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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第二章 山で繋がる怪
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第18話 電波塔の光

 Nは夜の登山が好きだった。

 街灯も人もいない山道で、ヘッドライトと満天の星だけが頼り。特に、山頂付近に建てられた旧電波塔は、彼のお気に入りの撮影スポットだった。


 電波塔は十数年前に使用を停止され、鉄骨の骨組みだけが残っていた。山の陰に隠れて電波も届かず、SNSでも“電波が消える場所”として話題になっていた。


 「でも……見たんです。“灯る”ところを」


 Nがそう語ったのは、春の夜だった。

 山頂に近づくにつれ、空が妙に青白くなっていったという。夜霧も出ていた。

 そして、旧電波塔のてっぺんに、**かすかに“点滅する光”**が見えた。


 「一瞬、携帯電波でも拾ったのかと思った。でも、スマホは圏外のまま。

 それどころか、カメラが勝手に“ズーム撮影”を始めた」


 操作はしていない。にも関わらず、スマホは自動的に電波塔の先端を拡大表示し始めた。

 そして、映像の中に――黒い楕円形の何かが映っていた。


 「音はしないのに、空気が重かった。耳鳴りと頭の中にだけ、“ザーッ”ってノイズが響いてたんです」


 恐ろしくなってその場を離れようとしたNの耳元で、突然Siriが起動した。

 そして、誰も命令していないのにこうつぶやいた。


 「検索します――『交信を許可』」


 Nは山を駆け下りた。

 翌朝スマホを確認すると、履歴には**「音声検索:交信を許可」**としっかり残っていた。


 さらに、カメラフォルダには奇妙な写真が一枚だけ保存されていた。

 どこかの山頂に立つNの姿――だが、Nは自撮りなどしていない。


 構図は明らかに“上空からの俯瞰”。背後には、旧電波塔の光がかすかに滲んでいた。


 その後、Nは夜の山に行くことをやめた。

 だが現在も、夜になるとスマホの通知欄に「位置情報共有リクエスト」が届くという。


 送信者:表示なし

 メッセージ:「上空より確認中。次回:晴天時」

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