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09

「兎に角席に着いて好きなだけ注文しろ。話はそれからだ。心配なら支払いだけ先に済ませても良いぞ」


 彼等にメニューを渡したら「好きなだけって言われても何頼んだら良いか解らないわよ。こんな高そうな所で食べた事ないし・・・・・」って、年上らしき方の女の子に言われた。他の連中はメニューを凝視して固まってるし。


「はぁ・・・・・仕方ねぇなぁ。面倒臭ぇから全員同じ物で良いか?」


 取り合えず肉だなと、おかみさんにお勧めの肉料理とサラダにスープとパンを六人前頼んでから自己紹介をさせた。

 男性陣はリーダー格のやたらと突っかかって来た十七歳のライエルと十五歳のヒースとニックで、女性陣は十六歳のミリーと十五歳のエレナ。彼等は西地区貧民街の孤児院の出だそうで、前回の狩りで剣と槍が欠けたので修理をしようと彼方此方回ったが修理代の足元を見られ、ライアンさんの所を頼ったのだそうだ。女の子達も彼方此方回って仕事を探したが、何処も門前払いであそこしかなかったと言う。


「でもなぁ・・・あそこってアレだろ?所謂連れ込み宿的な奴。お前等あのまま働いてたら客取らされてたと思うぞ」


 気が付いてなかったのか青褪める女の子達。と言うか、男の子三人も気が付いてなかったっぽい。何か目が泳いでるし。で、給金を聞いてみたら一日二千メルだと言う。安過ぎだろ。


「こりゃ間違いないな。ある程度経って疲弊しきった所で『もっと稼げる方法が有る』とか言ってきたと思うぞ。そんで場所代だの紹介料とか言って上前撥ねてお前らには端金しか残らない、と言う訳だ。あいつ等から金借りたりしてないだろうな?借金を盾に平気で強要して来るぞ、ああ言う奴等は」


「そ、それは大丈夫です・・・でも、何度か『困っているなら貸そうか』って言われました・・・雇ってくれたし口は悪いけど親切な人だなって・・・・・」


「親切な奴だったら金を貸すより給金上げるだろ。貸すにしたって借用書は書かせない。まぁ、良い経験になったと思いな。取り込まれる前で良かったじゃねぇか。それで、お前等何処に住んでんだ?」


 住んでいると言うか泊まっているのは五人部屋の木賃宿で、武器防具は借り物で荷物は冒険者組合に預けているのだそうだ。素泊まり一泊千五百メルでベッド無しって・・・雨風が凌げるだけマシなのか?


 で、武器が壊れて狩が出来ないし、女の子達の稼ぎじゃ食事も侭為らなくてライアンさんに無理を言って頭を下げてお願いしていたと。


「ん?この前の狩りの獲物は如何したんだ?組合に買い取って貰ったんだろ?どれだけ狩れたか知らねぇけど、そこそこの稼ぎになったんじゃないのか?」


「あ~・・・その・・・ブラウンラビット七匹しか狩れなくて・・・武器の修理代でギリギリだったんです・・・・・」


「少なっ!五人で七匹って・・・ああ・・・いや、それでも七万だろ、修理に出しても多少は余裕が有る筈だろ」


「え?・・・二万七千だったけど・・・・・ジンさん別の獲物と勘違いしてません?ブラウンラビットじゃ、一人頭二匹は狩れないと余裕なんて出ませんけど・・・・・」


 何で半額以下?と、良く考えたらこいつ等は冒険者組合に手数料取られているのと、攻撃で毛皮に傷が付くからだと気が付いた。それを教えてやったら全員落ち込んでしまった。そこまで違いが有ると思っていなかったんだろうな。俺も驚いたし。


「ま、まぁあれだ、武器を使って狩るなら猪位は狩れる様にならないとって事だな。良い機会だし、冒険者辞めちまえ。言った通り暫くは俺が養ってやるし、仕事も見つけてやるからさ。お前達読み書きと計算は出来るか?」


 読み書きは一応全員出来るらしい。ライエルはちょっと怪しいらしいが、計算はライエルが一番出来ると言う。冒険者を始めたばかりの頃に彼方此方でお釣りを誤魔化されたのに気が付いて気合で覚えたとかドヤ顔で言われた。どんだけ騙されたんだよこいつ。まぁ・・・俺も散々騙されたんで人の事は言えないけど。


「良し。お前等、飯食ったら冒険者組合に行って荷物引き取って登録抹消して来い。今日から暫くこの宿に泊まる事になるから盗難の心配は無くなるぞ。おかみさ~ん、部屋六人分お願いしま~す」


 おかみさんが宿帳を持ってきてくれて、全員に名前を書かせて俺以外の連中の分は取り合えず二十日分支払った。


 そして、料理が出揃ったので食べ始めたんだけど、何故泣く?!


「だっでぇ・・・ごんなに旨いもん食っだ事なぐでええぇぇぇ・・・・・」


 ほんと、どんだけ酷い生活してたんだこいつ等。おかみさん苦笑いだし、俺からしたら薄味なんだけどなぁ。


「はぁ・・・まぁ仕方ないか・・・・・腹一杯になるまで幾らでも食べて良いからな。後は~・・・服と靴も買いに行かなくちゃなぁ・・・・・」


 全員に腹一杯食べさせて少し休んでから彼等を冒険者組合に送り出し、俺はバート商会へと向かった。


 例によってお姉さんに挨拶してからバートさんの居る執務室へ。う~ん、頭の痛い事が続いたから癒される。

 執務室に入ってバートさんに彼等の話をして、仕事を回して貰えないかとお願いしたら叱られた。


「ハァ・・・厳しい事を言うようですが、そう言うのに係わっていたらキリが無い事は解ってますよね?全てを救う事が出来ない以上は、見捨てる事が自分を含めた〝身内〟を守る術に為ると言う事を覚えておいて下さい」


「ぅ・・・はい・・・すみませんでした」


「で、全員は無理ですが、二人なら雇えます。以前ジン君にも言った配達の仕事ですが、最低限の教育が必要に為りますから、お客様に失礼にならない格好をさせてから連れて来て下さい。組合員登録も必要ですし、読み書きと最低限の計算が出来る男の子を、ですよ」


「はい!有難う御座います!!」


 何だかんだ言っても優しいバートさんに頼り過ぎな気もするが、この恩は狩りで返せば良い。俺は俺に出来る事をする。目的も、目標も、生きる意味さえ持たなかった俺が漸く見つけたんだ。今はバートさんの為に狩りをして、得たお金であいつ等が一人前になって巣立って行くまで力になる。それで良い筈だ。


 バートさんに再度お礼を言って頭を下げてバート商会を出た。宿屋に戻ってお茶を飲みながら彼等を待っていると、暫くしてニックが一人で戻って来て、冒険者組合まで来て欲しいと言って俺の手を引いた。


「ミリー姉さんとエレナが他の冒険者に捕まって連れて行かれそうなんだよ!あいつ等の方が人数多いし力も強くて如何にもならなくて、ライエル兄さんが俺にジン兄さん呼んで来いって・・・・・二人を助けてくれよ!ジン兄さん!!」


 何か早速面倒事だよ。マジで頭痛てぇ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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