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死にたくないから普通になります  作者: 春波流音
プロローグ
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プロローグ

 西暦2200年12月26日。地球に隕石が衝突した。隕石は太平洋の真ん中に衝突。太平洋の真ん中に衝突したとだけあって死傷者は0名だった。

 予め隕石が地球に衝突すると観測機で分かっていた人類は、その報告を聞いて歓喜した。最低でも1万人以上は死傷者が出ると思っていたからだ。

 隕石落下の余韻(津波等二次災害)も当然起こったが、政府が対策をしていたおかげで被害は少なかった。

 こうして全世界を騒がせた大災害(隕石落下)は終わりを迎えた。ように見えた。


 翌年2201年7月1日。悲劇は起こった。

 太平洋で漁業をしていた日本の船【愛鷹丸アイタカマル】が謎の生命体に襲われたのだ。謎の生命体は愛鷹丸の船員を次々と殺害していった。

 船員は無線機を使い、国に救助を求めた。

『な、謎の生き物が、な、仲間をを次々と殺害している......たっ、助け............ツーツーツー......』

『え?もしもし!?もしもし!?』

 その言葉を最後に連絡は途絶えた。

 連絡が途絶えた翌朝、愛鷹丸は残骸となって日本の浜辺に打ち上げられた。

 当初、政府は謎の生命体を信じなかった。信じれる訳がなかった。人は予想外の事が起こるとパニック状態に陥る。きっと愛鷹丸は嵐に巻き込まれ、その際船員はパニックを引き起こしたのだと政府は決めつけた。


 結局政府が謎の生命体を信じたのはそれから2ヶ月後のことだった。その間にも太平洋へ行った船は原因不明の事故で翌朝バラバラになって浜に打ち上げられていたが、それでも政府が信じることはなかった。

 政府が信じるということは国が信じるということになる。

 そうなった場合、国民がパニック状態に陥るのは目に見えていた。だから、政府は国内を混乱させないためにも謎の生命体を信じなかった。信じるわけにはいかなかったのだ。

 愛鷹丸事件から2か月後、ついに政府も謎の生命体を認めなければいけない事態が起きた。

 謎の生命体が北海道に出現し、人類に対して攻撃を始めたのだ。

 北海道はパニックに陥った。それも仕方がないことだった。突然、海から現れた謎の生物が次々と人を殺し始めた、という情報を聞いて冷静さを失わない人間なんて殆んどいないだろう。 

 無論、人類は抵抗した。易々と殺される人なんて殆んどいなかった。国の危機ということで自衛隊も沢山駆けつけた。


 謎の生命体VS日本 の戦いが始まった。


 結果は日本の惨敗だった。謎の生命体には色々な個体がいたが、その中でも特に恐れられたのは【ドラゴン】や【デーモン】ではなく、ゼリー状の生物【スライム】だった。スライムには他の謎の生命体と違い、鉄砲も爆弾も効かなかった。いや、ダメージが与えれなかったと言うべきか。

 いくら鉄砲でスライムの身体を蜂の巣にしても、爆弾で身体を粉々にしても奴等の身体は直ぐに再生し、何事も無かったかのように進撃を始めた。

 人類かれらの心が折れるのに然程さほど時間はかからなかった。結果、人類かれらは北海道を捨てた。

 人類かれらは冷静さを失っていた。北海道を捨てれば助かると思い込んでいた。

 そんなはずがなかった。

 北海道を占拠した謎の生命体は次々と他の地域を襲い始めた。 人類かれらはドンドン追い詰められていった。北海道の戦いの結果を知っていたため抵抗することを考えている人類は、いなかった。


 人類かれらと謎の生命体との大戦【人魔大戦じんまたいせん】が始まってから10年。追い詰められ、追い詰められまくった人類かれらが住める場所は首都【東京】だけとなっていた。10年前まで日本にいた約5億人の人類は、首都【東京】に追い詰められたときには10万人弱しかいなかった。皆、殺されたのだ。

