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決戦準備

回り道しないで駆け抜けたいなと思う毎日。

ある日のブースに言い合いのような熱の入った声が響く。「だからそうじゃないって言ってるじゃないですか‼️もっと部長の作ったものを大切に、」海野の声が響く。

「俺の言ってる通りやれば勝てるって。部長も新しい物をって言ったろう‼️」白熱した話し合いが行われる。


「山野お前はどう思うんだよ?」お茶を運んできた、山野に話が振られる。「えーと、まずは落ち着きましょう。」CMの仕事には興味ない、出世の道具といった川田もすっかり熱を上げている。「僕はやっぱりCellarの形が好きなんで、海野さんの意見によりますけど、川田さんの言う通りやるなら勝ちたい。なので、こんな形はどうですかね。」


山野がある提案をする。ほとんど喧嘩腰で話し合いをする事もあるが、自分のやりたい事をやっているのは楽しかった。そして山野の提案は2人を納得させるのに充分なものだった。


「私は山野くんの案でいきたいです。そんなこと出来るかはわからないので理想論になりそうですが。」海野がいうと「俺もだ。ただどうやる?そんな事が出来たらみんな最初からやってるぜ。」そう反論する2人に山野が問いかけた。


「最初に話した通り、僕と海野さんはCellar (部長)大好きです。マニアって言ってもいい。川田さんは僕らほど知らなかった。分析のためで過去のCMも全部は見ていない位でしたよね?」


「お前らが異常なんだよ。俺くらいの興味が普通。」クスッと笑った山野が続けた。「だから・・・」海野と川田が驚く「お前正気か?そんなん俺が間違えたら終わりじゃねーか。」反論する川田に対して海野は納得したようで「あれ〜自信ないんですか?いつもの俺様川田様はどこに行ったのやら?仕事に自信ないんですか?」と川田を煽る。


「俺が間違えるわけないだろう。その代わりお前らも俺が納得するもの作れよ。」川田は簡単に挑発に乗りコンセプトが決まった。話し合いは会社が終わった後も続きそのまま居酒屋に移行し、更に長時間続いた。


一方で倉科は深雪でグダッとしていた。「やぁねえ、若い・・・くもないけど、独身の女性が1人オシャレを微塵もしないでこんな田舎の小料理屋で1人で飲む金曜日って。」いつもの格好でいつもの場所。違うのはここ最近1人ということだ。「うるさいよ。一応アフター5のお誘いくらいあるのよ。この店が潰れないように来てるの。」


白けた顔して天使がいう。「そんなこと言って、こうちゃんとられても知らないわよ。」倉科の顔が目紛しく変わる。「いや、あの子はそういうのじゃなくて犬みたいな弟とか、なんかそんなその辺りのポジションで。」天使が「んー?」カウンターに肘をついて倉科を覗き込む。

「だってもう、1人暮らしできるくらいになってるし社員寮もあるのよね。何で、出て行けって言わないの?」

「ほらそれはあの、拾ったからには責任を持ってみたいな。でていきたいとも言わないし・・・」

「ふーん。」天使がいやらしくまた覗き込む。


「いや、その、ホント変な意味じゃ無くてよ、ただいまとかお帰りってクセになるよね・・・」少しやっちゃったなーって顔する倉科にチンってグラスを当てる音がして「今日は2人で飲もうか。」天使が言って看板の灯りを落とした。


「えっ、お店は?」みたいに気を使わせたと倉科が気にしていると時刻は既に午前0時をすぎていた。結構飲んでたなって思いながら、改めて天使と乾杯して、(独りが寂しいなんて思ったのいつぶりだろう?)って考えたりした。朝起きるとリビングのソファーの上で寝ており、ブランケットがかけてあった。キッチンに行くと手紙があり、(おかえりなさい。鍋にしじみの味噌汁あります。チームの人達と打ち合わせしてきます。)と書いてあった。


(手紙のお帰りでも嬉しいよねー。味噌汁飲も。)「いつかは出てったりするんだよね。」倉科は一人呟いて、味噌汁を飲んで「はー・・・美味しい。」ため息を1つついた。


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