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第17話 疎通

「もう、使い放題でいこう!」


 僕はもう、魔法の出し惜しみを止めた。

 ケットシーちゃんを治療するまでの間の拠点は、魔法を使いまくって構築してみた。

 木々を伐採し、地形を均し、周囲には魔物や野生動物対策の深い堀と罠。

 組み立て式の住居プラス木材を加工して作った住居。

 貯水塔のようなものを作って魔法で水をためて、上下水道的な設備も用意した。

 

「いやー!! 便利便利!!」


 天然の樹木をふんだんに使った(100%)風呂に浸かると、もう、コレ以下の生活レベルには落としたくないと思ってしまう。

 

「コボルトくんも入りなよー、怖くないってー」


 小狐ちゃんはお湯の快適さに負けて縁に顎を乗せてプカプカと浮いている。

 コボルトくんはビビりながらこちらを覗いている。

 手招きして呼んで少しづつお湯をかけて上げると、すぐにその魅力に魅了されてくれた。

 魔法でドライヤー代わりにすれば、皆の毛並みが輝いている。


「ちょっとギシギシしちゃうけど、前よりはいいね」


 ムクロジの実でもあればもっとさっぱりできるんだけど、それでも湯船をためてしっかりと風呂に入ると気持ちが違う。


「しかし、この体……いい体しているなぁ……僕の体とは思えないや」


 そう、自分の体なんだけど、自分の体とは思えないほど、なんというか、スタイルがいい。

 見慣れたガリガリの体とはまさに別物だ。

 肌も綺麗だし……うん、ちょっと、いや、かなり嬉しい……

 以前の体は、やっぱり女としては少し、辛いものがあったから……


 ケットシーちゃんはまだ眠っている。

 呼吸状態は安定しているし、じきに目をさますだろう。

 小狐ちゃんが見てくれているから食事の準備をすることにした、そしてコボルトくんが仕留めた動物の解体をしている時に思い出した。


「あれ? たしか灰と油で石鹸作れたよね……」


 すっかり忘れてたけど、お風呂を作ったからには石鹸が欲しくて仕方がない。

 思い立ったらすぐにやらないと気になる性分なもんで、もう、さっさと食事を作ってぱぱっと食べて、すぐに準備をする。

 アルカリを使うので、陶器の器……


「そうか、魔法を使えば温度を上げて灰を釉薬代わりにできるじゃないか!!

 ああ、やりたいことが急に増えたぞ!」


 魔法という万能の能力を使えば、焼き物だってもっと本格的な炉を作るのだってあっという間だ。

 そもそも製鉄なら炉を使わずとも数万度の炎だって作れる。

 これは、改革の時が来た!


「でもなぁ……森から出ないとなぁ……」


 急にできることが増えて、逆に何をすればいいのかわからなくなってしまった。

 とりあえず、灰汁と油を混ぜて、花の香りをつけたブヨブヨした石鹸もどきを作った。

 空気にさらしてアルカリ性を抜いてあげれば皮膚にも使える。

 これは、見た目とは裏腹に出来る奴だった。

 体をさっぱりするのもそうだし、食器や洗濯に大活躍だ。

 果汁や花の香りをなんとかつけたり、少しでも快適な風呂生活のために僕は頑張った。

 

 ケットシーちゃんは安定していた。意識を取り戻したのはあの戦いから3日後だった。

 いつもどおり、見知らぬ天井、見知らぬ部屋で目覚めたケットシーは警戒心全開だった。

 毛を逆立て、耳はぺたんこ、四足の戦闘態勢で部屋の隅でフーフーと唸っている。

 傷が痛むのか、顔は苦痛と恐怖で歪んでいる。


「小狐ちゃん、お願いします」


 こういう時に頼れるのは小狐ちゃんだ。

 トコトコと警戒するケットシーちゃんの前に歩き、キューキューと多分事情を説明してくれているんだろう。

 少しづつケットシーちゃんは警戒を緩めて、腰を下ろす。

 

「大丈夫だよ、悪いようにはしないから、ほらコボルトくんだって今ではうちの家族なんだよー」


 警戒させないように下手下手に手を出すと、ちょこんと手を乗せて、そのままクンクンと手の匂いを嗅いでいる。うん、天使だね。可愛すぎる。

 まだ毛はバサバサだし警戒心いっぱいだけど、落ち着いたらお風呂に入れてフワッフワにしてあげるんだから……うひひ……


 骨折の状態も外固定だけで良好、気胸も回復している。

 呼吸状態も異常なく、ドレーンも早期に抜去できた。

 食欲も旺盛だし、回復力が早い! やっぱり猫は凄い!

 1ヶ月もするとコボルトくんと競うように獲物を獲ってくるほどになった。


「にゃ~ん」「ぐるる」


 今日はコボルトくん3匹、ケットシーちゃん4匹、でわかりやすく勝ち誇っている。

 真っ黒な毛並みはお風呂でふわふわのツヤツヤ、お口周りは白くハチワレ柄がキュートなキャットシーチャンはここでの生活にすっかり満足してくれている。

 僕はお留守番ついでに馬車を改造した。

 魔法を使いまくることにした最適解、それが帆船ならぬ帆車だ。

 風を魔法で起こせば効率よく風のエネルギーを使って動力として利用できる。

 本当は空を飛んじゃおうかと思ったんだけど、革を縫い合わせて完全な気球を造るのが難しくて断念した。

 ケットシーちゃんとコボルトくんは意思疎通ができてるみたいだ。小狐ちゃんとも出来るみたいだし、自分だけはっきりした意思疎通が出来なくて寂しいが、いろんなサインからある程度何が言いたいのかはわかるようになってきた。

 そして皆の性格の違いもわかってきた。

 小狐ちゃんはプライドが高いけど優しくて実は寂しがりや。

 コボルトくんは真面目で優しくて、ちょっと頑固。

 ケットシーちゃんは気分屋で飄々としてるけど実は皆のことを気にかけてるし、気配りができる。

 それぞれ個性があって、それが余計に可愛らしい。

 ケットシーちゃんもコボルトくんと同じように器用ですぐに家事もこなせるようになった。

 おかげで僕は随分と楽をさせてもらって……またダメ人間に戻りそうなので、一定の家事はやるようにしている。

 

 ケットシーちゃんの回復、旅の準備のための物資の確保も終了し、再び森を行く旅を開始する。

 異なるのは移動方法だ。


「いやー楽ちん楽ちん」


 魔力によって起こされた風が帆を膨らませている。

 押すよりも遥かに速い速度で移動できている。

 この森の直線道路も、たまには役に立つのであった……

毎週金曜日の午後18時に投稿していきます。
































よろしくお願いいたします。
































































もし、次が来るまでお暇でしたら、他の作品もお楽しみいただけると幸いです。

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