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俺の人生今日からニューゲーム  作者: やわか
俺の人生はベリーハードモード
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二章 想定外の動作が発生しました Lv1

 組合ギルド支部での一次転職を終えた俺たちは国立中央図書館に来ていた。王都で一番の蔵書数を誇る施設らしい。


 「うわー、おっきいねー」


 天井を見上げながら、コトリが声を上げる。

 俺たちの頭上はちょうど三階まで吹き抜けになっていて、どの階にもたくさんの本棚が整然と並んでいるのが見える。

 目的の本を見つけるために、入口周辺に設置されていた案内板を参考に『魔法学書』のコーナーに進む。ルビィさんも図書館には一緒に来ていたのだが、自分の調べ物のために一時的に別行動を取ることになった。


 「あ、ソウタ、この本なんていいんじゃない?」


 彼女が取り出した本には『一から始める魔法学①』とタイトルが付けられていた。


 「ああ、そうだな」


 どの本がいいかなんてわからないので、適当な答えを返して置く。


 「じゃあ、こっちで読もうか」

 「あ、ああ」


 言いながらコトリが俺の手を取るので、なんだかドギマギしてしまった。

 手を引かれながら、テーブルや椅子が並べられた読書スペースで適当な椅子に腰を下ろす。

 コトリは本のページを開くと、目次をもとに、今知りたい情報のある場所を探す。

 と言っても、その情報は本の第一章に記されているらしいが。開いたページには『第一章 魔法粒子』と銘打たれている。

 書かれている内容を読んでいく。


 『魔法について学ぶ前に、この世界の基本となるもの『魔法粒子』についての話をしよう。魔法粒子とは、物質を構成する最小単位であり……』


 そこまで読んで、俺は本から顔を上げる。


 「どうしたのソウタ?」


 怪訝そうな顔で尋ねるコトリだが、原因はお前だ。

 椅子を近付けて、ぴたりと俺の横に座って俺の読む本をのぞき込む彼女だが、そんなに近寄られては集中できたもんじゃない。


 「コトリ、もう少し、離れてくれないか」

 「え、でも、一緒に読んだ方がいいじゃない。ソウタが疑問に思った事とかを補足できるかもしれないし」


 俺の心情を知ってか知らずか、あっけらかんと答えるコトリ。抵抗は無駄だと悟った俺は仕方なく読書に戻る。

 えっと、どこまで読んだかな。


 「物質を構成する最小単位であり、からだよ」

 「ああ、そうだった。ありがとう、コトリ」


 『魔法粒子とは、物質を構成する最小単位であり、物質を構成する魔力粒子は魔力中核コアの持つ魔法的エネルギーによって結合している。魔力中核の強さはそのものによって異なる。』


 そこまで読んだタイミングで、ちょうどコトリが補足を挟んできた。


 「書いてある通り、全ての物質は魔法粒子によって構成されているの。今座っている椅子も、その本も、ソウタ自身もね」


 物質は元素で構成されているものだと思っていたのだが。


 「私は元素とかはよく分からないけど、多分、その元素も魔力粒子でできてるんじゃないかな」

 「ふうん」

 「それで、物質を構成する魔法粒子は魔力中核、つまり核の力で結合しているって書いてあるけど、核の力が弱い物質は分解されやすくなるの。生物の中でもその力が弱いものが第三種生物って呼ばれるんだよ」


 第三種生物。確かこの街に来る途中でもそんな単語を聞いた気がする。パーリスを出て一日目、ワイルドウルフの説明を聞いていた時だったか。


 「分解が速いものが第三種、遅いものの中で言葉を話せないのが二種で、話せるのが一種だったっけ」

 「私たちみたいなのは比較的、核の持つ魔法エネルギーが大きいから死んだ後も長い間体が残るの。主に核になっている骨なんかは100年くらいは残るんだって」


 死んだ後に残った骨なんかがお墓に埋められるらしい。

 そんなこんなで俺たちが読書に集中していると、ちょうど読み終わったあたりで唐突に背後から声が掛けられた。

 


 「どう?欲しい情報は見つかったかしら」



 俺は驚いて「うわっ」と声を上げてしまう。危うく椅子ごと転ぶところだった。隣にいたコトリは平然としているが。というかむしろ俺の態度にきょとんとしているようにも思えた。


 「ダメだよソウタくん。図書館では静かにしないと」

 「いきなり現れないで下さいよ」


 湧いて出た知人、ルビィさんに対して不平を述べると、


 「いやあ、ごめんごめん。あまりに仲良さげに本を読んでいるからさ。声かけ辛くって」


 結局かけてるけどな。


 「コトリは気付いてたのか、ルビィさんに?」

 「30分くらい前から後ろの本棚に隠れてたよ」


 ……どんだけ前からいるんだよ。


 「コトリちゃん、鋭いね」

 「えへへ、昔から勘はいい方なんですよ」

 「あ、そうそう。それでさ、そろそろご飯行かない?時間も時間だしさ」


 言われて、左腕の時計を見るともう一時を回っていた。


 「そうですね」


 立ち上がった俺はあることに気付く。カエデがいない。いや、いつから居ないのかはわからないが。


 「ああ、カエデならあそこだよ」


 コトリが指をさした先、少し離れたテーブルで一人本を読んでいた。全く気付いてなかった。すごい集中力だな。


 「いつから居なかった?」

 「私たちがここで本を読み始めたあたりかな」


 だいぶ序盤だった……。


 「とにかく、呼んでこようか」

 「ああ」


 カエデに声をかけて、俺たちは図書館の出口へ向かう。その途中、どこからか悲鳴が聞こえてきた。どうやらこの建物の外のようだ。


 「何かあったみたいね」


 顔を見合わせ、ルビィさんが呟く。


 「行ってみよう!」


 指揮をとるコトリに従って、俺たちは図書館の外へと走り出た。

 そこには、一瞬理解に困る光景があった。


 「……なんだ、これ……?」

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