もやもや
少し小柄な女性がどこにでもあるチェーン店の居酒屋で紹介を始めた。「じゃあ私から、海野美幸です26歳、こんな漢字なんで海の幸とかバカにされることアリです 笑 一応企画の主任やってます。」海野のジョークが入ってこない。
またみゆき?と山野は思いつつ、数ヶ月前より平気な自分にも気付いていた。「じゃあ次は俺だな。川田幸成、川の幸とか言われたことねーけど、言われたら怒ると思う 笑 一応支社で主任やってる。27歳だよろしく。」
海の次は川?なんてどうでもいいこと考えてから「山野浩二です。最近営業所の中途採用で社員になった23歳です。よろしくお願いします。」2人の自己紹介を踏まえて次はジョークの1つも言えるようにしようと思った。
「おい山かよ!海野、こいつ誘ったのってそれが理由じゃ無いよな?」川田が自己紹介と同じ強気な口調で海野を早くも呼び捨てにしつつ迫る。
「あはっ、それも面白いですね。でも違います。まぁ、彼を選んだ理由は・・・秘密です。そんな事より親睦を深めましょうカンパーイ。」
その日は終電間際まで飲んで話した。具体的な話はしなかったけど、あのCMがいいとか自分の好きな分野で話が盛り上がれたのは嬉しかった。
「私はCellarって言うか倉科部長に憧れてて、前々から企画部の間じゃ部長がCellarに関わってるのは、かなり信憑性のある噂だったんだよね。だから結果Cellarも大好きだよ。」海野さんは見るからに可愛らしい童顔で小柄な女性。邪な気持ちはないが胸も大きい。彼女は自分と同じ位のCellarもとい倉科ファン。すっぴんで深雪に行く格好のまりさんを見せてあげたいものだ。
「俺は別に興味は無いよ。今回の事も企画のエースチームに入れるただの出世のチャンスだと思ってるからな。むしろお前らがおかしいんだよ。支社の企画の俺達からすれば奴等は倒すべきライバルだからな。」
川田さんは出世の足がかりで、Cellarに興味はないみたいだ。出世の道具を強調してくるが興味の無い人があんなにも熱く過去のCMを語れるのだろうか?突っ込んだら「てっ敵を知る為の分析だよ。」なんて言っていたがどうだか?
さっきの強気な口調からも感じる通り、川田さんは相当に自信家な印象を受ける。まぁ雰囲気から本当にできる男な感じはするが。一見クールぶっているが中身は熱そうな人だと感じた。
「ただいま~。」12時をまわり、珍しくかなりハイテンションに酔っ払った山野が倉科に抱きついた。「まりさん今日マジで格好良かったよ。さちさんも見惚れたって言ってた。私の憧れだって。」
山野が抱きつくなんて初めての事でちょっとビックリしたが「有り難う」って少し冷たい言い方で腕を外しかわした。(?なんで私モヤモヤしてるんだろう?)
「もう寝るね。浩二も明日仕事なんだから寝なさいよ。」と言って寝室に引っ込んだ。ベッドに入って(さちさんてウチの部の子よね?)「いいじゃない!あの日ボロボロだった浩二が元気に仕事してるだけでしょ。女の子に興味も持って、いい事じゃない!」
勿論寝室には倉科1人である。倉科の悶々とした夜は更けていった。その晩は久々にジャ◯ーズの抱き枕を使った。
翌朝記憶のある山野が少しの二日酔いで頭を抑えながら。抱き枕を抱えた後もあまり眠れなくて不機嫌な倉科に「どうしよう抱きついたりしたからか?」って的外れな事を気にして「昨日はごめんなさい!」「へっ?」なんて会話があったのは後々の笑い話だ。




