記憶違いの記憶ですか!?
「随分パンチのあるお母さんだね」
「びっくりしたよね。お父さんの方が有名だから」
「氷河君を生んだとは思えないくらい若いしね。高校生に見えるって反則でしょ」
各々が母さんの感想を口にしている。
世間一般には有名作家のメモリーが何かと話題になるけど、我が氷河家では小悪魔こと母さんが中心なのだ。
「キロ坊。あんな、あんな母親……」
さすがの瑠奈も母さんにはドン引きしているな。
「あんな素敵な母上がいたなんて聞いてないぞ!」
「そっちかよ!」
「だってこの真っ白なワンピースをすごく褒めてくれたんだぞ。しかも見た目が10代とかチート両親にもほどがあるだろ。その上あの爆乳」
「ほんと、お母さん可愛かったよねー」
「うんうん。氷河くんの顔がかわいい謎が解けたよ」
「いやぁーそれほどでもあるけど」
「「「きゃあ!」」」
「か、母さんいつからそこにいたのさ!」
おばあちゃんの家が忍者の家系だからって一番教えちゃいけない人に技を伝授するから……こっちはいい迷惑だよ。
ニンマリ笑う母さんが女子の輪に入っていた。
「ほらほら、僕たちは勉強するんだから出てってよ!」
「喜路来、冷たい……。女ができるとすぐこれだし。じゃあ避妊だけはしっかりしなさいね」
「出てけ!!!」
意味ないかも知れないけどいちおう鍵をかけておくか。
ガチャ!
「き、キロ坊、なぜカギをかけたんだ?ま、まさか母上の言う通りウチらを」
「なにまた冗談言ってるのさ?さあ勉強するよ」
「……」
「……」
「……」
「……」
え?
なにこの沈黙?
せっかく初めて友達を連れてきたのにどうしてくれるんだこれ!
* * *
……どうしてこうなった?
「ここはこうで、こうなるからこうだよ」
「なるほど」
「こっちもお願いします」
「えーと、これはだね……」
「やっぱり、神は実在した」
勉強を始めてからすぐ問題に直面した。
みんな勉強が苦手とか聞いてないよ!!
最初は金澤の受け持つ教科だけを勉強するはずだったのに、蓋を開けてみたら全員が勉強が苦手だという。
さすがに人数が多いので頭を悩ませているところへ父さんが差し入れを持ってやってきたのだ。
「20年前近くに勉強したのを覚えているなんて超人でしょ」
「いやあ、ちゃんと勉強してた結果だよ」
完全記憶能力ってほんとに忘れることがないのか。
改めてすごい力だと思う。
「そういえば幼馴染の子とは仲直りできたのか?」
「するわけないだろ。僕を見捨てたあんな奴」
「そうか。昔、俺も幼馴染とはいろいろあったがなにか理由があるんじゃないのか?」
みんなは気を利かせて黙ってる。
もうちょっと話題を考えてくれよもう。
「お母さんも信じられないのよねー。あんなに真面目で礼儀正しくて仲の良かった子が絶縁をきりだすとは思えなくて」
「まだその話を続ける気?せっかく友達を呼んだのに父さんと母さんが春香の話をするからみんなが静かになっちゃったじゃん」
「喜路来なに言ってるんだ?春香って誰だ。俺はお前の幼馴染の百花ちゃんの話をしてるんだぞ?」
「そうよ喜路来。お父さんが間違えるはずないの知ってるでしょ」
え?
春香……じゃなくて百花?
僕の記憶にそんな名前はない。
完全記憶能力がある父さんが間違うはずもない。
「春香って名前……」
「初耳だよ」
いったいどうなってるんだ!?
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