大会当日
今月中には終わると思いますので、よろしければ最後までお付き合いお願いします。
あっという間に準備期間は過ぎて、運命の日が来た。応募者たちは最初の大会議室に集まり、くじ引きで決めた順番で参加者がどんどんと発表していく。山野達は13組のうちの10番だ。
案の定どのチームもCellarの作る感じとは真逆の物か、やはり真似をしてしまった感じで作ってきている。しかし7番目にプレゼンを始めた2人組みに会場は息を飲んだ。
cellarへの反逆ですらあるような攻撃的な作品。にも関わらず目を引く。メッセージがCMから伝わってくるようなプレゼン。そして的確にCMのコンセプトを説明して行く。
プレゼンが終わって歓声が上がると2人のうちの一人が「私達は合格したとしても、チームに入りたくありません。自分達でチームを作って、Cellarに勝ちたいです。」審査席にいる倉科と、進行を務めていた小岩井に向かって見栄を切った。
その後の人達のプレゼンは自分を見失った様にボロボロになり、そしてアウェーの様な空気の中、山野たちの出番が来た。「大丈夫負けてない。」海野が呟くと、「当たり前だろ。誰が審査したと思ってるんだよ。」川田が言った。「作品は勝ってますよ。海野さんがプレゼンでミスらなければ大丈夫ですよ。」山野も冗談っぽくプレッシャーをかけた。
「誰に言っているんですか?行きますよ。」珍しく海野が川田のような自信で壇上にあがった。
そしてCMが流れると会場はざわついた。最初の5秒でわかる、カメラワーク、構成、皆が感じるのは、Cellarのパクリ?しかしその疑念はCMが終わると喝采にかわった。
大きく深呼吸をして海野が喋り始める。「チームの代表の海野です。私達は特に、チームの山野と私はCellar(私は部長)が大好きです。オタクと言っても過言じゃありません。川田は別にらしいですが(笑)」川田が気まずそうな顔をして会場では少しの笑いが起き、海野は続けた。
「なので私達のコンセプトはコピーではなく媚びる事でもなく”Cellarを超えるCellar.模倣では無く進化"です。自分達の好きなモノをもっと進化させた物を作れた自信があります。そしてみなさんの反応で、私達が選んだ道は間違いではないと言う確信も持てました。
作業工程は、Cellarをあまり知らない川田が私と山野の作った物に批評や意見を出していくと言うものでした。倉科部長の言葉を借りると、Cellarに新しい物をとり入れた物がまさにこの作品だと思います。先程のお2人とは違った形ですが私達もCellarに勝つ事を目標にやりました。」
そう言い切った海野は輝いていた。が、「あっ、私はもし選んでいただいたらCellarには入れて頂きたいです。やっぱりファンですし。」と、オチもつけた。その後残りの3組がやりにくそうだったのは言うまでもない。
発表が終わり2時間ほどの審査会議が行われ結果が発表された。選ばれたのは7番目の作品だった。




