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Chapter04

目の前の兎型モンスターにダガーを構える。


無邪気に毛繕いしている姿はかわいいが


これも金の為だ、許せ。


獲物を振り落とすと兎が驚いた様な顔をした後


攻撃を避ける、外したか。


怒った様な顔をした兎が此方に向かって体当たりをしてくる。


ぐっ、軽く衝撃を受けたが当然痛みは無い。


HPバーを見ると殆ど減っていない。


当たり前か、最序盤の敵の一撃でそんなに


ダメージを受ける様では話にならない。


兎が体当たりをして、此方が斬りつけて


を繰り返した所で兎が倒れる。


すうっとその姿が消えたと思ったらそこから虹色の人参が現れた。


【兎の夢】これが例のドロップアイテムか…


情報を見てみるとアイテム単品としての効果は無い様だ。


単純に売るかクエスト専用アイテムだな。


ドロップ率が低いという話だったがそうでもないのか


自分のリアルラックを良いのか。


考えても仕方無いので次の獲物を探す事にした。


一時間後。


見た目がリアルで臨場感があるとはいえ


まだジョブにも付いていない状態。


プレイヤーに支給されているのは


皆同じダガーと種族別の初期衣服。


やれる事は単純な殴り合いだけ。


普通のRPGと違ってMMOには宿屋で一泊して全回復という


概念が無くHPが減ってくれば数分休憩して回復。


レベルも6まで上がり流石に飽きてきたので


コマンドを操作しリールにメッセージを送り合流する事に。




「ふぅ、お疲れ様。成果はどうだった?


 ボクは思った以上に良かったかも知れない」


「ツヴァイ君もお疲れ、こっちもそれなり…と言ったところかな。


 少し自信あるね」


「それじゃボクはこれを渡すNPCの場所を知らないからリールに預けるよ」




そうして兎の夢を渡すと何やらリールが驚いている。




「これが物欲センサーというモノなのか?


 ありえないだろう、アタイの倍以上なんて…」


「お~い、リールさん。どうした?もしも~し


 ヘロー?マクフラーイ?」


「低ドロップじゃなかったのか?一時間で6個っていうだけでも


 結構な数を叩き出した方だと思うのに」


「駄目だ、自分の世界に入っている…」




漸く落ち着いた彼女曰く


一時間で13個確保したというのがありえないそうだ。


まぁ確かに自分でも出過ぎかなぁ~、とは思わなくも無かった。


リールが確保出来たのは6個らしい。


焔の区へ二人で行き農家風のエルフNPCに


アイテムを渡し報酬をゲット。


3個で600ネガを6セットで3600ネガ


二人で割って一人頭1800ネガである。


これなら買い物も出来そうだ。




「あ、そうだ。兎の夢、余った一個はどうする?


 店売りじゃ大した値段にならなそうだけど」


「ん~、アタイが貰っていい?


 確かジョブに付くのに1個必要だった筈だから」


「そういえばリールってドワーフ?グララン?


