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俺の人生今日からニューゲーム  作者: やわか
俺の人生はベリーハードモード
33/120

    不具合についてのお詫びです Lv2

 起き上がって、声のした方を見ると、通路。そしてそこにはルーカスがいた。彼一人ではない。四人ほどの土精種ドワーフとともに、大きな機械を引き連れていた。というか乗っていた。砲身とタイヤを持ったそれはまるで戦車のように見えた。廊下が無駄に広かったのはあれが通るためだったのか。


 「そっちこそ今まで何してたんだよ?」

 「悪かったと思ってる。『これ』の用意に時間がかかったんだ。俺たちが普通に戦ったって足手まといにしかならないことは、悔しいがわかってるからな」

 「で、それは何なんだよ」


 迫ってくる雑魚どもを斬りながら尋ねる。


 「これが俺たちの秘密兵器、投石砲バリスタだ。しばらく使ってなかったから少し大変だった」

 「少しは役に立ってくれよ?」

 「わかっているさ」


 ルーカスの乗る稼働兵器は屋台や小さなゴーレムを引きつぶしながら広場の外周を旋回し始める。そして、狙いを定めて砲を放つ。


 バガンッ!


 しかしその攻撃は空中の石片に阻まれ本体までは届かない。破壊された岩石の防御も、新たに追加される。


 『カエデ!一瞬でいい、あの防壁を破れないか?』

 『や、やってみるっ』


 カエデの返事を受け、俺はルーカスに声を飛ばす。


 「ルーカス!岩の防御に穴が開いたらそこを狙え!」

 「人間が命令するなっ!」


 言いながらも、カエデが狙いを定めている部分に同じく照準を合わせる。

 俺はその間にカエデやエミリアに迫るゴーレムを討伐する。


 「爆裂射撃ダイナマイトショットっ!」


 放たれた矢が岩石の一つに着弾し、爆発が雲の一部を消し飛ばす。そうしてできた穴に向かって投石砲が放たれる。

 今度こそ砲弾は頭部に直撃し、その巨体を大きく揺らがす。壁にぶつかったゴーレムは体勢を立て直すと、岩の雲を補充しながらルーカスをその視線に捕捉する。

 脅威となる機械につかみかかろうと両の手を伸ばす。その手を急発進で逃れた戦車を降り注ぐ岩石の雨が襲う。それをコトリとカエデが爆撃で打ち落とす。

 広場の壁から伸びるいくつかの通路から土精種たちが爆弾を括り付けた矢を放っている。

 中遠距離攻撃の二人をルーカスの支援と降り注ぐ岩石の対応に回し、近接担当の俺とルビィさんが小型ゴーレムからエミリアを守るために後方へ下がる。


 「エミリア、まだダメか?」


 あまり急かすのも良くないかと思ったが、俺らとしてもそろそろ限界だ。


 「すみません、あと少し、時間をください……っ」


 冷や汗を流しながらエミリアは答える。首から下がるペンダントが淡く光を放っている。


 「わかった、がんばってくれ」


 言って、エミリアを襲おうとしている雑魚敵を斬り捨てる。


 「連続斬撃シバイタルッ!」


 エミリアの護衛をルビィさんに任せて、周りのチビゴーレムを倒しながら巨大ゴーレムに近づく。そして最後の十連撃目を親玉の足に刻み付ける。結構痛かったらしく、思惑通りこちらを向かせることに成功する。小さなゴーレムを倒しながら距離を取る。目が光る。跳んで横に躱すが、余波であおられ地面を転がる。


 「ソウタッ!?」

 「大丈夫だ!」


 起き上がりながら答える。続いて岩が降り注ぐ。多少ダメージを受けながらも走って近寄りながら足を斬りつけ反対側に回り込む。続けて追撃をかけようとするが、ゴーレムに囲まれている。


 「一刀両断!」


 まとめて切り捨てる。……つもりが思った以上にダメージが通らない。MP切れで魔法が発動していなかったのだ。そこに巨人の拳が迫る。

 わりぃ、まずっちまった。

 と思ったのだが、目の前で拳が止まっている。周りのゴーレムも同様だ。


 「よかった、間に合って」


 声の方を見るとエミリアが肩で息をしている。やってくれたのか、と安心したのもつかの間、眼前にコトリが現れる。


 「火炎爆撃フレイムボム!」


 その攻撃は俺と自らをも巻き込みながらゴーレムを一掃する。どうしたんだ。そう尋ねる間もなく、彼女は俺に触れると「空間移動っ」と唱える。次に目に入ったのは地面を撃つ拳、巻き上がる砂埃。


 「コトリっ」


 彼女の姿を探すと、近くで転がっているのが見えた。


 「大丈夫だよ、一応避けたから」


 すぐに起き上がって笑顔を見せる。無茶ばっかりしあがって。

 俺は少し息をついてからMP回復薬を口にしながらエミリアに尋ねる。


 「助かったよ。それにしても、どうして?」

 「あれを操っていたロウヒ様は正気を取り戻してくださったのですが、巨大ゴーレムもすでに意思を持った魔物として存在しているため、あれを倒さない限りは動き続けるようです。すみません、想定しておくべきでしたっ」

 「いや、いい。それよりお前はもう逃げろ!」


 カエデや土精種たちの爆撃で岩の雲は薄くなっていく。ロウヒの加護がなくなったためか、そこから保管される様子はない。


 「そうはいきません。私も戦わせてもらいます」


 毅然きぜんと返して、両手を地面につく。その足元がクレーターのようにへこんだかと思うと巨大な土の腕がせりあがる。

 次の瞬間には、近くにうごめいていた小さな岩人形を薙ぎ払って一掃していた。


 「そんなことができたなんてな」

 「これでも、土精種の長ですので」

 「なら、その腕で俺を放り投げてくれ!」

 「私も一緒にお願いっ」

 「わかりました。乗ってください!」


 俺とコトリを巨大な腕に乗せて、宙へと放り投げる。

 ゴーレムの足元ではルビィさんが魔法をぶつけ、土精種たちも弓矢で注意を引いてくれている。

 エミリアの創り出した腕は俺たちを投擲した後、勢いをそのままにゴーレムを殴りつけていた。

 空中で勢いが止まってきたあたりでコトリが俺の体に触れる。


 「空間移動!」


 気付けば俺はゴーレムの頭上。コトリはと言えば、空中を旋回する岩石を足掛かりにしながらうまいこと上っている。


 「二倍射撃ダブルシュートっ」


 ドカンッ!

 薄くなった防御の隙を縫ってカエデやルーカスが攻撃を与える。呻くすきすら与えず、コトリが首筋に魔法を撃ちこむ。


 「落雷魔法サンダー!」


 そして俺の攻撃。


 「一刀両断っ!」


 重力を味方に、光の長剣で赤く光る独眼を貫く。

 ぎちぎちと動きを止め、いくつかのアイテムをばらまきながら光の粒と散る。周りにいた取り巻きのゴーレムも魔法粒子へと分解されていった。

 落下しながら空中でコトリを捕まえて抱えた状態で地面を転がる。


 「うわっ、ソウタ、ごめんね大丈夫?」

 「あ、ああ。落ちるのには、慣れてるからな」


 痛みを堪えながら苦笑し、立ち上がる。

 光に包まれながらゆっくりと地面に降下するアイテムの中心に他と比べて大きな光の球があった。包まれているのは石とは違ったシルエットのものだ。それはまるで人のような……。



 「おじい、さま……?」



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