07
聖都への帰り道、行きに絡まれた冒険者達には会わなかった。俺と違って持てる荷物に制限が有るのだから長期滞在は出来ないのだろう。
昼過ぎに北門から聖都に入り、東地区を回って南地区のバート商会へと向かった。最終的に狩れたのは兎十匹、猪七匹、熊五匹だ。熊が売れる事を祈ろう。
「こんちわ~獲物持って来ました~」
「いらっしゃい、ジン君。会頭なら裏に居ますよ」
何時も笑顔のお姉さんに癒されつつ挨拶をして裏に向かうと、冷蔵倉庫の建築中で外壁を建てている所だった。
「やあ、ジン君、いらっしゃい。取引でしたらちょっと待って貰えますか?今親方と相談中なので」
忙しそうだったので「解りました」と返事をして、建てられた外壁を見にいく。外側は厚さ3cm程の木の板で、その内側に厚さ2cmの鉄板が貼り付けられていた。
「あれ?中空構造じゃないのか・・・・・これじゃ効率悪いんじゃないか?」
軽く叩いて確認してみたが、やはり唯の鉄板だ。
「おい!てめぇ、俺達の仕事に文句でもあんのか!」
建て方をしていた職人に俺の呟きが聞こえたようで、仕事に文句を言われたと勘違いして怒鳴られてしまった。
「いや、あんた達の仕事が如何こうじゃなくて・・・・・」
「うるせぇ!素人が口を挟むんじゃねぇぞこらぁ!」
他の職人達もやって来て口論となってしまい、バートさんと親方さんが止めに入ってくれた。
「一体何が有ったんです?説明して貰えますか?」
「そいつが俺達の仕事に文句言いやがったんだよ!」
「いや、だから、仕事に文句を言ったんじゃなくて、倉庫の構造自体が気になっただけなんだって」
「俺達ゃ図面通りにやってんだ!それで文句なんぞ言われたくねぇんだよ!」
「まいったなぁ~・・・すみません、バートさん・・・・・あ、そうだ!これを見て貰ったら解ってくれるかも!」
俺の説明で納得出来ない職人達とバートさんにバッグからコップを取り出して見せた。ステンレス製の中空構造の奴だ。
「こう言う風に内側に空気の層を作る事で中身の温度が下がり難くなるんですよ。俺の居た所では冷蔵庫の外側もこう言う風になってたんで、こっちは違うのかって思って・・・誤解させちゃってすみませんでした!」
取り合えず誤解させた事は誤った方が良いと頭を下げたが、誰も何も言わない。何か余計に怒らせちゃったかと思い、頭を上げたら親方がコップを指で叩いた後、首を傾げてから捲し立ててきた。
「・・・・・何だこれ・・・如何やって作ったんだ?・・・・・いや、今はそれはいいか・・・おい、ジンとか言ったな、今言った事は本当か?!中の鉄板を二重にするだけで保温能力が上がるんだな?!それが本当ならとんでもない事だぞ!バートさん!すまねぇが今日の仕事はここまでだ、あんた等も一緒にアルバート商会まで来て貰うぞ!お前等ぁ!直ぐに帰り支度しろ!それから、この事は他言無用だ!少しでも喋ってみろ、クビにした上に簀巻きにして掘りに放り込んでやるからな!!」
「「「は、はい!」」」
どたばたと帰り支度を始める職人達と、唖然とするバートさんと俺。
あれよあれよと親方達の乗って来た馬車に大工道具と一緒に乗せられ、気が付くとアルバート商会の応接室に居た。
俺とバートさん、向かい側にアルバートさんと親方さんが座っていて、間に有るテーブルの中心には俺のコップが置いてある。
親方さんがアルバートさんにコップを使って中空構造の説明をしていたのだが、これを他の魔導具に生かせないかとか、時代が変わるとか、豪い興奮しててちょっと引いた。
「親方、ちょっと落ち着いて下さい。はぁ・・・確かに凄い発明と言うか発見ですよ、これは。ですが、魔力石は減らせても補強も含めた鉄板部分が増えるので単価が上がり過ぎます。ジン君と言いましたね?何か他に効率の上がる案が有れば言って下さい。物になるなら商品登録しますので貴方にも利益配分が行きますよ」
商品登録とは特許のような物らしい。
「え~っと・・・・・あ、ファン・・・風で倉庫内の空気を攪拌して温度を一定にすれば効率が上がるとか聞いたような・・・・・」
エアコンを使う時に扇風機で室内の空気を攪拌して~とか聞いた気がする。
「成る程・・・・・そちらの方は研究させましょう。取り合えず、この中空構造でコップとポットを試作してジン君とアルバート商会の連名で中空構造の商品登録しますが宜しいですか?」
「え、ええ、俺は構いませんけど、バートさんは・・・・・」
「うちは完全に畑違いですからね。今建てている倉庫を新しい物に改築する時に少し値引きして貰えればそれで」
「勿論値引きさせて貰いますよ。ジン君、会員証をお願いします。他にも何か案が有れば言って下さい。それに見合った報酬は出しますからね」
商業組合の会員証を出してアルバートさんに渡すと、アルバートさんが俺の名前と登録番号を紙に控えた。これで商品登録が出来るらしい。
「他にですか?え、え~っと・・・馬車に積める小型の冷蔵庫とか・・・中空構造の水筒?・・・あ、魔導コンロの火力が弱いのが気になったかな。あれって焚き火と然程変わらないから調理に時間が掛かって・・・・・」
「ほう、それは面白そうだ。特に小型の冷蔵庫は貴族様に売れそうだし、水筒は冒険者に売れそうですね。コンロの方は改善案は有りますか?」
「火の吹き出し口を細くすると良い筈です。え~っと、広い所から狭い所を抜けると勢いが増すんですよ。それと、下から風を送ると良い筈。炭も風を送ると火力が上がるでしょ?あれと同じです。後は火力の調節も出来たら良いかなって思いました」
「おぉ~・・・複数の魔法を組み合わせると言うのは考えた事もなかった。それも冷蔵庫と共に研究させましょう。これからも何か思いついたら何時でも来て下さい。歓迎致しますよ」
そんなこんなで話し合いも終わり、アルバート商会の馬車でバート商会まで送られた。バート商会に着いた時にはすっかり日も暮れて宿の空き部屋も無く、バート商会に泊めて貰う事になった。
そう言や狩った獲物の取引をしていなかったが「何だか疲れましたし、明日にしましょう」とバートさんに言われ、俺も精神的に疲れたしと、二人で食事をして客間を借りて就寝となった。
この日、アルバート商会で話した魔法の組み合わせによる相乗効果が後に様々な分野で利用、応用される事となり、アルバート商会がその第一人者として有名に成るのは別の話しだ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




