雪の花
小さい頃から自分が嫌いだった。
卑屈で無関心で冷徹で。
小さな身長がそれに更に追い討ちをかける。
「俺は小雪が好きだよ。」
そう言う彼はまぶしくて、真っ直ぐに見れない。
太陽の光を一身に受け育った彼は、まるでひまわりのようだった。
伊沢 小雪。
身長146cm。高一。
性格は卑屈で冷徹。周りに興味がなく、友達は入学して半年経つが未だ0人。
以上が簡単な私のプロフィール。
どう見ても花の女子高生とは思えない。
同じ制服の人と会いたくなく毎朝早めの電車に乗って学校に行く。
慣れてきた道。見慣れた風景。
今日もいつもと同じ変わらない1日になるはずだった。
学校に着いても鍵は開いてない。
開くまでの間、花壇に座って英単語張を見てると…
「うわ!!どうしよ!!まじやべぇ!!」
三年の入り口前。
一人で騒ぐ人がいた。
髪は金髪でてっぺんが黒くなってる。
「俺学校着くの早くね!?
チョー久しぶりに学校来たらまだ学校開いてないって、俺マジ奇跡!!」
早速の第一印象と見た目で判断させてもらって悪いが、この人…頭悪そう…。
「ほいっ!」
そうこうして渡されたのは一個のキャンディ。コンビニにあるような棒付きのヤツ。
ひまわりのように黄色くて明るいラベルがついていた。
「ん?いらねーの?」
「いや、あ、ありがとう…ございます。」
「おう。今日は俺が早起きした記念だからなっ!!」
うざっ。
貰っといて悪いけど、こういうタイプは苦手だ…。
男の話を聞きながら単語張に目をやるが、なかなか頭に入らない。
「お前一年だろ。」
「…はい。」
「もしかして、電車通?」
「…はい。」
「あ、じゃあ俺といっしょじゃん!!」
「…そうですね。」
「いつもこの時間?」
「…はい。」
「なら、明日から俺と学校行こうぜ!!」
「…はい…って、はあ!?」
え、なに??
「っしゃー!!決まりっ!!」
「ちょ…ま…て。」
え、なに、私明日からこの人と学校いかなきゃならないの…?
「あ、ちなみに言っとくが逃げんなよ。」
ギロリとにらむ焦げ茶の瞳。
その目はまるで獲物を見据える虎みたいだった。
「うっ…はい。」
もうやだ。帰りたい…。
「ほい、俺のアドと番号。登録しとけよ。」
黄色いキャンディの包み紙の裏。
意外にも綺麗な文字で書いてあった。
「浅倉…陽太。」
「んじゃ、鍵開いたっぽいし。
俺行くわ。
また明日な…小雪。」
え…。
男は…浅倉先輩は、そう言って走り去っていった。
手には無理やり持たされた先輩の番号。
私はただそれを握りしめて先輩のあとを目で追うだけだった。
「名前…なんで…。」
胸には疑問が残るだけ。
それでも、その感覚は懐かしいかんじがした。
「…ちょっとだけ、付き合ってやるか。」
足元に置きっぱなしの鞄を持ち上げ学校の中に入る。
もらった包み紙を綺麗に畳みながら…。