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81 星の隠れ家

 夜の間に荷物をまとめて、静かにそれらをタクシーに乗せて、ホテルからずらかった我々は、海の中に眠ってたトレーラーを浜辺に持ってきて、荷物をその中にまとめた。


 イオリはものすごい勢いで荷物整理をして、収納上手な彼のおかげでキャビネットの中がぎっちりになったけど全てが収まった。


 当日はそのまま寝るしかなかった。ちょっとカビ臭いマットで彼が寝て、私は残ってるアサルトやヘビースナイパーのメンテをしつつ、夜中はずっと周囲を警戒していた。


 翌日になると忙しくなった。オリオン様から「どこに行った?」とイオリに連絡が来て、彼は事情とトレーラーでこれから生きていくことを伝えると、分かってくれた。


 レイヴも俺に黙っていくなよって嘆いてたけど、別にいつでも遊びに来れるので、それを伝えると納得してくれた。


 アジトで仕事をこなして、その帰りにモールに寄ったイオリは、マットやワイヤレスコンロ、あの如何わしいお店で赤いランプや新しい鎖など、全てを揃えた。


 翌日は仕事帰りにトレーラーを改造してくれるお店に寄って、ユニットバスのスペースに仕切りを入れて、トイレとシャワーを別にした。その二つも最新のものになって、ついでに壁紙も新しいのに買えた。


 すると彼がソファの部屋やベッドルームの壁紙も凝り出して、ソファの部屋は大理石の白いペイント、ベッドルームは赤いシックな壁紙に変えた。


 運転席のハンドルも新しいのに変えて、席も新しくなった。更に自家発電装置を埋め込んでもらい、オートタレットもつけてもらった。もうここで一生住める感じになった。


 それが終わる頃には彼はクタクタで寝てしまった。次の日、仕事から帰ると彼は寝室のデコレーションにずっと取り組んだ。そして寝た。


 翌日も仕事が終わるとまたトレーラー改造のお店に行って、今度はミニキッチンを改造して、冷蔵庫もつけてもらった。キッチンにある引き出しを引くと簡易テーブルになって、調理がしやすくなったらしい。


 その翌日も仕事が終わると今度はソファを新しいものに変えた。黄緑が気に入ってるのにと言ったら、彼は色はそのままにして、高級なしっとりとした素材の新しい物を選んだ。


 ソファには下に引き出しがついていて、従来のものよりも収納出来るスペースがあった。彼はそこに自分のネクタイや小物を入れることにした。


 その次の日も、彼はベッドルームのデコレーションに勤しんだ。天井にフックをつけて、鎖を垂らし、しかもそのフックは移動可能にしていた。


 ライフルのかけられている壁はそのままで、オリオン様に奪われたままのマークスマンがかかってたパーツのところに手錠と縄を引っかけた。


 ベッド下の引き出しにはそれ系グッズを入れた。窓の上にある壁掛けのチェストの中には、彼が満足げな顔をして、天体望遠鏡を入れた。


 電球を変えたおかげで、寝室の明かりは真っ赤になった。彼はその中で私をハグしながら眠るのだ。ぐったりと。


 そんな一週間だった。トレーラーは目まぐるしい変化を遂げて、移動する小型高級住宅のようになった。シャワールームに小窓や換気口までついてるし。


 でもね、私は不満だった。今日は犯人はティーカップ第七話の放送日だ。でも彼はもう疲れて寝てしまっている。仕事も増えてるので仕方ないけど、あれからずっと二人でいちゃいちゃはしてない。


 デレラロームを一人聞いて、トレーラーの屋根の上に座って、星を眺めてる。今トレーラーは郊外の砂浜に止めてあり、この辺りは夜になると誰一人居なくなる。


 いてもタレットが撃ってくれる。私は星空の下で、イオリの麗しいビブラートを聞いてた。切ないものよ。


 あれから一週間、イオリのノアフォンはひっきりなしに鳴ってた。


 サラだった。レイヴ曰く、我々があのホテルから消えたことを知ると、彼女はレイヴにどこに行ったのか言えと何度も訴えたらしい。レイヴは知らないと答えたって。


 彼女は我々を探してるらしい。バリーにも頼んだらしいけど、彼は協力したがらないみたい。バリーはあの時イオリに殴られながら我々に近づかないように催眠をかけられたからだった。


 彼女から逃げられて良かったと思ってる。でも欲求不満なものは不満だ。つい、口が尖った。


 ……そろそろ放送時間だ。私はポッドを消して、屋根に寝そべって、ノアフォンでテレビ画面をつけた。犯人はティーカップのあらすじが流れてる。


 イオリと見たかった。でも彼は疲れてる。分かってるけど少し寂しい。ってか、欲求不満である。あーもうだめだ。


 全然話が頭に入らない。刑事がぐだぐだ言ってるけど、結局犯人が分からないとかそんなことばかり言ってる。しかも刑事が怪しがってた人が殺されてしまった。


 あれだけ登場した多数の人物が、ポロポロやられていってる。しかも舞台の小島から出られないし、刑事はぐだぐだしてるから、犯人のやりたい放題だ。


 まだジュンコ夫人は生きてる。私はそれだけでニヤッと笑った。このことを明日イオリに話そう……そしてぐぬぬとさせたい。もうここまでくると、ジュンコ夫人が死なないように見守る為に、これを見てる気がする。


 さくっとドラマは終了した。一人で見てたから、集中出来たのはいいけど……寂しい。


 私はFOC業務用のイヤホンでデレラロームを聴きながら、屋根から降りて部屋の中に戻った。新しい家具の匂いがするけど、彼の香水の匂いもする。


 ……。


 ノアフォンを見た。因みにこの一週間、私の方にもサラからの着信はあったけど、今日は無い。


 連絡帳の名前をスライドすると、バートの名前があった。あの日以来、連絡はしてなかった。


 選択肢は二つ。密かにバートを呼んで、チップをあげてご奉仕してもらうか、色んなものを我慢しながらイオリの隣で寝そべるか。


 そんなの決まってる。私はコクリと頷いた。

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