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冒険者ギルド

間に合いました。

またもブックマーク者が増えていてうれしい限りです

新しくブックマークしてくれたそこのあなた、本当にありがとうございます

そして変わらぬブックマークで読んでいてくれてる皆さま本当にありがとうございます


3人称視点は少し硬くなってしまいますね……

実力不足を痛感してます。

読みやすいテンポを心がけて作っていきますのでお付き合いください


よろしくお願いいたします。

「随分と汚らしい場所ですね」


荒くれ者が集う冒険者ギルド

下町にある建物の中でとりわけ大きな建物であるその場所は、敵の襲撃があった時に防壁の役目を果たすために、小さな砦といった様相をしていた。


壁面に無数についている鋭利な石の棘は、過去にその役目を果たしたことを物語るように赤黒く汚れていた。


其処を初めて訪れる人間は、中にいる人間の反感を買わぬように、存在感を消す者が多い


しかし時たまに、先ほど冒険者ギルド内に響き渡った声のように、自分の力を大きく見せるために舐めた態度をとり、次の瞬間には痛い目を見る愚か者もいる。


勘違い野郎をわからせるイベントは、冒険者たちのある種の楽しみになっており、つい先ほど生意気な声が聞こえた瞬間も「お、来たか!?誰が行く!?」と祭り前の心境になったものが大半だった


しかし、男たちは、生意気な声を発した人間に近づくことはしなかった。それどころか多くの者がまるで新人冒険者のように目線を伏せたのだ。


その理由は大きく分けて2つ

野暮な冒険者ギルドに似つかわしくない女の声だったこと

それだけならば男が早い者勝ちで群がる要素なのだが、その女が此の世の者とは思われぬ程の美女であったことが男たちを思いとどまらせた

単純に高根の花と思ったものもいるが、美しい者は往々にして権力者のものになるのが世の常であるため、その女にも相当に身分の高い者の後ろ盾があると察したものが多かった


2つ目の理由が最も多くの者の目線をそらさせたのだが

なんと、女は森の悪魔と恐れられるフォレストヒュドラの死体を引き連れていたのだ。

モンスターの脅威を知るベテランの冒険者程、そのありえない光景とかかわりにならないよう全力で存在感を消した


そんな男たちの反応をつまらなそうに一瞥して、その状況を作り出した女――マリエルは、「コツコツ」と小気味いい音を鳴らしながら冒険者ギルドの中心を堂々と歩いていった


中にいる男たちがモーゼの海割のように割れていく

これでマリエルが羽を隠していなければ、まさしく神話の1シーンとして語り継がれていただろう。


マリエルは幾つかある受付を一瞥すると、そのなかでも一番地位が高そうな男のいるカウンターまで進んだ


勿論そこにできてる列などは無視である


本来対応してもらうはずだった男も、そのあまりにも異様な状況に、何も文句を言えずおとなしく場所を開けた。

こういった、所謂舐められる行為は絶対に避けるべきというのが、冒険者における暗黙のルールなのだが、今はそれを気にするものは誰も居なかった。


モノクルをかけ、神官と言っても通用しそうなゆったりとした衣装に身を包んだ受付の男は、目の前に来たマリエルの美貌に圧倒されながらも、何とか役目を果たそうと声を絞り出す。


「ご、ご用件は?」

「これを買い取って頂戴」


マリエルは道端にあるゴミでも見るようにフォレストヒュドラの死体を一瞥した。

その対応からマリエルにとってフォレストヒュドラは一切大した存在ではないという事が察せられる。


「し、失礼ながらこれは、フォレストヒュドラで間違いないでしょうか?」


あまりのマリエルの態度に、もしかしたらフォレストヒュドラではない可能性を感じ確認をする


「知らないわよ」

「へ?」

「居たから倒しただけよ、学者じゃないんだからこんな蛇の名前なんていちいちしるわけないでしょう。蛇は蛇よ」


その場にいた誰もが、そんなバカなと言いそうになるのをこらえた

もしも万が一冒険者ギルドの依頼で蛇退治と書いてあり、言った先にフォレストヒュドラが居たら暴動を起こす自信がその場の男の全員にあったのだ


「その蛇は、傷をつけても回復しましたか?」

「えぇそうね、一度頭を消したけどすぐ生えてきたわね」


あぁ、間違いなくフォレストヒュドラだと、聞き耳を立てていた全員が理解する


「え?なに?これ珍しいの?だったらちょうどいいわ、高く買ってちょうだい」


珍しいも何もフォレストヒュドラの素材がしっかりとした状態で持ち込まれたのは歴史上初の事である

その性質上、倒すためには原型をとどめぬ程の攻撃が必要になる為、欠片しか取引記憶には存在せず。元の姿を把握できる状態で取引されることなど今までは無かったのだ。


間違いなくとてつもない大金が動く

それを感じた受付の男は焦るように声を出す。


「え、えぇもちろん。最大限の努力をさせていただきます。ですがこれほどの品となりますと、すぐに買い取りができるものでもございません、良ければ一度奥の部屋でその辺を詰めさせていただければと思うのですが、いかがでしょうか」


