グッバイ、ベイビー。
自分でいうのもなんだが、僕はそれなりのモテ男だ。
女性というものには、これまで一度も困ったことがない。
正直にいってしまうが、僕はそれなりに女性に酷いこともしている。
いわゆるヤリ捨てのようなことは何度もしたし、泣かせたこともある。
妊娠させた女に中絶するように言ったこともある。
ひどいときには、殴ったり、動画を撮ってばらまいたりもした。
女遊びはさんざんやった。
正直クズといわれてもしょうがない。
けど、それくらい別にいいだろう?
だって僕は男前で、求められるし、強いオスだ。
だからこのくらい許される。
女性だってそれなりに僕に抱かれて喜んでいた。
僕がちょっと顔がいいからって、すぐに遊ばれる軽い女ばっかだ。
そんな女たちには微塵も恋愛感情を感じない。
いつも身体をかりて性欲を処理するだけだ。
他人なんか、僕が気持ちよくなればどうでもいい。
そう思って生きてきた。
だけど僕は34のとき、運命の人に出会った。
僕は恋に落ちて、結婚した。
結婚したからには、僕もまともになろうと決めた。
誠実になって、浮気はしないし、真面目に働いて、彼女を守ろうと誓った。
これまでの僕は死んだんだ。
僕は反省し、真人間になった。
そして僕たちには可愛いい可愛い娘が出来た。
娘はすくすく育って、大人になった。
そして娘は20歳になり、ある日家に男を連れてきた。
紹介したい人がいるのだという。
そうか、娘ももうそんな歳か。
しかし娘が連れてきたのは、娘よりも10は上の男だった。
しかも肌黒で、金髪、いい歳して奇抜なファッションをしている。
とてもじゃないがまともな大人には見えなかった。
もちろん僕は反対した。
このような男と娘が結婚するなんて、ゆるせるずがない。
僕は直感的にその男がクズだと理解した。
なぜなら若いころの僕も彼のような男だったからだ。
とりあえず、この男には灸をすえる必要がある。
僕は男と二人で話がしたいと言った。
男は乗り気だった。
男と二人きりになると、急に男は笑いだした。
なにがおかしい。
「いえね、娘はお前なんかにやらんなんて、どの口がいうのかと思って」
「なに?」
「あんただって、若いころはさんざん遊んでいたくせに」
「なぜそれを知っている」
「あんた、みゆきって覚えてるか?」
「誰だ?知らないな……」
「あきれたな……昔あんたが妊娠させて捨てた女だよ」
「そんなの……覚えてない」
「俺はその息子なのさ……!」
「なに……!?」
「俺は、あんたに復讐しにきたんだ」
「残念だが、娘は絶対にやらんぞ。復讐なんかできない」
「残念だが、復讐はすでに完了している」
「どういうことだ?」
「あんたの娘、とんでもないビッチだぞ」
「は……?」
そんなはずはない。
娘には悪い男がよりつかないようになによりも大切に育ててきた。
僕のようなクズ男にひっかからないよう、しっかり教育したつもりだ。
娘には婚前交渉はするなといってあるし、それを守っているはずだ。
学校だってすべて女子校だし、グレることなくまっすぐ育った。
「これを見ろ」
「これは……」
男はスマホの画面を見せてきた。
そこには男とまぐわう娘の姿が映っていた。
しかも動画は何本もあって、どれも過激な内容ばかりだった。
「あんたの娘は、今や喜んで俺のケツ穴をなめるような変態だ。俺が全部調教した。あんたの娘は俺にぞっこんだ。あんたがいくら結婚に反対しようが、かけおちか、もしくはそれができなきゃ心中する勢いだ。どうだ、あんたの最愛の娘は、この俺のものだ」
「おええええええええええええええええええええええ」
僕はその場に盛大に嘔吐した。
気持ち悪い。絶対に許せない。
こんなカスみたいな男に、これまで大切に育ててきた娘を篭絡されてなるものか。
僕の大事な娘を傷ものにしやがって。
僕は許せなかった。
こんなクズ男が、娘の大事な純潔を奪い、汚したなんて。
なによりもの屈辱だ。
「このやろう! ころしてやる!」
僕は彼に殴りかかった。
「やめてお父さん!」
娘が止めに来る。
でもかまわずに僕は男をボコボコにした。
男は後日僕を訴え、僕は傷害罪で逮捕された。
僕が逮捕されているうちに、男は娘を連れてどこかにいってしまった。
今頃娘はなにをされているのだろうか。
そう思うと夜も眠れない。
僕は激しい心の痛みに耐えた。
そして思ったのだ。
かつて僕が女性たちにしてきたことを。
僕が捨ててきた、傷物にしてきた娘たちにも、同じように親がいたのではないかと。
僕は激しく自己嫌悪した。
後悔した。
ああ、僕はなんということをしてしまったのだろう。
親になって初めてわかった。
僕はひどいことをしてきた。
ひどい人間だ。
僕はようやく、自分のしてきたことの愚かさを認識した。
女性をもののように扱った過去の自分を恥じた。
僕はしょせん、あの男と同じく、ただのクズ男の一人にすぎない。
モテるからといっていい気になって、すべてを手に入れようとした。
その末路がこれだ。
僕が犯した過ちのせいで、娘は奪われてしまった。
娘はもう帰ってこないのだろうか。
なぜこんなことになったんだ。
「ええい、こんなもの!」
僕は出所後、自分のペニスを自分で切り落とした。
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