第20話 発熱
豚くんの発熱は2週間以上続いた。
黒種に支配され、過剰な運動能力を発揮させられたせいで、熱中症のような状態になり、体温調整機能の恒常性維持が狂ってしまったためか、全身の肉離れなどの炎症の積み重ねか、とにかく40度以上の発熱が続いてしまっている。
43度を超えてくると即座に生命に以上が出る可能性が有るために、首や脇の下、股の付け根などの大きな血管が通る場所を中心に冷却、同時に全身の炎症治療、循環の確保に務める。
熱中症という病気は非常に厄介で、わかり易く恐ろしい言葉で言えば、一度茹で上がった卵は、生卵には戻せない。というものが有る。
体組織の組成成分であるタンパク質は熱に弱い。43度を超える体温が持続してしまえば、変性してしまい不可逆的、元に戻せない変化を起こしてしまう。
生命維持に必要な臓器が、ゆで卵のように変質してしまえば、元の状態に戻すことは出来ない。
体温を下げて意識を取り戻しても、命を救うことは出来ない。
茹で上がらないように一刻も早く体温を下げ、原因を取り除く必要が有る。
今回は過剰な、暴走とも言える運動における熱産生が原因、二次的に炎症等から発生する発熱だから、消炎治療と体温降下治療を並行する。血管に流す輸液の温度も下げて入れる。
注意しなくてはいけないのは、全身的に急速に、例えば氷水をぶっかけるような治療をしっかりとした対策を取らずに行ってしまうと、体は過剰な温度変化から身を守るために体表の血管を絞り込んだり、震えによる体熱産生を起こしてしまうために、体表に近い大血管を緩やかに温度を下げたり、過剰な温度で体を冷やさないことが大事になる。
とにかく、熱中症、熱射病は防げる病気であるので、させないことが大前提なので、絶対に注意なのです!
感染などによる発熱は、ある程度生体の防御機能として必要な場合もあるために、何でもかんでも体温を下げればいいという話ではない。熱があったら解熱剤、と考えなしに使うやつは救いようのない馬鹿だと師匠にもきつく言われている。
何事も原因と機序を考えて、最もいい方法を頭を使って考える。知識は選択肢を増やす。だから俺たちは学び続けなければいけない。師匠は常日頃からそう繰り返している。
「懐かしいな……」
こっちにきて久しぶりに師匠のことを思い出した。
氷嚢を布で包み交換しながら、物思いにふけってしまった……
「まだ平熱にはならないなぁ……」
それでも最初の山場は越えてくれている。内臓がだめになって多臓器不全を起こしたら、流石に何をやっても助けることは出来ない。最初の数日でその答えはでてしまうので、今は一安心ではある。
いつもどおり栄養は鼻カテから入れているし、酷かった筋肉の炎症もみるみる引いている。
「やっぱり獣人の回復力は凄まじいね……流石にあの筋肉の隆起は異常事態だったんだね。
すごい筋肉では有るけど、まぁ、常識のギリギリ範囲内だね」
勘違いされがちだけど、豚はデブではない。むしろ体脂肪率は低いほうだ。
マッチョなのである。
だからオークがこういう感じになるのは頷けるけど、普通はもっと腹ボテで可愛らしい容貌にすればいいのに……ちょっと筋肉とかがリアルで怖いよ……
「コボルトくんもケットシーちゃんも動物が立ち上がった感じというか、モコモコ感で可愛らしさが有るけど……豚くんは体毛が無くて原始人みたいな服着てるから、ほんと豚の顔の人間ちっくで……ブタさんのまんまのほうが可愛げがあるというか……」
もう見慣れてきたけど、最初の頃は、怖かったです。はい。
「しっかし、あの種迷惑だよなー……赤目と種の関係性も調べたいけど……
情報が少なすぎるんだよなぁ……あんな設定いせいしゃには無かったじゃないか全く」
それを言い出したら、一部のアイテム以外はいせいしゃ要素は皆無になりつつ有るわけだ。
「そもそも手術中魔法使わんじゃん。ノリで使ってしまってるけど、ほんとに、何なんだろ、ここ……それに、僕はどういう状態なんだろう……」
考えても仕方がないことは考えない質なんだけど、どうしても考えちゃう。
ここは死後の世界で走馬灯みたいな感じで自分の妄想の中を生きているってのが仮説なんだけどね。
「あ、みんな帰ってきた!」
この豚くんの一件からそれぞれ警戒もしているし、僕も注意を払っている。
あんなに見事に虚を疲れたことに皆かなりショックを受けたみたいで、なんていうか修行? それぞれ模擬戦見たなのをして腕を磨いている。
僕もたまに挑まれるけど、ほんとに早くてビューってなってわーーーーって感じになる。
「ま、魔法は万能なんだけどね」
なんとかこのチート能力で勝たせてもらってるけどね。
3人が雪の中ゲットした動物と赤目の魔物と遭遇して返り討ちにしてきたみたいで、お土産に魔石が加わっていた。
今日も赤目の魔石が手に入って、研究が進む進む~♪
魔物から時々出る魔石、赤目の魔物は100%ドロップです。そしてこの魔石、魔力を貯められれるんです。正確には魔法を貯められます。
そして、魔石同士を操作して、スイッチのように内部の魔法を放出できるので、うまくやると魔道具が作れるのです。これ、楽しくて楽しくて、手元にある道具を使って必要なもの造るのとか大好物なんで、すっかりハマってしまいました……はい。
そんな感じで、冬の森の中で豚くんの看病は続くのでありました。
毎週金曜日の午後18時に投稿していきます。
よろしくお願いいたします!
もし、次が来るまでお暇でしたら、他の作品もお楽しみいただけると幸いです。




