表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/55

第26話 命名

 山越えの準備をしていた拠点に戻り、今日は名付けのための宴を開くことになった。

 コボルトくんが張り切って料理なんかを仕切っていた。

 魔物にとって名付けとは力のあるものにしかできないことで、名を与えられることは人間で言うところの貴族みたいな存在になるようなもので、とても名誉だし早々あることじゃないらしい。

 名付けのときに魔力を使うみたいで場合によっては危険を伴うみたいんなんだけど……


「まぁ、颯なら……」


「主殿はその心配する必要は……」


「颯ちゃんの魔力の心配? するわけないニャ!」


「颯殿の魔力は森豚の脂肪より多いブー」


 誰も心配してくれなかった。

 いいんだ、僕は涙目で料理を手伝った……

 保存していて熟成された肉がいい感じになっていたので、森で集めたスパイスと脂肪を火で温めて香りを移しそこに分厚くカットした肉をドーン! 表面を丁寧に火を通したら火を弱めて蓋をする。

 ゆっくりと内部へと熱を加えていく。美味しさの塊である肉汁を逃さないように肉の内部に閉じ込めちゃう! っていうのをコボルトくんが行っていた。いや、匂いがやばい。僕の胃袋が早く食べたいと雄叫びを上げている。

 それ以外の料理もなれた手付きで次々とテーブルに並べられていく。

 あっという間にテーブルの上には夢のような光景が広がった。


「それでは、お疲れ様でしたー!」


「お疲れなのー!」「お疲れ様でございました!」「お疲れーブー」「おっつー!」


「いっただきまーす! むぐっ、うんまーーーーい!!」


「美味しいのだー!」


「ふふん!」


「さすがなのですブー」


「うみゃい!うみゃい!」


 みんなで並んだ食事に夢中でかぶりつく。 

 様々な料理全てが本当に美味しかった。

 特に熟成肉のハーブ焼きは噛みしめると肉汁が口の中に弾け飛ぶ。

 肉自体の旨味が最大限に生かされ熟成され、そして絶妙な火加減によって脂の甘味と肉の旨味が最小限の塩とスパイスで最大限に引き出されている。


「こんな美味しいものは初めてだー!!」


 頬が落ちるとはこのことだ!

 天国のような食事はあっという間に終わってしまった。

 テーブルの上は肉汁一滴残らず平らげられた……最高だった……


 食後少し落ち着いて談笑し、そして、名付けの儀式へと移る。


 実は名前に関しては、すでにビビッときていた。


「コボルトくん、君の名前はアマテラスだよ」


「ははっ!! アマテラス……素晴らしい名を、ありがたき幸せ!!」


 ああ、なるほど。魔力が使用されたというか、魔力のつながりができたような感覚がする。

 こころなしかアマテラスの顔つきとかも人間らしくなったような気もする。

 相変わらず可愛らしいけど。


「ケットシーちゃんは、ツクヨミ」


「ツクヨミ……いい名前にゃ! ありがとうなのにゃ!」


 おお、猫っぽさと人間ぽさが見事に融合した感じに変わった。これは可愛い!


「豚くんはスサノオ!」


「おおっ! 力強い響きなのだ、ブー!!」


 ……あまり、変わってるようには見えない……?


「そして小狐ちゃんは……タマモ!」


「タマモなのー! よろしくね颯!」


 うーん、さらに美少女感が増してる! いいぞいいぞ!!


「そして案内板くんにも名前をつけてあげよう、君の名はククノチ!」


「……!!」


 枝がプルプルと震えている。(感謝の気持が伝わってきた)

 

「うん、たしかに魔力が使われた感じはする」


「……その程度の感想なんですな……素晴らしい主を持てて幸せであります」


「あんなに化け物みたいな魔力を注ぎ込まれて弾けるかと思ったのにゃ」


「力が満ち溢れるブー」


「体が熱いのですー!」


 カタカタカタ。ククノチは震えて喜んでいる。

 このときはうかつだった。

 軽い気持ちで名付けを行ったことを、翌朝後悔することになった。


「な、な、な……」


 目の前で朝食を準備している皆の姿が、明らかに変化していた……


「どうされたのだ主殿?」


「なんか変なのにゃ」


「どうしたぶー?」


「颯、どうしたの?」


 ひと目で分かる。

 皆の姿が、明らかに……私と、……師匠の面影が混じった姿をめっちゃ美化したみたいな感じに様変わりしていた……。


 ぴょこぴょこ。(手足の生えたククノチが飛び跳ねて喜びを表現している)


「まって、ちょっと自分の恥ずかしい心を見せつけられているような気持ちになってしまうから、落ち着くまで待って……」


 あーーーーーーーー!! と叫び出したいような羞恥心に襲われた。

 いやね、僕も乙女だからね、考えたことがないといえば嘘になるけどね、こんな形で自分の妄想黒歴史を、しかもクッソほど美化した妄想を叩きつけられるとは思わなかった……っ!!

 はーーーーーずーーーーーーかーーーーしーーーーーーーーーーいいいいいーーーーー!!!

 ここで師匠が出てきますかって!!

 いやね、重い重い重い!!

 子供の妄想を形にするとか!!

 ないないないないないない!!

 アマ君は、なんか、若い頃の師匠ってこんな感じかなーって風の色男だし、ツッキーは師匠が溺愛しそうな可愛い女子高生の娘って感じだし、スー君は大学生の頃でモテただろうなーって師匠だし、タマちゃんは目に入れても痛くないぐらいにデレデレになりそうな中学生? ククノチは可愛らしい木人になってるし、もう、何なのよっ!!


 結局その日一日、ベッドの上でゴロゴロして過ぎてしまうのでありました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