小岩井の入社祝い
会社編スタートですね。
知識のないところもありますが、
頑張ってうまくやりたいなと思ってます。
あの飲み会の日から特にトラブルなく時間は過ぎ、山野は正社員になっていた。小岩井が「お祝いしないとねっ」て言っていた。
倉科は社員寮がある事に勿論気付いていたが今の居心地のよさに、それを山野に言わずにいた。山野も勿論知っていたが、それを言わずにいた。(この気持ちは恋ではない。)
と2人は自問自答し、自らを納得させ、そしてとりあえず家の事はお互い何も言わずなあなあに先延ばしした。
ある日のこと、小岩井がニヤニヤしながら企画書を持ってきた。「倉科部長、これに目を通して頂けますか?」そう言って持ってきたのは倉科と小岩井の連名になっている企画書だった。
”cellarの新メンバー募集コンペ”「ちょっと何これ、もう常務の承認印もあるじゃない。しかも今回は営業所も含むってこれ・・」
倉科が驚いた。通常コンペ自体は良くあるが精々支社までだ。下請けにあたる営業所が含まれることはまずなかった。
そしてCellarは確かに発足当時のメンバーがある程度抜けているが、補充をしたことはなかった。「常務も、アイドルとかハマってるし面白いこと好きだからオーディション形式に乗ってくれて 笑 山野君のことはバラしてないから安心して。」
この常務はCellar発足当時からの付き合い。当時は部長で、倉科も頭の上がらない恩師といえた。
「あんたこれ、何で黙ってたの?」
「いやー言って反対されたら困るなーって。」
「するわよ‼︎こんな公私混同みたいなことして・・・」
怒っている倉科に、「まぁまぁ良く見て、審査委員にあんたも入れておいたから、あんたらしく公正に審査すればいいじゃん。私達に憧れる青年に夢を与えるくらいいいでしょ。あんたもチームに新しい感性が欲しいって言ってたし。他にも有能な応募者が来るかもよ。」
うーんと倉科が唸っていると、急に背筋を伸ばした小岩井が、「1社員が部長の名前を使い更に無断で企画を上げて申し訳ありません。必ず会社に取っても部長にとっても、いい結果を出しますのでお願いします。」と、深々と頭を下げた。
コレだから復職の同期はタチが悪い。いや小岩井がタチがわるいだけなのか。しかもわざわざ部長と呼び今までは小声で話していたのに、急に周りに聞こえるようにやりとりをやるところがあざとい。しかしこういう部分は敵わないとわかっているので諦めた。
「じゃあ改めて、常務の所行きましょうか。」そう言って企画書を2人で更に細かく練り常務に報告し、数日後の会社のメールでその、コンペの詳細が本社、支部、そして山野のいる営業所にも送られた。
やるからにはと、残業しコンペ案を煮詰めて遅く帰宅した、倉科に一匹の犬もとい、山野がダッシュで玄関まで来た。「まりさんこれ、コレ!」ブンブン振った尻尾が見えそうなほど興奮してる。
コレとはわざわざプリントアウトした、コンペの募集用紙だ。「あー、美香がやったのよ。あんたの入社祝いみたい。言ってたでしょ。入社祝いあげなきゃって。けどコネでは選ばないからね。お祝いになるかは、あんた次第。」
わざとキツめに言ったがそれでもうん、うんと嬉しそうに頷く山野を見て嬉しくなったのは内緒の話だ。




