注目を浴びた記憶ですか!?
昨日は酷い目にあったけどそれ以上に良いこともあった。
それは大原さんと友達になれたことだ。
「なんだキロ坊?随分と嬉しそうだけどなにか良いことでもあったのか?」
「あ、わかる?」
『大原さんと友達になれたから』なんて野暮なことは言わない。
彼女のことだから言おうものなら「うっせーな、うざいんだよ!」とか怒られるだろうし。
「当ててやろうか?ウチの予想だと……昨日の帰りに拾った猫が実はどこかのお姫様でボン!キュ!ボン!ってな感じでヒロ坊はオトナになっちまったとか?」
「それって父さんのラノベに出てくる話の一部だよね!?しかもお姫様はそんなキャラじゃないし、それが本当なら僕は妄想全開の厨二病だよ!」
「……ふっ、子供にはまだ早かったか」
ダメだこの人。頭の半分は父さんの小説に侵食されてるわ。
「それより……なんか僕達注目浴びてない?」
「そりゃそうだろ。不良少女と名高いウチをキロ坊が命からがら救い出したとなりゃあ注目も浴びるさ」
「は?」
「あ?」
僕の記憶違いじゃなければこの目つきは真面目な話をしているはずなんだけど。
「どうした?鳩が火縄銃喰らったような顔して」
どうやらほんとに揶揄ってるわけじゃなさそうだな。
僕にしか理解できない表現だけど。
「ヒロ坊も経験してるだろうが。噂ってのは何倍にもおひれがついてかえってくるもんだ。良いことも悪いこともな」
「昨日のことを言ってるの?」
「当然」
たしかに昨日は大原さんを助けたけど、人を助けるのに理由なんてない。別に人気者になりたかったわけじゃないのに。
たとえあの場にいたのが性格の悪い元幼馴染だろうと助けただろう。
そういえば今日は彼女を見かけないな。
いろいろ話を聞かせてもらいたかったんだけど。
「さすが私の見込んだ人ね。彼女としても鼻が高いわ」
はぁ……
春香だけじゃなくこっちまで絡んでくるのか。
後ろを振り向けば天使のような笑顔の元カノ、美優ちゃんが立っている。
まったく次から次へと……
僕は記憶喪失なんだからほっといてくれよ!
* * *
「次はいつデートする?」
「言ってる意味がわからないんだけど?」
「わたしとあなたは恋人同士なの。覚えていないと思うけど」
いや、いや、いや……
バッチリ覚えてますって!
美優ちゃんが普通じゃないってことまでね。
「もう別れたって親切な人が教えてくれたよ」
架空人物のAさんが。
「あら、笑える。喜路来に友達なんていないはずよ。だって……ゴニョゴニョゴニョ」
「え?」
……嘘だろ。
「どうしたキロ坊?この女が最後になにか言ってたようだけど」
通常の人間なら声が小さすぎて聞き取れるはずがない。
僕は完全記憶能力で唇の動きを記憶したから読み取れたけど……
『だってわたしと春香さんがあなたを孤立させたんだから』
……うん聞かなかったことにしよう。
実際聞こえてないわけだし僕は記憶喪失だからいまさら気にする必要ない……よね?
僕には大原さんって友達がいるから相手にしない。
『記憶喪失のフリを貫き通さないと大変な目に巻き込まれるからね。お父さんみたいに♬』
父さんの尋問を終えニヤリとしながら語った母さんを思い出す。
(内心は母さんが小悪魔?って疑ってたけど……)
(記憶喪失のフリしてる方が危険なのでは!?母さんみたいな人には)
「……あとでお仕置きだからね。き・ろ・く・♡」
「……はい」
なにも言ってません!と口答えするほど僕は愚かではなかった。
と、父さん助けてくださいよ!小説書いてるフリなんてしてないで!!
父さんの書いてるフリは許せなかったけどやっぱりここは記憶喪失のフリで押し通すとしよう。
なぜかって?
それは彼女が何十万人もの前で僕を公開処刑したも同然だから。
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