ない。
でもさ、皆の姿をチラチラ盗み見るだけで、赤面してしまうんだ……
このままじゃいけない、きっと皆は私に気を使ってくれるし、このままだと傷つけてしまう。恥ずかしいけど、説明しないといけない……
馬車に揺られながら、そのタイミングを図る。
馬車の端っこでこそこそ皆の様子を伺いながらもぞもぞと挙動不審になっていると、情けないことにタマモっちが助け舟を出してくれた。
「楓って、言いにくいなら言わなくてもいいけど、良かったら何があったか教えてほしいの。
このまま距離を取られたら、悲しい……」
「あー、ご、ごめんタマモ……ふぅ……僕から言わなきゃいけないのに……
だめだな……。うん。そのね、まず第一に、君たちに理由は無いからね。
何も悪くないんだ、そのね、僕の、その、す、す、す……」
「ちゃんと聴いてるよ颯」
「ありがとう。
ひーひーふー……
き、君たちの姿が、ぼ、僕の好きだった人との妄想上の子供の姿に似てて、こっ恥ずかしかったんです!!」
「……」「……」「……」「……カタ」「……ブッ……キャハハハハ!! そ、そんな理由だったの!?」
ツクヨミの爆笑がきっかけで、全員がお腹を抱えて笑い出した。
僕はもう頭を抱えてゆでダコのようになるしかなかった……
「大丈夫だよー颯、少しづつ慣れていってね」
「うーん、颯っちは乙女だにゃー」
「主殿の新鮮な一面を知れました」
「きっとすぐ慣れるブー」
「カタカタカタカタ(ククノチは嬉しそうに踊っている)」
ぎこちなさは残るものの、きちんと告白できたことで気持ちの面では随分と楽になった。
そして、山道が険しく、皆で力を合わせて乗り越え、いくつかの戦いを終える頃には、とりあえず顔を見て赤面してしまうようなことは無くなってくれた。
やっぱり、なにかに没頭するということは大事だね!
「それにしても、颯っちはとんでもない人ニャ」
「ん? 何が?」
「主殿より名を与えられ、その序列に加わって初めてわかりました。
ここまで底なしのお力をお持ちとは……」
「どういうこと?」
「そばにいるだけでもすごかったブーが、今はもう溢れ出る力でどうにかなってしまいそうブー」
「カタカタカタカタ(ククノチは肉体をアピールするが変化していない)」
「魔力のコントロールが難しくて大変なのよ」
「ああ、私も最初大変だった……って、名前をつけると皆になにか影響が出るの?」
「はい。魔物にとって主より名をいただくということはその力を分け与えられ眷属、家族のような存在になることを意味しております」
「颯っちのそばにいて~魔力をたーっぷり吸収して成長してた私達は、さらに大きな力をもらったってことニャ」
「うちらも強くなってたから名付けは大丈夫かな? ってちょっとだけ思ったけど、やっぱり颯の魔力量は化け物だったね!」
「変化した体もまるでずーっとこの体だったかのように馴染んでるブー」
「カタカタカカタカタ(ククノチはくるりと一回転して見事に着地した)」
「あんまり魔力が減ったような気はしないんだけどな……」
「やっぱり颯っちは凄いのにゃ!」
「主殿、この眼下に広がる森から木を数本取り除いたとして、気になりますか?」
「うーん、気が付かないんじゃない?」
「そういうことブー」
「そういうとことも言えるかもね」
「どういうこと?」
「「「「「はははははっは!!」」」」「カタカタカタカタ」
こんなふうに団らんしているけど、実際は山道は結構危険が多かった。
空を飛ぶ魔物から丸見えだし、足場は悪いし、今は土魔法で山肌に休憩場所を作って休んでいる。
こうすることで安心して休むことができる。
普通に旅をするには少し厳しすぎる。
今後のことを考えて山道を整備しながら登ってきているので、思ったよりも時間がかかってしまうのでありました。




