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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第二章 山で繋がる怪
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第14話 風のない祠(ほこら)

 登山者の間で“風のない場所”として知られる、ある谷間がある。

 標高千三百メートル付近、尾根と尾根の隙間にあるV字状の凹地。風が遮られ、空気の動きが一切なくなるという特異な地点だ。


 Gはその谷間に、朽ちた石祠を見つけた。

 苔に覆われ、石灯籠も半ば崩れている。誰がいつ建てたのかもわからない、地図にも記載されていない小さな祠だった。


 ただ、祠のすぐ近くに立つと、スマホが勝手に動画を撮影し始めるという異常が起きた。


 「いや、カメラ起動してないのに、勝手にRECマーク出てさ……“録画中”になってる。電源切っても、再起動しても止まらなかった」


 しかも録画された映像を後で確認すると、自分が撮ったはずのない“真後ろ”からの視点映像が保存されていた。


 「俺、誰かに背中を見られてた……ってこと?」


 Gは最初、それをただのバグだと思おうとした。だが、同じ場所に行った仲間のHも、まったく同じ体験をする。


 スマホが勝手に録画を始め、映像の中には必ず祠の裏側――誰もいないはずの林の中から、こちらを見ている目が、一瞬だけ映り込んでいる。


 それも、毎回。


 「なんか……目が、でかすぎるんだよ。まばたきもしない。人間の目じゃない感じ」


 GとHは、祠を中心に周囲を調べることにした。

 草をかき分けて裏側へ回ると、崖のすぐ下に真新しい防水ポーチが落ちていた。中には、割れたスマートフォンと、山岳保険のカード。


 名前欄には「I」の文字。日付は1年前。

 遭難者として、報道に出ていた若い女性の名だった。


 警察へ届け出ると、すぐに家族が身元確認に応じた。間違いなくIの所持品だったという。

 が、遺体は今も見つかっていない。

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