そしてタフな交渉になる予感に、気を引き締める


「めんどくさいわ」


しかしそんな覚悟も目の前のマーリンにとってはどうでもよいものらしかった


「へ?」

「聞こえなかった?どうしてこう言葉を理解しない無能が言葉を聞く立場に多くいるのかしら。本当にイラつくんだけど」


歴史上初の快挙である素材。本来であれば盛大にオークションが開かれ、莫大な金が動く案件なのだが、それをめんどくさいと切り捨てる。


こんなことができるとは、いったいどれほどの貴族、いや、大物神官や皇族がバックにいる存在なのか。

もしかしたら物理的に首が飛ぶかもしれぬと受付の男は全身に冷や汗をかく。

男には、最早なんと言葉を紡げばいいのかがわからなかった


「フォッフォッフォ、これマリエルや、せっかちは毒じゃよ」


そんな男の絶望を打ち払うかのような穏やかな声が聞こえてくる

フォレストヒュドラの陰に隠れて受付の影からは見えなった老人――マーリンである


「黙りなさい爺」


マーリンは、マリエルのきつい言葉をうけても穏やかに笑うだけである


「儂から提案なんじゃが、ごらんのとおり、うちのお嬢さんは短気での。商談は儂が進めるとしても、このお転婆を解放してやらなきゃならん。しかし今は安心して放りだせるほど持ち合わせがなくてのぅ。」


マーリンは「わかるじゃろ?」とでも言いたげな顔を受付の男に向ける


「どうじゃろう、フォレストヒュドラとやらの販売を確実にここを経由して行うと確約するので、うちのお転婆が不自由なく、2日3日過ごせるだけの前金をもらうというのは?」


マーリンは実に申し訳なさそうな雰囲気で言葉を紡ぐ


「そう多くなくて良いのじゃが、うちのお転婆は金遣いがちと荒くての、すまんがこの街の相場でお主が前金の額を決めてほしい。それくらいはお主の裁量でもできるじゃろ?ん?」


そこまで聞いてようやく、理解不能な存在との話ではなくなった事を理解した男は、勢いよく返事をして受付の奥にお金を取りに行く。

そしてその後ろ姿にマーリンが思い出したように声をかける


「あぁ、度々済まんが、アレは珍しいもの好きでな、安い物もちょくちょく手に取るのだ、買い物しやすいように大きいのをいくつか崩して持ってきてもらってよいか?」


受付の男は恐らく人生史上最速でお金を数え、3つの革袋に分けてマーリンに渡した


「この街で豪遊するにしても、消費するのは一日10ゴールが精々でしょうから、余裕を見て5日分の50ゴールを用意いたしました。こちらの袋には48ゴール。こちらに198シールと200ブロンがそれぞれ入っております。お確かめください」

「ふむ、確かに。助かったわぃ」


そしてマーリンが指先を動かすと金の入った袋からそれぞれ1枚づつがマーリンの元に浮かび上がりその手の中に納まる

そして残りの袋の束はぷかぷかと浮かぶとマリエルの手のひらに収まった

受付の男はその様子を見て口をあんぐり開けている


「存分に遊んでくるがよい」

「ふん、遊べるものがあればいいけど」


マリエルは金の入った袋を手にギルドを出ようと踵を返す


その時、マリエルの進路に一人の冒険者が飛び出してきて、マリエルに声をかけた

冒険者は手をこねながらマリエルに声をかける


「へへ、美しいお姫様、もしよろしければ私が街の案内役を」

「邪魔よ――」


そうマリエルが声を発し、その手を動かそうとした瞬間


ドォンッ!


っと豪快な音を立てて冒険者が地面に倒れた

冒険者は見えない何かに押さえつけられているようだった

それを目撃してる人間はいったい今何が起きたのかを理解することが出来なかったのだが


「ちょっと、爺。余計なことしないで」


続くマリエルの声で、マーリンがナニカをしたことだけはわかった


「ほっほっほ、しかしマリエルよ、儂が手を出さなんだら、お主その男殺しておったろぅ?」

「は?当たり前じゃない」


そしてその何かは、地面に苦しそうに倒れ込む冒険者の命を救ったことも、遅れながらに理解する。


可細いマリエルがどうやって人ひとり殺すのかがあまり想像できないが

森の悪魔を見るに、試そうものなら悲惨な結果に結びつくことだけは理解できた


「ほっほっほ、手間になっては事じゃ、穏便に済ませてくれると助かるのだがのぅ」

「はぁ、本当に面倒ね。いいわ今度から道をふさがれても両手をもぐくらいにしておいてあげるわ」


そう言ってマリエルは冒険者ギルドの外へ出ていってしまう


「ほっほっほ、騒がせてすまんかったのぅ。では商談と行こうかの?」


そして今起きていた殺伐とした空気がなかったかのようにマーリンは受付の男にウィンクをしながら和やかに話しかけるのだった

ありがとうございましたっ!


そして☆評価つけてくださった方ありがとうございます!

また読んで頂けるように頑張ります

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