 スカイツリーから回りを見渡せば四方八方に謎の生命体が居るという状況。人間の数倍強い身体能力を持っている謎の生命体。そして、攻撃の効かないスライムの存在は人類かれらの希望を粉々に打ち砕き、命すらをも、諦めさせた。


 そんな中、1人の少年が立ち上がった。彼の名は金剛正幸こんごうまさゆき、8歳であった。

 彼は【人魔大戦】が始まってから生まれた子供だった。

 正幸は1人、小型の拳銃を持ち、単体で行動をしてたスライムに立ち向かった。正幸は子供とは思えないほど卓越した拳銃のスキルを見せ、スライムを蜂の巣にしていった。

 しかし、相手はスライム。拳銃など効かなかった。正幸が謎の生命体と戦い始めて10分、早くも拳銃の弾が無くなった。蜂の巣になった身体の再生を終えたスライムは、ゆっくりと獲物まさゆきに近づいた。

 誰が見ても絶体絶命のピンチだった。だが、正幸は諦めなかった。正幸は両手を天に挙げた。

 日本はアニメ王国だ。そのため正幸は幼い頃から様々なアニメを見てきた。彼は本当に魔法が使えると信じていた。

 正幸はスライムに向かって手を伸ばし、詠唱し始めた。徐々に近づいてくるスライム。

 彼の戦いを見ていた者は皆、正幸の命を諦めた。魔法など使えるはずがない。

 スライムまでの距離は残り1メートル。スライムは物凄いスピードで正幸に近づいてく。ついにスライムと正幸の距離が20㎝を切った。

 と、その瞬間正幸の詠唱は完成した。

 正幸の掌から赤い光が放たれ、スライムの身体を貫いた。次の瞬間、スライムは身体を焦がしながら絶命した。再生は無かった。

 人類の初勝利だった。

 『スライムは不死身ではない』この事実が人類に再び希望を抱かせた。

 謎の生命体を倒した正幸は神の子供【神子みこ】と呼ばれるようになった。


 その後、魔法を使える人類が東京でポツポツと出現し始めた。魔法を使える人類は【神子】と崇められ、次々と戦場に駆り出された。

 結果、神子の活躍により人類は段々と勝利を重ね、少しずつであるが土地を取り戻すことに成功した。



 2248年。

 科学者N・クローリースが神子についての研究を開始。翌年2149年には神子が魔素まそと呼ばれる物質を宿していることが分かった。また、【人魔大戦】後に生まれた子は20%の確率で神子であることも発覚した。

 魔素は隕石衝突後から地球を覆い始めた気体状の物質で魔素は魔素でなければ壊せないという厄介な性質を持っていた。

 その後の調べにより、謎の生命体は身体の大半が魔素で出来ていること、スライムの驚異の再生力は魔素の力だということが分かった。

 魔素の存在を知った科学者達は、何故なぜ正幸まさゆき神子が、謎の生命体の中でも驚異的な再生能力を持つスライムを倒すことが出来るのか、その理由を知った。

 神子の体内には魔素が含まれている。神子は、その魔素を魔法として直接相手にぶつけることによりスライムが持っている魔素を破壊することができ、魔素が破壊されたスライムは再生が出来なくなる。そのため神子はスライムを倒すことが出来たのだ。

 科学者クローリースは魔素で出来ている生物、謎の生命体を【魔物まもの】と呼ぶことにした。



 2249年。

 神子1人が使える魔法の系統は基本1種類だということが判明。ごく稀に2種類使うことが出来る【デュアル】がいることも分かったが、理由までは分からなかった。



 2257年12月。

 魔物から取り戻した地域【名古屋】にて謎の鉱石が発掘された。



 2261年2月。

 クローリースの研究により謎の鉱石には多大な魔素が含まれていることが判明。この鉱物は【魔石ませき】と名付けられた。



 2269年。

 発明家リョクシオスは魔石から剣を作ることに成功。

 魔石から作られた剣は【魔剣まけん】と名づけられた。

 魔剣は多大な魔素を含めており、神子じゃなくても魔物を倒すことが出来た。そのため、政府は発明家リョクシオスに魔剣の大量生産を命令。大量に作られた魔剣は首都に住む全ての人々に配布された。

