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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第二章 山で繋がる怪
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第15話 消えた登山道の口コミ

 登山情報サイトでレビュー投稿をしていたJは、“ある異変”に気づいた。

 投稿した覚えのある口コミが、いつの間にか消されていたのだ。


 問題の投稿は、『風のない祠』についての体験談だった。

 Jは半年ほど前に、例の祠の存在を知り、その異様な“空気の無さ”と“勝手に始まった録画”についてレビューしていた。事故防止のために、注意喚起の意味も込めて。


 「たしかに投稿した。動画のサムネも、GPSログもつけた。数日間は閲覧もされてた。コメントもついた。なのに……今見ると、何も残ってない。履歴も、URLも、痕跡がゼロ」


 運営に問い合わせても、「該当投稿は存在しません」とだけ返ってきた。

 Jは混乱しつつも、キャッシュに残っていた通知履歴から、自分の投稿にコメントしていた別の登山者――Kのアカウント名を見つけた。


 Kは「風のない祠」に興味を持った様子で、コメントでは「私も近いうちに行く予定です」と書いていた。


 2週間後、JのもとにKから直接メッセージが届いた。


 >「こんにちは、Jさん。

 >レビュー拝見して、先日あの祠まで行ってきました。

 >確かに空気が変で、スマホが勝手に録画を始めて……。

 >帰り道、ログが消えてたんです。帰宅後もなんだか、変な感じで……。

 >あの、すみません。

 >最近、毎晩夢に“私が立ってる映像”が出てくるんです。

 >視点が自分じゃないのに、私がそこにいる……って、伝わりますか?」


 Jは返信しようとしたが、その夜、Kのアカウントは削除された。

 投稿履歴もすべて消え、Kの存在そのものがネット上から失われた。


 違和感が残ったJは、「K 登山」「K 祠」で検索をかけた。

 すると、数ヶ月前に公開された山岳遭難者の記事がヒットした。


 そこに写っていたのは――Kだった。

 名前はI。山梨の某尾根で遭難し、遺体不明のまま捜索が打ち切られた女性。


 そして、記事の日付はJがKからメッセージを受け取った、3日前。


 「死んでるのに、レビュー読んでくれた……?」


 Jの背中に冷たいものが走った。


 その夜、Jのスマホに通知が届いた。

 件名も宛名もないメール。添付されていたのは、かつてJが投稿した“風のない祠”の動画だった。

 ただし、映像の最後に見覚えのない1カットが追加されていた。


 風のない祠の前に、I――Kが立っている。


 彼女はJの方をじっと見つめ、唇だけを動かしていた。


 「風が吹いたら、帰れるから」

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