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123 怒りの惑星

下僕一号のファーストコンタクトです。

 この星は怒っていた、理由などとうに忘れたというのに。

 この星は嘆いていた、何を嘆くのかも忘れたのに・・・・・・


「ふーん、なんか怒ってるみたいね。それも自分でも意味がわからないような、普通なら発狂するほどのストレスを長時間味あわされているみたいね。まあ、私には関係ない話だけど・・・・・・」

 惑星に降り立ったホムンクルスの少女は、トレードマークの全てを映し込む湖の深淵のような流体染色を施した深い水色のドレスを纏って傲岸不遜に惑星のモニュメントに腰かけていた。

「マスター、このピラミッド状の物体に脅威は見られません。また、周囲十キロメートル以内にも敵意は感じられません」

 下僕一号の召使いである魔人アンドロマリウスが報告しながら淹れたての紅茶を主人に給仕する。

「うん、ご苦労様。でも、こうして待っているのも時間の無駄ね。とりあえず、砂漠と言えば雨でも降らせましょうか。埃が立つのも鬱陶しいことだし」

 周辺の大気状態から、凡そ数百年は雨と呼べるほどの水が降ったこともない空に突如雨雲が湧き、雷鳴が轟く。

 黒雲からは、かなり強い雨が降り注ぎときおり稲光が明滅する。もう、頃合いかと下僕一号は雷雨の術を切り上げた。すると、五分程度で水浸しの地面は元の乾いた砂漠に元通りとなった。

「ふふ、手の掛かることね。アン、どう反応は?」

「はい、マスター。短い間でしたが地下数千メートルの辺りで、反応がありました。如何しましょうか?」

「ふっ、ならば押して通りましょう、地獄では鬼の流儀で、極楽では仏の習いで、流星落とし(メテオアタック)!」

 突如、音速を超え隕石が瞬く間に下僕一号の見下ろす地面に激突し、東京ドームよりも広い範囲で大量の砂が舞い上がった。

 砂煙が晴れた後には、妙に灰色に輝く結晶体の樹木が姿を現した。


「この地を荒らすのは、誰だ?」

「ふふ、お初にお目に掛かるわ。偉大なるマスターの右腕、下僕一号よ。よろしくね」

「ほう、遠路はるばる数千光年の距離を超えて来られたか。その労に免じて不作法は咎めぬが、乱暴者はさっさと立ち去るがよい!」

 結晶体で出来た樹木は、赤、緑、紫、橙と明滅によって不快感を露わにしていた。

「まさか、今来たところよ。少しはお茶でもしましょ。アン、用意をおし!」

「はい、マスター」

(ふう、乾燥した星ではお茶が美味しいわね)

 テーブル上には、アンドロマリウスによってケーキ、クッキー、フルーツを挟んだサンドイッチがテーブルに所狭しと並べられていた。

「ほお、これが異星の茶菓子か。残念ながらわしには味わえない美味らしいな、目で愛でるが精々か、それでも永きの無聊を慰めることはできるの。礼を言うぞ」

「うーん、食べられないなんて可哀そうね。どうにかならないか、連れに聞いてみるわ」

 宇宙船太陽系マンズーマ・シャムセイヤのコントロールルームで様子を見ていた竜は、白衣を着た美人さんに尋ねた。

「この惑星の生物にお茶菓子を食べさせるなんて、難題を押し付けられるとはご愁傷様だなあ、ネコさん。なんとか、なりそうかい?」

「そうね、竜さんの詐欺(スキャム)を応用して彼らの代謝機能をバイパスすればいいはずね。具体的には物質をエネルギーに転換するタイミングで神経細胞に快楽物質を形成させればよいはずよ。試しにやってみようかしら、くすっ」

「わかった、俺に出来ることは協力するよ。力を貸してくれ。隣人への挨拶は大事だからな」


 数時間後、惑星では下僕一号主催のお茶会が盛会を迎えていた。

「ほほお、これがスイーツを食すということか。ふむぅ、この快感は癖になりそうだな」「ふふ、また食べたくなったらお買い上げになればいいのよ」

「そうか、仮想通貨霊子(レイス)で今後も取引してもらえるのはありがたいな。替わりと言ってはなんだが、ここに蓄えられた知識をそちに与えよう」

「ふ、まあ頂いとくわ。友人として、これからもよろしくね」

「友人に乾杯」

「乾杯」

 結晶体生物の掲げるカップが、まばゆいばかりの蛍光を放って消失した。

 


2021.3.31 誤記修正

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