 で、何のジョブにつくのさ?」


「グラランだよ、確かにあんまりグララン多い訳じゃないし


 すぐに見分けが付かないか。


 ジョブはマジシャンを予定してるよ。


 ツヴァイ君は決まってるのかい、ジョブ?」


「今のところは決めて無いんだよね~


 周りを見てから決めようかと」


「一次職は数が少ないから暫くは


 あんまり空気読もうが読みまいが関係無いと思うよ?」


「まぁLv10になったら考えてみるといいよ」


「アタイは一回上がって風呂入ってくるよ、それじゃ」


「おう、それじゃまた」




リールと別れて一息つく。


ジョブかぁ~、涼はクレリックで


リールはマジシャンか。


俺はどうするか…空いてるのは


ウォーリアーかハンターだなぁ。


他のRPGやMMOにもある様にSNOにもジョブがある。


最初は何の職にもついていない状態


初期ジョブでエトランジェ。


何の能力もスキルも無い。


そしてキャラクターlvを10まで上げて


各種ジョブのギルドのクエストをこなすと4種のジョブの内1つにつける。




ウォーリアー


所謂、戦士。


重い武器を持って前衛で戦う、戦士。脳筋肉。


しかし脳筋といえどSPを使って攻撃するスキルもあるので


完全に脳筋にすると強力な攻撃は単発でしか打てない。


とはいえ、力が最優先なのは当然なので


その辺を気にするのは中盤から後半に入ってからだ。




ハンター


所謂、盗賊。斥候。


短剣や弓など軽い武器を使ってスピードで戦うタイプ。


ウォーリアーと違って耐久力が乏しい分、回避力に優れる。


同じ前衛だがややテクニカルともいえる。




クレリック


所謂、僧侶。


補助魔法や回復魔法で味方を助けるタイプ。


基本的には後衛だが、自己回復自己強化が出来るので


魔力成長を抑え目にして


力を伸ばし、ソロで殴りながら戦って行く人もいる。


聖職者のお約束として刃物は装備出来ない。




マジシャン


所為、魔法使い。


攻撃魔法で後ろから固定砲台となって戦うタイプ。


魔法攻撃がメインなのでSP消費は激しいが


その分攻撃力もある。


魔法攻撃が得意な筈のジョブなのに稀にネタとして


物理攻撃に特化するマゾい人もいる。


が、次のジョブにクラスチェンジした時にそれで


報われる可能性もたまにあるで一概に間違いとは言いきれない。


PTでは必要とされないだろうが。




ストレンジャー


上記に当てはまらない特殊なジョブ。


エトランジェのままキャラクターLvを40まで上げた時につける。


一次職のジョブ全てのスキルを覚える事が出来る。


二次職に成れず、ジョブにつくまでも長い代わりに


普通の一次職と二次職についた時よりジョブLvの上限は上である。




以上が一次職だ。


普通のRPGに必要な職業の必要最低限の物が


揃ってはいるがそれだけでもある。


本番は二次職に入ってからである。


一次職で4つのジョブ(ストレンジャーは除く)についた後


ジョブLvを40にしジョブギルドでクエストをこなし


更にそのジョブ系統ごとに4ジョブ選んでつく事が出来る。


一次職が5ジョブに対し


二次職では一気に16ジョブまで増えるのだ。


リールが言っていた暫くは空気を読もうが読みまいが


関係無いというのはこの辺が起因している。


因みにMMOではありがちな生産系のジョブがないが


これは全プレイヤーがジョブに関係なくアイテム製造が出来るからである。


加工に必要な材料と各加工に必要な


火、水、風、土、光、闇の6種類の魔石があれば良い。


例えば木材加工なら木材と風の魔石


料理なら兎の肉と火の魔石といった具合だ。


開始一時間ちょっとで結構な額のお金が手に入ったが


ジョブチェンジまでが近いので買い物はジョブについた後でいいだろう。




暫くすると不意にメッセージが届く。


宛先はセブン・エレイシア、涼のキャラか。


ウインドウを出してメッセージを見る。




『今大丈夫か?良かったら一回合流しよう。


 汐の区の競売所前で待ってる』




との事。


特にやる事も無いので返事を出し合流する事にする。


競売所前もプレイヤーでごった煮だった。


まだ売り買い出来るほどアイテムも金も無いだろうに。


競売所とは呼んで字の如しの場。


売りたいアイテムを競売所預け、最低売買額を設定する。


一週間程競売所にアイテムが置かれ


設定額かそれ以上の落札金額が入れられれば


即座に売った側のプレイヤーの宿舎に金額が振り込まれ


買った側のプレイヤーはすぐにアイテムを手に入れられる。


逆に一週間経っても設定額で落とされなければ競売所に


預けたアイテムはプレイヤーの宿舎に戻される。


今はまだ関係が無いが競売所のアイテムは国別ではなく


全国一括りなのでもう少し時間が経てば利用者は鰻昇りだろう。


これも生産系のジョブが存在しない理由の一つだ。


長々と露店を開かずとも、アイテムさえ競売所に放り込んでいれば


何をしててもログアウトしてても何の問題もなく時間を自由に使えるからだ。


悪友のキャラ名を見つけた俺はその方向へと駆け寄って行く。


其処にいたのは長身で金髪の、そして何故か貧乳のエルフ♀だった。




「お待たせ、セブン。少し待ったか?」


「いえいえ、私もまだ来たばかりですよ。ツヴァイさん♪」


「リアフレでもネトゲにいる時はネカマモードなんだな?」


「ネカマ…何のことですか?


 よく分からない言いがかりは良くありませんよ?


