我らが勇者
花畑を離れ近くの森の中に三人は入った
「ここなら良いでしょう。モンスターが出ないかだけ心配ですが」
「モンスター居るんだ……」
そんなやり取りをしてるアデスと黒羽を尻目にキャラ様は言葉を発した。
「で、何から聞きたいの?この世界のこと?勇者のこと?」
「とりあえずここは異世界なんだよな?なんか知ってる感じだったけど
何でお前らは俺のこと勇者って呼ぶんだ?」
キャラ様はちらりとアデスの方を見た。なにか答えを求めているようだった。
「異世界から来た人間のことを勇者と呼ぶのです」
黒いマフラーをなびかせアデスは言った。
「正確に言えば隣の国プロスタカンテにおいてですけどね。異世界人は世界を救う勇者と呼ばれているのでそれに習おうかと思いまして。」
「でも俺が言うより先に俺が異世界人だって知ってるような口ぶりだったよな?あれは……何故だ?」
黒羽はただ純粋に疑問だった。そもそも魔法の世界なので他所から来た人間がぱっと見てあっさりわかるだけという可能性の方が高かったのだが。
返って来た返答は意外なものだった。
「私達が貴方をこの世界に召喚したからです」
アデスはあっさりと答えた。
「…えっと…召喚って」
「ねえ!それ言っていいの?」
聞き返そうとした時少女キャラ様がアデスに詰め寄った。
「別に隠すほどのことでもありません。そうですよね?」
「それは……。別に私は良いけど……」
キャラ様は何か悩んでいるようだった。
「それで、何で俺を召喚したんだ?理由とか」
「ふむ……理由」
アデスは顔に手を当てた。なにか考えているのかしばらく沈黙を保ったあと答えた。
「無いですね」
「無い!?」
無いと答えた言葉に反応したのはキャラ様の方だった。
「!?」
「あんな召喚に協力したのに理由が無いってどういうことなの!?ねえ!?」
「ちょっと落ち着いて……」
「勇者は黙ってて!」
ガチギレ少女にビビって黒羽は口を閉じた。
「そんなんで約束守れるのアデス!?」
「約束は守りますよ。ちゃんとキャラ様が『四天の魔女』と会うのに協力しますので」
「ちょっと待ってくれ……魔女?」
黒羽はアデスの口から魔女という呼称が出たのを聞き逃さなかった。
「魔女のこと知りたいですか?」
「ああ……ここに来る前に魔女に会ったんだ。会ったというより襲われたんだけど」
「魔女に……?どういうこと?クロバは異世界人じゃないの?異世界にも魔女は居るの?」
キャラ様が逆に疑問をぶつけてくる。
「いや異世界ではあるんだけど……。魔女も本当なら居ない……はず……
というかこっちに来る寸前に襲われたからお前らが協力して俺を連れてきたってことじゃないのか?」
アデスは訝しそうに黒羽を見ていた。
「いえ、私に魔女の知り合いは居ないですし。
ましてや今回の召喚に魔女は関わって居ないので魔女は居ないはずですが……?」
ますます意味が分からなかった。
じゃああの魔女は何だったのか。
青い装飾に大きな帽子、流れるような白い髪。
そんな疑問をキャラ様の声がかき消した。
「魔女の知り合いも居ないの!?!?」
そもそも関係深そうでお互いあまり知ってもないアデスとキャラ様のこの二人の関係も何なのだろう。とにかく今はまだ疑問だらけだった。