ドラゴンと未来視
「魔女の知り合いくらいは居ると思ったから『四天の魔女』に会えると思ったのに目算すら無いのアデス!?!?」
「目算はありますよ?とりあえず居住してるだろう活動範囲に行って呼んで見るんです」
「雑すぎルァァァ!それでも元・十二羅針か!?」
キャラ様と呼ばれた少女はおおよそ少女を逸脱した叫び声を上げてブチ切れていた。
アデスに飛びかかりマフラーも引っ張られていたがアデスはとくに気にしていないのかそのまま黒羽に話しかけてきた。
「しかし我らが勇者が魔女と関わりがあるというなら何か接触出来るかもしれませんね」
「どこまで行き当たりばったりなんだ……むしろ魔女の正体は俺が一番知りたいんだけど。
というか召喚に魔女が関わってないってさっき言ってたけど
どういう魔法で俺を召喚したんだ?」
その質問にキャラ様は手を止めた。そんなキャラ様を見たあとアデスが答えた。
「ふふっ秘密です。質問しても方法は教えられません。
理由はシンプル。『まだあなたを信用した訳では無い』というだけですが。
つまりは───あなたの強さが見たい」
次の瞬間キャラ様を掴んでアデスは大きく飛び跳ねた。
「!?」
そこにバキバキと大きな破砕音がして木が倒れた。
───ドラゴン
大きな口に大きな羽に大きな尻尾。その姿はまさしくドラゴンだった。
「あー……そういえばさっきモンスターがどうとか言ってた」
黒羽は一人取り残されたが思ったより冷静であった。
本当に為すすべがない状況になると人は逆に落ち着くのかもしれない。
一瞬ではるか遠くにいったアデスが声を上げた
「武器をあげますのでそのドラゴンを倒してください!倒したらいい子いい子してあげます!」
「いい子いい子はしなくて良いよ!!俺が使う武器は!!?」
アデスが高々と剣を振り上げた。
「今私が持ってます!!!」
「バカヤロー戻って来い!」
アデスがぶんっと剣を投げ近くの木に深く突き刺さった。
「武器は渡しました!さあその剣で勇者の力を見せてほしい!」
ドラゴンは様子を見ているのか黒羽をじっと見つめてる
はやく剣を手にとって戦わなければ。木に突き刺さった剣を抜こうとする。
「ぐっ……抜け……抜けない……抜けない!」
アデスがぶん投げた剣は木に深く深く突き刺さっていた。
それは本当にがっちり刺さっていて微塵も抜ける気配が無い。
何故今になって剣を刺さった所から抜く勇者の試練みたいなことを始めなければいけないのだろうか。
ドシン……ドシン……
見てるだけに飽きたのかドラゴンが黒羽に向かって歩み始めた
「ちょっマジでヤバいマジでヤバいマジでマジで」
剣を抜こうと全力を出すが突き刺さった剣は抜ける気配が無かった。
その時──視界が歪んだ
ドラゴンが腕を振り上げる
次の瞬間に黒羽の身体はバラバラに……なった未来が見えた。
「……!!」
黒羽はドラゴンが腕を振り上げるとドラゴンの攻撃を横に回避した。
ドラゴンの攻撃は剣が突き刺さってた木に当たり木はバラバラになり剣が転がり落ちる。
「やっと戦えるな」
黒羽はドラゴンにそう言い自らを奮い立たせた。
────
──
「ねえアデス、クロバってさっきまで目の色黒かったよね?」
「ええ、そうですね」
二人はその様子の変化を見ていた。
「あれは何の『魔眼』なのかな……緑色で三角形の模様が浮かんでる」
「あれは『未来視』。未来を見る『魔眼』です」