 それにボクっ娘な男の娘がデフォの貴方には言われたくありません」




頬を膨らませかわいらしい表情をするセブン。


お互いにお前が言うな状態であるが、涼のキャラに間違いなさそうだ。


過度にならないLvでのロールプレイは必須だよね?HAHAHA☆




「それで、どうすんの?」


「ただ殴ってばっかのLv上げも少し空きましてね。


 精霊の森南部のエリア半分超えた先に


 魔法暦時代の遺跡で塔があるらしいんですよ。一緒に行ってみません?」


「多分まだLv足りないんじゃないか?」


「承知の上ですよ、そこでLv上げをしようっていうんじゃなくて


 普通に見に行ってみようってだけです。


 ただの街や森だけでこんなにすごいんですから


 ダンジョンとなればもっとでしょう?」


「まぁ、確かに」


「それじゃ行ってみましょう」




そのままセブンを連れてその塔とやらに向かう事にした。


道中スライム系のモンスターや散々狩った兎系モンスター


蜂型のモンスターやらがいたが危な気無く倒していった。


途中ゴブリン系モンスターがいたが危険そうなので


ソイツだけは避けて迂回していった。


漸く目的地に着くと石造りの巨大な塔があった。




「ふ~ん、これが魔法暦時代の塔ですか。結構大きいんですね」


「とりあえず中に入って探索してみようか?」




散策するものの上の階への階段は壊れていて上れそうに無かった。


変わりに地下へと続いている階段を発見。


二人で慎重に降りて行く事にした。


中は薄暗かったが松明ではなくやや蒼翠に輝く石によって


最低限の明るさは維持されていた。




「うわぁ~、何かふいんきありますね?」


「何故か変換出来ないんですね、分ります。


 でも外と違って必ずしもノンアクティブモンスターだけとは


 限らないから気をつけてね」


「はい~。あっ、前方から何か見えますよ?」




狭い通路の先に物陰が見える。


モンスターか?


その影を視認出来た途端それは地面から光を放ち始めた。


ヤバイ、魔法の詠唱エフェクトだ!?


咄嗟に駆け出し敵に切りかかる。


あれはゴーレムかっ!!


ゴーレムといっても巨大な石の人形という代物ではなく


魔力で動く機械人形みたいなものだ。




「セブン、早く一緒に片付けるよ!!」


「了解です~」




二人で殴るも結構堅たい。


そして外の敵と違って一撃で食らうダメージが半端じゃない。


目に見えてHPが減る。


物理攻撃でこれなのに魔法攻撃だったら…と思うと洒落にならない。




「ツヴァイさん、ポーションとか持ってきてますか?」


「当然そんな物無い!!(キリッ」


「キリッ、じゃないですよ~。


 こっちのHPが尽きる前に殴り倒せる事に期待しましょう」


「それしかないか、ボクもセブンも今は何が出来る訳でもないしね」




幸い攻撃力が殆ど変わらない為、相手に稼ぐヘイトが均等だったので


二人は交互に攻撃を受ける事になり


結果としてギリギリでゴーレムを倒す事が出来た。


当然だがHPは赤字で一桁である。


これ以上そのまま進むのは自殺行為なのでHP全快まで休む事にする。




「流石に1体相手が限界だな、2体以上現れたら即撤退だね」


「ですね~、ジョブついて回復魔法があるか


 後数人多くでPT組んでれば別ですが」


「中の敵がアクティブだらけとすると、敵を避けて中に進むのは無理っぽいし」


「残念ですが、仕方無いですね~」




休憩を終えて先に進み大広間に出る。


これだけデカイ場所だと敵の一体でも沸いていそうだが、その影はない。


4つほど大きな燭台があるが調べてみたものの何の反応も無い。


大広間から出て次の部屋へ進もうかと思ったところで


大きな叫び声が聞こえてくる。




『誰か助けてくれ~、ヘルプミー!!』




声がした方向を振り向くと巨漢なオーガが


大量のゴーレムをトレインして追われていた。


うぁ~、ご愁傷様と思ったのも束の間。


此方に辿り着く前にオーガはゴーレムの袋叩きにあって死んだ。


距離は結構離れていたと思っていたが


ゴレームの群れはスピードを落とさず此方に向かってくる。


二人は時を同じにして悟る。


あっ…コレはオワタ\(^o^)/


満足に逃げる事も出来ず気がつけばホームポイントである


ヴェルダンの宿舎前で二人は寝そべっていた。




「で、いい訳は?」


「正直スマンカッタ」




デスペナが掛かる前のLvで良かった。


木々から漏れる木漏れ日を見ながらそう思うしかなかった。

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