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俺の人生今日からニューゲーム  作者: やわか
俺の人生今日からニューゲーム
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    インフィニットポップ Lv2

 突如現れた冒険家に、


 「やっと帰ってきたみたい。偽情報に踊らされてた冒険家が」


 呆れたような口調のルビィさん。

 対して、突然現れた冒険家は抗議のために口を開く。


 「踊らされてはないぞ?偽情報なのがわかってても確証がなければ無視するわけには行かないんだよ」

 「つまり、偽の情報に踊らされてたってことでしょ」


 ルビィさんの切り返しに彼は言葉を詰まらせる。


 「そんなことよりちゃんと働いてよね。こっちは今まで頑張ってたんだから」

 「わかってるよ」


 不満そうに述べてから、再び周りの盗賊たちを相手し始める。


 「ていうかいつの間に出てきたんですか、あの人?」

 「たぶん『帰還の書』を使ったんじゃないかな。王都はこれまでの村と違って、まだ盗賊の被害に遭っていなかったからね」


 言っている間にも数人の冒険家たちがぽつぽつと虚空から現れる。


 「これで、少しは楽に……」

 「どうやら逆効果みたい」


 俺の台詞を遮った彼女の真意はすぐにわかった。

 冒険家たちが続々と帰還し始めたことで、王城の陥落の目が薄いと見たらしい盗賊たちは、目標を変え民家を襲うことにしたらしい。王城の付近から離脱する者が出てきた。今までは向こうの目的が定まっていた分、防衛もしやすかったが、こう散り散りになられては厄介だ。それに、民間に被害が出るような事態は避けたい。

 脳裏にはパーリスを盗賊が襲った時のことが蘇る。


 「ルビィさん、俺は奴らを追います」


 そう言うとルビィさんは微笑んで、


 「こっちは任せといて。王城に来る奴らはちゃんとやっつけるからさ」

 「ありがとうございます!」


 俺なんかに何ができるのかはわからない。それでも、黙ってみているわけにもいかない。


 「ま、待って、ソウタ……っ」

 「私たちを置いてかないでよっ!」


 悪党の散った方向の一つの路地に駆けだした俺を追って、二人の少女が走ってきた。


 「ごめん、また俺のわがままに付き合わせちまって」

 「何言ってるのソウタ。私たち、仲間でしょ?」


 まっすぐこちらを見据えて笑うコトリに、なんだか気恥ずかしくなって目を逸らしながら、俺は苦笑いを浮かべる。


 「ああ、そうだな」


  *


 盗賊を追いかけた先で、俺たちは十数人の悪党たちと対峙していた。路地裏に逃げていった盗賊たちは、追いかけてきたのが俺たちなのを見て、こいつらになら勝てると思ったのだろう。逃げる様子もなく民家を襲い続けるか、一部はこちらに戦意を向けている。

 コトリはいち早く駆けだして先頭にでる。俺が止める間もなく、彼女は宙を舞い、足技で次々と敵の意識を奪っていく。

 まったく、どんな運動神経してんだか。


 「強化斬撃!」


 倒れた盗賊にとどめを刺そうとする俺に向かって後衛にいた黒ずくめから、攻撃が飛んでくる。それをコトリやカエデが打ち落としてくれている間に、数人を光の粒に還す。気を失ったすべての相手にとどめを刺す前に目を覚まして起き上がり始める。そればかりか、俺たちが入ってきた道から、また新たに数人の盗賊がやってきた。

 彼らは俺たちを脅威と感じたから、というよりは、俺たちが鬱陶うっとうしいから消してしまおう、とこちらに向かってくる。


 「とうっ」


 それをいち早く察知したコトリが、今度は俺たちの後方に走って行き、カエデを飛び越え、空中で体を捻じり回し蹴りを繰り出す。それによって細い路地をやってきた相手の先手を取る。


 ――そもそも、盗賊の目的は何なんだろう?


 コトリのスピンキックを食らった盗賊にカエデが魔法を放つ。追い打ちをかけるようにコトリが炎の球を至近距離でぶつけ、相手を拠点に送り返す。


 ――これまでの村では組合の倉庫を襲撃していたにも関わらず、今回は王城を標的とした。それが無理だと判断した彼らは街を襲うことにした。目的が定まっていなさすぎる。


 今度は前方から俺に向かって女盗賊が火の玉を放ってくる。かわすと後ろのコトリやカエデに危険が及ぶのでフライパンで受け止め、そのまま強化斬撃を放つ。カエデの撃った小石が盗賊にヒットし、続けて俺がもう一撃を与え相手を倒す。


 ――これまでの村の襲撃が王城を襲うための準備だったとしたら?パーリスを襲った盗賊は言っていた。『目的はもう達成しているんだ』と。その『目的』が組合の倉庫から『何か』を盗むことだったなら。


 「……そうか、わかったぞ!」

 「え、何が?」


 盗賊の突進をひらりと避けながらコトリが尋ねる。


 「盗賊が無限湧きしている方法だよっ」


 俺がそう答えたそのとき、


 「聞かせてくれるかな、その方法ってやつを」


 路地裏に残っていた盗賊を一掃して、赤い長髪の女性が現れた。


 「ルビィさんっ?」

 「大丈夫、向こうならさっきの冒険家と近衛部隊に任せてきたから」


 それで、と再度問いかける。


 「盗賊がどんどん出てくるのはどういうわけなの?」


 ここにいた盗賊は彼女がすべて倒してくれたし、ゆっくりと話ができるだろう。俺は自分の推論を述べ始める。


 「『帰還の書』ですよ」

 「『帰還の書』?」

 「はい。恐らく盗賊たちは倒されて自分たちの拠点に戻った後、HPやMPを回復してから『帰還の書』で再びこの街に瞬間移動してきているんです。だから見張りの人たちも奴らが入ってきたことに気が付かなかった。そもそも門を通っていなかったんだから」

 「なるほどね。今までの村で盗賊が民家ではなくて組合の倉庫を襲って魔法薬品ポーションや『帰還の書』を盗っていったのはそういうことだった、ってわけ」

 「そして、相手が『帰還の書』を使ってこの村にやってきているのだとしたら拠点のある場所をある程度絞り込むことができるんじゃないですか?」

 「そっか!『帰還の書』は使った場所から一番近い村に転移するから、盗賊の拠点はその範囲内にあるってことだねっ」


 唐突にコトリが口を挟む。他人ひとの手柄を取るなよ。


 「……そういうことだ。その範囲内で拠点に使えそうな場所を洗えばきっと見つかる。後はそこを一網打尽にするだけだ」

 「わかったわ。組合に連絡して盗賊の拠点を探してもらう。見つかるまで、もう少しだけ頑張って」


 俺たちはそろってうなずいた。

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