第1話 接続履歴のない声
現代の要素を取り込んだ百物語を書いていきます。
第一章ではこの短編集がどのような形で進めていくかの試金石として書いています。
更新頻度を固定できませんが、ゾッとできる話を書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
Kは会社のWi-Fi監視ログを確認していた。深夜に誰もいないはずのオフィスで、**「音声通信中」**という異常な記録が残っていた。
接続デバイスは「0」。あり得ない。しかも、毎晩2時ちょうどに通信が発生している。
試しに録音装置を仕掛けてその日は帰宅した。
翌朝、監視ログを確認すると深夜2時ちょうどに録音ファイルが追加されていた。
しかしファイル名はなぜか「Kへ」。
再生すると、かすれた女性の声がノイズ越しに囁いていた。
短いメッセージで
「……きこえる? 寒いの……まだ、待ってるよ……」
不気味に思いつつもファイルを消して業務に戻った。
その晩、スマホに通知が届いた。
「“きのうの声”が届いています」
再生すると、Kが誰かと電話する音声だった。しかし、そんな記憶はない。そして、最後に女性の声がこう囁いた。
「……また電話しようね、今度は……会えるから」
Kがスマホの画面を見ると、自分のWi-Fiに接続された“もう一台のK”というデバイスが表示されていた。
それは——3年前に亡くなった姉のスマホの名前と一致していた。