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第19話 越冬

 本格的な冬が始まった。

 この広大な森の北端であろうこの場所は、結構厳しい寒さに襲われた。

 空からちらほらと白いものが降ってきたと思ったら、あっという間に一面雪景色になった。

 鬱蒼と茂った木々のおかげで森の中は少しマシだけど、普通に過ごすのであれば、かなりの備えが必要だ。

 拠点の建物は豊富な木材、それに建坪なんて気にしなくていいから贅沢な作りにしている。

 外壁と内壁の間には断熱層として細かくした木くずを詰めている。

 さらに木炭も混ぜているので、防虫、防臭、防腐効果など様々な効果が期待できる。

 木くずと木炭、それと空気の層が外気を防ぎ、温度変化を抑えてくれるために外は極寒でも室内はほのかに温かみを感じれるほどだ。ここに魔法の力をちょいちょいとすれば、部屋の温度が安定してくれる。ぶっちゃけてしまえば、魔力をたっぷり込めた木材で組めば掘っ立て小屋でも超高級マンションのように防音、耐震、空調なんでもござれの建物になるんだよね。魔法すごすぎです。


「ただ、肉体強化以外生体にはあまり効果が無いんだよねぇ……肉体強化もとんでもないけど……

 もっとこう、傷がブワーッと治ったり病気がぐわーって治ってほしんだけど」


 医療に関しては、きちんと定石通りにしないとだめになっている。

 ただ、獣人達というか、少なくともコボルトくんとケットシーちゃんはものすごい回復力を持っている。最初からそうだったけど最近はなんか前よりも雰囲気が変わるぐらい強くなってる気がする。

 小狐ちゃんは……毛並みがとっても良くなったね。あと目にも止まらない速さは流石だよね!


「そろそろ帰ってくるね、作業場で待ってよっと……ん?

 なにこれ、早い!! しかも、3人共気がついてない!!」


 凄まじい速さで3人に近づいてくる気配が有る。

 気配と言っても、気配はない。

 何を言っているのかわからないと思うけど、気配を完全に消して接近してくる存在があり、3人はそれに気がついていない。僕は今魔法で周囲を監視しているからなんとか気がつけたけど、現場にいたら気がつけなかったかもしれない。


「風よ、我が身をぶっ飛ばせーーー!!」


 外に飛び出して爆風を作り出して3人の方向に射出する。

 そして、目的地に向けて、もう一度!


「いっけー!!」


 急降下、肉体強化を駆けて3人と敵との隙間に体をねじこむというか撃ち込む!!


「3人共前に飛んでー!!」


 すでに敵は気配を消したまま巨大な武器を振り上げていたけど、僕の言葉に即座に反応して振り下ろす武器から逃れてくれた。空振った武器は地面を爆ぜるようにえぐり取った。


「くらえー!!」


 落下中にファイアーボールを撃ち込んでいく。

 敵はその大剣で火球を撃ち落としていく……

 ズガンッ! と着地して3人と合流し、敵と対峙する。


「間違いなく、強いね。力だけじゃないみたいだし」


 見事な隠形に魔法への対応の技、それに力。これは強敵だぁ……

 砂煙が晴れて敵の姿がはっきりと顕現する。

 豚のような顔つきに、世紀末覇者のような盛り上がった肉体、それに……


「黒種付き……」


 武器を持つ右肩に真っ黒な塊、僕たちは黒種って呼んでいる。

 この黒種付きと赤目の魔獣はこの森で僕たちの驚異となる存在だ。

 以前に皆がやられたのは赤目、それ以外にもこの黒種はたまに現れる。

 色々と調べてみると、この黒種は実は除去できる。

 そのまま種を破壊しても、肉体の内部に伸びた黒い紋様と根が肉体をコントロールしてしまう。

 多くの犠牲の上で見つけたのが、私の純粋な魔力を叩き込むこと、そうすると紋様が引っ込んで根も引いていく。ただ、普通に叩き込むとこれが限界、腕とか手とか末端ならそのまま腕ごと切除などの方法もあるけど、完全に根を引かせる方法がある。

 魔磔の針、魔道具である針を黒種の正中に存在する脊髄のような部位に深く差し込み、そこに魔力を通すことができれば、完全に根をひかすことが出来る。イメージとしては硬膜外麻酔を入れるような形だ。そのためにはまず魔物の動きを制御する必要が有る。


「3人共、いつもどおり、あいつを抑えるよ!」


 小狐ちゃん、コボルトくん、ケットシーちゃんが頷く。

 出会いのときこそ赤目に圧倒されていた3人だけど、今では成長して僕と一緒に多くの赤目たちを圧倒している。

 豚くんのキレにキレて、本当に血管切れちゃう! って掛け声をかけたくなるような筋骨隆々なボディーをみても怯むことはない!


 コボルトくんは豚筋肉マンの攻撃を正面から弾き返して敵の動きを止めている。

 その隙きにケットシーちゃんは素早く背後に回る。

 もうこれ必勝パターン、前後からの攻撃を警戒しなければいけない事により、足元への注意がおろそかになる。初見で防げるやつはいない、と思う。

 小狐ちゃんが魔法で豚筋肉マンの足元から植物を生み出し、蔦や草がその肉体に絡みついていく、たかが草木と侮っていた豚筋肉マン、魔力によって強化された植物を簡単に振り払えるわけがないじゃない、黒い種子以外をびっしりと巻き取られる。ケットシーちゃんが膝に一撃を食らわせ、前のめりに倒れる。


「そこっ!!」


 そして私の針が黒種の中心を見事に捉え、深々と突き刺さる。


「はああぁぁぁぁっ!!」


 静かに魔力を注げば良いんだけど、これは雰囲気作り、この方が、気合が乗る。

 黒種が私の魔力を受けて灰色から白色に変化した瞬間、引っこ抜く!

 ここはタイミングを逃すと体内に種の組織が崩れたものを残してしまう。

 抜き取った瞬間に種はボロボロと崩れていく。


「完璧!!」


 シュルシュルと植物が大地に戻っていく。

 そうそう、小狐ちゃん、いつの間にか魔法を使えるようになっていました。

 正確には3人共使えます。

 コボルトくんは自己強化系魔法が得意。土も少し。

 ケットシーちゃんが風魔法、小狐ちゃんは独特な植物を操る魔法に水と火、と大変バランスがよろしい。


 先程まで痛々しいほどにパンプアップしていた筋肉は落ち着きを取り戻して、ただのマッチョになっている。

 

「無理な負荷のせいで肉離れとかは起こしてそうだね……痛そうだなぁ……」


 とりあえず、豚筋肉マン改め、豚くんを拠点につれていくことにする。 

 コボルトくんが軽々と担ぎ上げて運んでくれるのでありました。


 


 

 

 

毎週金曜日の午後18時に投稿していきます。


よろしくお願いいたします!


もし、次が来るまでお暇でしたら、他の作品もお楽しみいただけると幸いです。

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