残金100円未満
これはある1人愚かな大学生とその仲間の物語である。
「くそやろうがっ!!」
榎本良輔は叫ぶ。
それは今朝、姉、榎本薫からの、必殺技と称した弛んだ尻によって行われる強烈な圧力攻撃によって半日が過ぎてもなお、治まらない背筋の痛みに対しての怒りではない。
ましてや昨日、母親に、買ったばかり皮のジャケットを洗濯された、ぶつけようもない苛立ちからでもない。
その今にも爆発しようとせんその拳の矛先には良輔の彼女と自分の親友がいた。
「紗希!どーいうことだよ!?」
「いや、これは...」
紗希は突然現れた自分の彼氏に驚きと動揺を潜んだ顔のまま、その場に動けずにいた。
「まて!良輔。俺が悪いんだ」
紗希の前に立ちはだかるようにして親友、五十嵐晃は続けざまに言う。
「俺が、酒の入った勢いで、財布の中の小銭全部、83円で誘っちまったばかりに...」
良輔は愕然とした。
「お、俺の彼女は、たった83円でやらせたのか...」