第23話 対話
ノリとインプレッションで読んでください
温かい……
僕は、浮かんでいた。
まるで海でビニールベッドを浮かべ暖かな日差しを受けているような、といってもそんな事をしたのは遠い記憶になってしまうけど、とにかく、温かな空間を浮いて漂っている。
「……ありがとう……」
声、心に直接湧いてくるような優しい声。
確かに、聞こえたような気がした。
同時に、体を支えていた物が消えて、落ちていく。
正直自分が落ちているのか登っているのかよくわからない、どっちが天で地なのか、浮遊感なのか落下感なのか、よくわからない……
体を揺さぶられている気がする。
遠くから声がしている。
「……て……」
意識が混濁している。
目が開かない。
体が動かない。
「お……て! ……きてっ!」
声がする。
他人の声を聞いたのは、久しぶりな気がする。
心に届いた声じゃない、耳から声が入ってきている。
そして、激しく体を揺さぶられている。
少しづつ意識が戻ってくる。
だが待ってほしい、意識を失った動物に、大きな声をかけたり激しく揺さぶることは時に危険であることを伝えたい。
「おきてっ!! 起きてっ!! 起きろー!!」
「はいっ!! すみません!!」
バッと目を開ける。
「うっ眩しっ!」
大量の光が目に差し込まれ思わず顔をそむける。
「起きた!!」
「おどろきしや主よ!!」
「心配(十世†ょレ丶〒゛∋!」
「こ、このまま、死ぬかと思ったでござるよデユフフ」
まって、情報量が多い。
ようやく目が慣れてきた。
私の頭と耳とがおかしくなっていなければ、コボルトくんたちが話したように感じたのですが。
「お、おはよう?」
「!? 颯の声聞こえる!」
「おお! 主の声がさやかに心得らる!!」
いやごめん、コボルトくん、なんて?
「フ、⊃〃レ)フ、⊃〃レ)!
ャっ`⊂ぉ話〒"L≠lレン ナ=”йё!」
ケットシーちゃんはもっと、なんて?
「フヒヒ、これでようやく勝つる、颯しか勝たん」
「ぶふーーーっ!!」
思わず盛大に吹き出してしまった。草生える。
いや、豚くんの言葉が一番わかり易いんだけど、ギャップが……w
「そんなことより颯、空のやつ、なんとかしないと不味いよ!!」
小狐ちゃんだけはまとも……ってそんなことより、たしかにやばい!!
空に浮かぶ多分魔力の集合体がバチバチと周囲の大気をプラズマ化させているのか、暴走寸前って感じでうごめいている。
大木はその幹に巨大な穴ができていて、すでに瘴気も黒種も消滅している。
「颯、なんとかして!!」
「い、いや、なんとかって……」
瘴気から作り出した魔力、一度体外に出した魔力を操作するのは少し大変だし、こんなにも高濃度で、しかも励起している魔力はこちらのコントロールを受け付けてくれない……
「や、やばい……」
最初の頃の暴走とは桁違いの問題が起きる……
僕は、気がつけば白衣のポケットに手を突っ込んでいた。
そして、手に触れたものを掴み、かざしていた。
それは、巨大な魔獣から手に入れた、大きな魔石だった。
「吸いきれるの……? いや、やるしかない!!」
とにかく暴走している魔力の塊からなんとか魔石へと魔力を引き剥がして吸収していく。
魔石は掃除機のようにギュンギュンと魔力を吸い込んでいく、魔石の輝きがどんどんと増していく……それでも暴走した魔力は勢いを保っている……
「や、やばいよね?」
「弱気にならない! 他に方法が無いんだから、信じるしか無い!」
「あるじのさてもうしろやすきけしきが私達を安心さす」
「流石禾ム達丿⊃〃主囚L+мαナ=”ヮ!!」
「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」
うん、なんだろ、意志を言語にして受け取っている感じなんだけど、色付けが凄すぎて理解に時間がかかる。声というよりは意思をぶつけられていて、方言じゃないけど、各種族のなまりみたいなものを私の頭が翻訳してるんだろうけど……わかりづらいわ!!
「と、とにかく!! 出来ることを、する!!」
手に負えないような状態でも、出来ることを積み重ねることで助けることがある。
自分にできないことは出来ないんだから、今できることをやるしかない!
手を止めるより、動かし続けろ!
師匠の言葉だ。
今は、あの暴走魔力から魔力を引き剥がし、魔石に吸わせる。
僕に出来ることはそれだけだ!
丁寧に、効率よく、素早く、作業を続ける……
しゅるん。
気がつけば、巨大な魔力玉は魔石の中に納まっていた。為せば成る。手のひらで神々しい輝きをしている魔石に感謝する。
「ん?」
魔石が中に浮かび、ゆっくりと大木の欠損した穴へと移動していく。
なんとなく、本来ある場所へと戻っていくような、そんな直感を感じて、それを静観した。
穴へと移動した魔石に、大木の傷から根が伸びて魔石を包み込んでいく。
大穴に満ちた根が今度は大木全体を包み込んでいく……
魔石を中心に魔力が光り輝きながら大木全体へと伸びていく、その姿は今まで見たことが無いような幻想的な風景だった。
「ナg冫τ綺麗ナg冫〒゛U ょぅ」
なんて綺麗なんでしょう。今のはわかったよケットシーちゃん!
「かくも麗しき風景を我は見しためしなし」
こんな綺麗な風景を私は見たことがない。だねっ!
「萌~」
いや、それは違くないか豚くん!
君ね、細マッチョのめっちゃかっこいいスタイルでなぜその口調なんだ!!
「颯……これは何が起きてるの?」
「いや、僕もよくわからない……ただ、あんな禍々しい存在じゃなく、こっちが本当のこの樹の姿なんだと思う……」
ただでさえ大きかった大木が、更に枝葉を伸ばし巨大になっていく。
周囲の木々はまるで主人がこの地に帰ってきたことを喜び、その座を譲るように森に下がっていく。
気がつけば、広場に巨大な木が納まっていた。
「世界樹……」
見上げた木の印象が口から漏れたのだった。
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