ただの日常 2
「それで随分と遅刻してきた訳だけど、言い訳はあるかしら?」
校門前で仁王立ちする彼女を目にした瞬間げんなりした。
「……いいだろ別に」
「あらそう。つまりあなたは、例え世界が滅ぶってなっても遅刻するのね」
「どう解釈したらそうなるのか甚だ疑問なんだが……、そもそも世界が滅ぶなら遅刻どころか欠席するよ」
風紀委員の長、柏田 凛音。
彼女は俺の言葉に何の興味も示さず、次の言葉を述べる。
「で、言い訳は?」
「言い訳って言い方止めない? まぁ、……道端に倒れてるお婆ちゃんを助けてたって所だ」
「風紀委員の勘が囁くわ。嘘を言うのを止めなさい」
「決め付けるのは良くないだろ。人が人を助けるのは当たり前の事なんだし」
ま、バレバレの嘘をわざと言ってるんだけど。
「一理あるわね。それどころかニ理、三理くらいありそうだけど、あなたが言うと嘘八百ね」
「俺の事疑い過ぎじゃね?」
「だって、顔に書いてるんですもの」
「顔洗った時には書いてなかったけどな」
「んじゃあなたには見えないのね」
「幽霊の類いなのかもな」
「あなたその歳で幽霊を信じているの!?」
なんでそこに驚くんだよ。
「幽霊を信じてる人に失礼だと思わないのか? うちの学校のオカルト研究部が黙ってないぜ?」
「なんの成果も出てない部活動なんて消えてしまえば良いのよ」
「かく言う俺もオカ研の一人なんだが……」
「消えてしまえばいいのよ」
「お前、いつか全国民から殺害予告されそうだよな」
放っておいたら危ない奴だ、本当に。
「大丈夫よ。あなただけに特別だから」
それは俺にだけそう言う対応してるって事か? なんも嬉しくない。
「いやまぁ、いいや。もう何もツッコまないよ。というより風紀委員長さんよ、もう一限始まってんだぜ? なんでこんなとこにいんだよ。風紀を重んじる役の人が堂々とサボりか?」
「私はそれが認可されてるからいいのよ」
「許可はされてねぇんじゃねぇか」
「五月蝿いわね、煩わしいとも言えるわ。それ以上追求するならあなたの頭カチ割って、ぐつぐつのシチューにするわよ?」
「あぁはいはい分かりました。委員長さんの最近見たアニメも分かりましたーーーおっ?」
ここで、一限を終えるチャイムが鳴り響いた。
ようやく解放されそうだ。
「じゃあ、私を一限に出さなかった罰として、一緒に教室に行くわよ? 霧塚くん」
「へいへい」
俺の彼女は可愛い。