第22話 瘴気
装備の確認をして、再びあの瘴気の中へと調査に向かう。
コボルトくんは軽装な革製の鎧に薄い金属製プレートを組み合わせた鎧に仕上げた。
武器はロングソードと槍を用意した。
ケットシーちゃんも鎧は軽装、武器は鉈くらいの刃渡りの短剣を2刀。
小狐ちゃんは皮の洋服とマント姿。
豚くんは金属を多く利用したプレートアーマー、武器は大きな斧と大きな盾を準備した。
私自身は白衣が有るので鎧は必要ないし、武器を持ってもろくなことにならないのでむしろ森を歩くための杖を用意した。
こうして皆の姿を見ると、RPGゲームの冒険者のように見える。
「リベンジだよ!」
僕の言葉に皆が頷く、とくにコボルトくんにとっては絶好の雪辱機会となる。冷静では有るものの、内心は燃え盛っていることだろう。
「前回の失敗は、この瘴気の中を闇雲に進んだせいだからね、こっちは弱くなるし相手は強くなるし、無策で進んじゃ駄目だった……もう、好きにはさせないから! 聖域展開!」
あの嫌な空気を瘴気と呼んでいる。
魔力を周囲に展開して、進むエリアの瘴気を飲み込んでいく、僕の純粋な魔力はこの思い空気、瘴気を中和する。浄化的なことが出来る。
赤目も黒種も僕の魔力とは相性が悪いらしく、僕は天敵みたいだ。
気配を隠して進むか悩んだけど、もう宣戦布告しながら正面突破を図ることにした。
魔法に名付けをしてイメージを強化する方法、ちょっと、恥ずかしいけど、この際は振り切っていくことにする。
手術の時の滅菌操作のようなイメージ、瘴気を消毒していくように魔力を広げていく。
範囲内に魔力濃度を高く保って進み、その範囲内に入った瘴気は立ち消えていくように消えていく。浄化した瘴気は魔力となって再利用していく。こうすることで、最初の展開にこそ魔力を消費するけど、その後は現物利用をしながら省エネで結界を維持することが出来る。というか、出来た。
「気が付かなかったな、この瘴気は魔力なんだね」
実験はしていたんだけど、この地ほど濃度が濃くなかったので浄化後は霧散していて気がつけなかった。
嬉しい誤算だった。
「そう考えると、この瘴気も悪いことばかりじゃないかも……」
この地に莫大な魔力が眠っているってことになる。
魔力は魔石に貯めることが出来るから、私が補充する以外の補充方法が見つけられるかもしれない。
「魔道具造りも楽しくなりそうだ!」
瘴気が有れば大量の魔力を手に入れられる。これは今後の調査のモチベーションにも繋がった。
目的地はわかりやすい、瘴気が濃い方向に進んでいけばいい。
前回よりも進むことが出来ているが、前回よりも苦戦していない。
やはり、僕の魔力の中では赤目たちは非常に戦いづらそうだ、やられたことをそのまま返してやっている。
そして、僕が鍛えた武具には僕の魔力がまじり込んでいるからか、赤目にとっては厄介な存在らしい。瘴気を使った魔法をよく防ぎ、瘴気を使った強化を切り裂くことが出来る。
僕の強化魔法もよく馴染むし、これは、想像以上の戦力強化になっていたことに今更ながらに気がついたのだった。
そして、ついにこの瘴気の根源と対面するのだった。
「この木が……瘴気を吐いているし、あれが黒種か……」
巨大な大木が大地を枯らし瘴気を吐き出している。
そして、たぶん赤目が狩った動物や魔獣の死体に黒種を植え付けている。
そして、大木の周囲にはおびただしい量の赤目がいる。
「100は軽く超すね……」
大群は襲いかかってこない、僕の結界と大木の瘴気がバチバチと押し合い拮抗しているラインを超えてこない……
「抑えてね皆も」
豚くんを中心に周囲への警戒は切らさない……結界内に大量のトラップを形成していきながら結界の魔力を高めていく。大木に意思があるのかはわからないけどここはファンタジー世界、ドライアドのような存在の可能性も考慮して地下も含めて結界を展開していく。
さらに結界を隠匿しながらこの周囲全体に外壁を造るように伸ばしていく……
僕の結界と瘴気のぶつかり合いは激化していき、ついに赤目が結界内に溢れた!
「来るよ!!」
堰を切ったように赤目たちが僕たちに殺到する。
「そこはっ危ないよ!!」
赤目たちが僕の設置した罠に触れ空高く打ち上げられたり爆発に巻き込まれていく。
味方の被害なんてお構いなし、恐怖という感情が欠落した狂乱の敵が大波のように接近してくる。
「正面にまとめるよ!! 土堀! 土壁! 土槍!」
包囲されるわけにはいかない! 僕の魔力をたっぷり行き渡らせた地面が即座に深い堀を形成しねずみ返しのように壁を作り壁面と堀の底に槍を作り出す。
正面にわざと道を残しておく、勢いを抑えられず堀に落ちて槍に穿たれる魔物も出たが、その狭い道に殺到する。
そこには土壁よりも危険な壁役が立ちふさがる。
「ブフォオオ!!」
戦斧が舞えば敵が切り裂かれていく、壁の内部に転がり込んでくる魔物もコボルトくんケットシーちゃんが刈りとって行く。
「キュイー!!」
草木が魔物の足に絡み敵の動きを鈍くする。そこに再び戦斧が振るわれ剣戟が血しぶきを作っていく。
「よし!! 包んだ!! 聖域展開、フルパワー!!」
大木を中心に地下まで全てを領域とした結界を作り出し、内部に大量の魔力を吐き出した!
瘴気を魔力へと変化させ、更に魔力濃度を上げていく、濃厚な瘴気も多勢に無勢、瘴気と同じように高濃度な魔力がキラキラと目視可能なほどの濃度になっていく。
バチバチと抵抗する瘴気が大木へと迫っていく!
赤目の魔獣はその光に触れるともがき苦しんでいる、豚くんたちと一緒に大木へと近づいていく、大木から枝葉が触手のように襲いかかってくるが、豚くんの盾が防ぎ、斬撃によって叩き落され、小狐ちゃんの植物たちが絡め取って行く。
「ちょ、ちょっと……量が……多すぎて……」
空間に満ちている魔力濃度が高すぎて……少し、しんどい……
もう、これ、ぶつけちゃおうかな……
「ええい! ままよっ!! 魔力玉っ!!」
周囲に満たした魔力を巨大な球体へと変化させ、大木に向かって放ってみた。
ドガーーーーーーーーーーーンっ!!!!!!!
巨大な鉄球が大木にぶつかったかのような音と同時に凄まじい衝撃波と魔力が開放され、目の前が真っ白になった……
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