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俺の人生今日からニューゲーム  作者: やわか
俺の人生の新たなるステージへ
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    残党狩り Lv3

 「ごめんねー。船までは私たちが送ってくからさ」


 と言ったテトラたちと共に空を飛びながら先へ行った船を目指す。

 竜人種ドラゴニアの操る風の力で飛行の負担を減らしてくれいるのだ。

 アーロン勢力は後からやってきた竜人たちに囲まれて暴れ出さないように監視されている。


 「テトラが来てくれて助かったよ。あのままだとどうなってたか」


 隣にやってきた彼女に感謝の言葉を述べる。


 「ううん。アーロンたちを事前に止められなかった私たちが悪いんだし」


 アーロンも血の気の多いところがあるからさ、と少し呆れ気味にそんなことを言った。

 彼女の方が年下だと思うのだが、まるで姉か母親のようだ。

 しっかり者の少女は続ける。


 「後でマテオたちがちゃんと叱りつけておくと思うからさ。これにりないでまた来てよね」

 「そうさせてもらうよ」


 迷いのない俺の返答に少し意外そうな表情を見せた。


 「竜人種わたしたちのこと嫌いになっちゃったんじゃない?」

 「まさか。テトラのことも、マテオさんやアーロンさんのことも……竜人種ドラゴニアのことも。嫌いになるほど多くを知らないし」

 「?」

 「そう長くはない間だけど、冒険をしてきてさ。たくさんの人とか違う種族の人にも会って、思ったんだよ」


 長いツインテールを風になびかせながらテトラは俺の話に耳を傾けている。


 「世界には色んな人がいる。今まで生活してきた場所も環境も違う。受け継がれてきた文化も伝統も違う。だったら、価値観や考え方が違うのは当然の事だろ?」


 『こっち』に来てから出会ってきたたくさんの人のことを思い出しながら言葉をゆっくりと紡ぎ出す。

 まとまりもないままに並べられる台詞せりふを彼女は真剣に聞いてくれている。


 「だからさ、相手のことをよく知る前からその人に対する勝手な評価を下してしまうのは勿体もったい無いと思うんだ。何もそんなに焦って結論を出す必要なんかないわけだし、しばらく保留にしておいたって構わないんじゃないかって」

 「お兄さんって気長なんだね」

 「そういう訳でもないけど。ここでの経験がそう思わせてくれてるんだ」


 知らない場所で、いくつかの事件に巻き込まれて、襲われたことも捕まったこともある。でも、それと同じくらい、いや、それ以上に、多くに人に助けられてきた。世話になってきた。

 きっとそのおかげだ。

 俺の人生も、そんなに捨てたもんじゃない、なんて思えてるのは。


 「いいなあ。私もそういう経験がしてみたいよ」


 どこか遠くを見つめて、竜人の少女はそんなことをつぶやいた。


 「テトラは、冒険がしたいのか?」

 「そうだね。今の時代じゃ外の国には簡単に行けないし」


 彼女は付け足すように、そうでなくても私には自由があまりないから、と漏らした。

 竜人種にも、その少女にも簡単にはうかがい知れない事情があるらしい。


 「お兄さんがうらやましいよ」

 「そうだな。俺は自由だった……ずっと」


 気付いていないだけで、目の前には初めから無数の選択肢が転がされていたんだ。


 「それに、最高の仲間にも出会うことが出来た。本当に運がよかったんだ」



 「なに?私たちの話をしてるのっ?」



 頭上から割り込んできたのはあかいの瞳の女の子だった。


 「うわっ、コトリ!」

 「『最高の仲間』なんて」


 改めて他人の口から聞かされるとかなり恥ずかしいことを言っていたようだ。


 「ソウタったら私たちには全然そんなこと言わないくせにー」

 「そ、そんなことないだろ?」

 「そんなことあるってっっ」

 「あんまりくっつくな!って腕を掴むな!!」


 自由な幼馴染を追ってやってきたのだろう、上空からカエデの声も続いた。


 「こ、コトリ……っ。ダメだよ、あんまり…離れちゃ」


 コトリを連れ戻そうとゆっくり下降してきた栗色の少女は、


 「きゃ……っ?」


 空中でバランスを崩した。


 「だだ、大丈夫か?……カエデ」

 「う、うん。ごめんね、ソウタ」

 「とりあえず、離れてくれっ」


 二人の荷重がかかって俺まで重心を見失いかけている。


 「こらこら、ダメだよ。そんなにかたまられたら風の援護ができないよ」

 「あっテトラちゃんっ」

 「ほら、コトリ、戻るよ」

 「えーいいじゃん、もうちょっとっ」

 「良いから離れろよ!」


 結局、何だかんだと賑やかにやりながら、少しして船に追い付いた。


 「おう、お前ら!……無事なのか!?」


 空からやってきた俺たちに船頭せんどうは戸惑いの声を上げる。

 さっきまで戦っていた相手に囲まれているのだから、それも仕方のないことではあるか。

 見方によっては俺たちが捕虜ほりょに取られているようにも見えなくはない。


 「はい、大丈夫です!彼らの仲間が来て、止めてくれたんですよ」


 状況を上手く呑み込めていない様子の彼に、テトラに手助けされながらなんとなく事情を説明すると、


 「まあいい。とにかく船に乗れ。本当に疲れたろう」

 「ありがとうございます」


 まだ、いろいろ納得はしてなさそうだが、俺たちが無事なことだけは伝わったらしい。


 「それじゃ、またねー」


 こちらが船に戻ったのを確認してテトラは別れを告げる。


 「うんっ。ここまでありがとーっ」

 「ありがとう、ございました……っ」

 「また来るよ!」


 テトラが手を振る中、竜人種たちは徐々にその場を後にしていった。

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