怖い記憶ですか!?
「うーん、わからん」
「瑠奈どうしたの?」
「なんで優菜じゃなくてウチがキロ坊の恋人のフリをするんだよ。優菜はキロ坊に身も心も捧げてるんだぜ」
「か、体はまだ捧げてませんから!」
頬を赤く染めて抗議する優菜。
これから登校するのにこれで大丈夫だろうか?
ん?いま『まだ』って言ってなかった!?
「優菜だと嘘が下手だからバレそうな気がして」
「あーん?ウチは嘘つきだって言いたいのか?喧嘩うるとはいい度胸だ」
「だって不良少女のフリしてるじゃない」
「……うっせーな」
否定しないのは一歩前進か。
優菜にお願いしなかった理由はもう一つある。
仮にも告白してくれた相手に不誠実な対応をしたくない。
その点、瑠奈とは友情関係はあれど恋愛感情はないから問題ない……よね?
「そんで、こんなんで本当につれるのか?」
「大丈夫だよ。彼女達は僕に対して異常なほど干渉してくるから」
付き合いがあった時より縁がきれてからの方がやたらと絡まれるから間違いないはず。
優しいフリして近づいてきたかと思えば、突き放して孤独にさせる。そしてまた手を差し伸べて依存させようとでもしてるのだろう。
「問題はなぜ幼馴染のフリまでして僕に近づいてきたのか」
「苦労して幼馴染の場所を奪ったのにすぐ絶縁するなんて矛盾してますよね。私が喜路来くんをストーカーしてても気づかないほどでしたから」
「優菜ぶっちゃけすぎだぜ。キロ坊が少し引いてるぞ」
「……」
ストーカー云々はともかく意図が読めない。
だから今回の作戦を結構するんだけどね。
自分達しか頼る相手がいないと思っていた春香(偽幼馴染)と美優(元カノ)がどうでるか。
さらには記憶を操作されてると思われる本当の幼馴染、百花がどこまで僕を認識しているのかを確かめなくては。
「その幼馴染の記憶をすぐに治してやらなくていいのかよ?」
「父さんと白鳥グループが必ず元に戻すって言ってたけどいまは慎重に動いてくれってさ」
「メモリー教祖が言うなら仕方ないな」
「あ、そろそろ学校に着くよ。油断しないで」
華麗なスルーを決めると悔しがる瑠奈。
ここからは誰が見てるかわからないので気を引き締める。
「喜路来おはよう!」
さっそくきたか。
偽物のくせに気安く名前呼びするんじゃねえよ。
「おはようございます」
「なんだか他人行儀だね。そうか!図書室でのこと怒ってるんだ?」
「当たり前だろ。危うく僕らは殺されるところだった」
おいおい、少し揺さぶっただけで眉毛が3ミリ上がったぞ。
しっかり記憶させてもらったけどね。
「あ、わたしが稲田くんを探しに行ってる間、本棚が倒れてきて大変だったみたいだね。大丈夫だった?」
「まあね。今日は彼氏の稲田くんは一緒じゃないの?」
「彼氏じゃないってば。それよりそこの2人と随分仲良くしてるね」
よっし!狙い通り!
不良少女の瑠奈と真面目な優菜の組み合わせは異色だからな。
しかも親しい彼女と親友が同時に現れたらどんな反応するか見ものだ。
丁寧にふたりを紹介すると---
「そ、そうなの?私がいるのに無理して交友関係を結ばなくていいんじゃない?」
「何度も言ってるけど君は僕の幼馴染じゃない」
百花を返せ!と叫びたい気持ちをグッと堪える。
ここは我慢だ。待ってろよ百花。
「そろそろ行こうかダーリン」
「へ?当たってる、当たってるから!!」
瑠奈が僕と強引に腕を組んできた。
こ、これはやり過ぎじゃないか?
おかげで頭に血がのぼりかけてたのが違うところへ……ってダメだダメだ!
「優菜、コレをどうにかして。生活指導の先生に見つかっちゃう」
「……いいけど」
優菜さん……ご立腹ですか?
「貸しひとつですからね」
……え?
優菜が母さんのような小悪魔的笑みを浮かべるのを記憶した。
ちなみに春香は顔を引き攣らせながら固まっている。
父さん……女性っていろいろ怖いですね。
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