 また、質の良い魔剣は高値で取引された。



 2273年。

 発明家リョクシオスが【ステータスカード】と【魔物図鑑】を発明。

 ステータスカードとは使用者もちぬしの能力を数字に変換して表示するというものだった。

 魔物図鑑は現在までに確認されている魔物の強さが一目で分かるようになっていて、作った目的は、戦闘の経験が少ない素人神子を無駄死にさせないためだった。

 すぐさまステータスカードと魔物図鑑は日本に居る全人類に配布された。また、新しく子供が生まれた場合は、その子供にステータスカードと魔物図鑑を渡すことが義務付けられた。

 その年から死傷者が激減した。



 2274年。

 【始まりの神子】正幸が、当時最強と呼ばれていた神子レインと共に【東京】にギルドを設立。

 ギルドでは倒した魔物を換金でき、様々な人の依頼クエストを受け、それらをこなすと多額な報酬が貰えるといった仕組みを取り入れた。

 正幸とレインがギルドを設立した目的は魔物を倒すことを面倒だと思い始めた人々の士気を揚げることだった。 

 ギルドは腕利きの神子二人が作り上げたということで翌年には多大な依頼が押し寄せた。また、今までは倒しても何の得も無かった魔物が金となると聞いて様々な人間が魔物を大量に狩ってきて換金していった。そのうち魔物を狩ることを本職とした【狩人ハンター】と呼ばれる人々も現れた。

 正幸とレインの目的通り人々の士気は揚がり、最近は停滞していた失地回復運動が動き始めた。

 


 2280年。

 神子の有能性を知った政府は首都【東京】に【剣魔育成学校けんまいくせいがっこう】を創立。

 4年制で学費は0円、寮制度、7歳以上の子供は強制入学とのことだった。

 神子と普通の人間は中々見分けることは出来ない。また、神子かどうかは神子自身でも気づかない場合がある。自分が神子だと気付かず生涯を平凡に過ごしていくかもしれない。

 限りある資源みこを無駄にしたくないと考えた政府は神子を効率良く発見するために全ての子供を集めることにしたのだった。

 授業は6時間で神子の場合、午前3時間は剣術、午後3時間は魔法。神子以外は6時間全て剣術という過酷すぎる授業だった。

 だが、その成果が合ってか神子はメキメキと才能を伸ばしていった。また、神子以外の子供も魔法こそは使えなかったが、剣術は相当なものに仕上がっていた。

 剣魔育成学校を卒業した生徒は各地で素晴らしい功績を上げていった。



 2292年。

 科学者クローリース、発明家リョクシオスが共に死去。

 彼らの葬式には2万人近くの人々が駆けつけたという。


 

 2331年。

 政府は2000名の神子及び狩人ハンターを遠征隊として太平洋に派遣。目的は隕石の欠片を手に入れることだった。



 2332年。

 遠征隊が隕石の欠片を入手して帰還。しかし、生きて帰ってこれた人数は12名しかいなかった。


 

 2349年。

 隕石の正体は圧縮された魔素だったことが判明、翌年2251年には魔物は魔素が高濃度のところで生まれることが判明された。



 2402年。

 日本海に巨大な鮫型の魔物が出現。直ちにギルドは1000もの神子及び狩人ハンターを送ったが誰1人生きて帰ってはこれなかった。多数もの戦力を失った国家は、この魔物を皮肉を込めて【鮫魔王メガドロン】と名付られた。



 2415年。

 魔物図鑑を更新した新魔物図鑑を作成。

 また、遺伝子的に神子と神子の子供は絶対に神子だということが判明された。

 


 そして、時は経って西暦2477年。

 首都【東京】周辺の小さな村に神子が生まれた。

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